米倉誠一郎「イノベーション日本:常識なんかぶっ飛ばせ」

米倉誠一郎氏の「イノベーション日本:常識なんかぶっ飛ばせ」World Shift Forum/Earth Day Tokyo 2010の書き起こしです。
日本経済を元気にするヒントがこの講演に隠れている気がします。

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プロフィールから抜粋:
1953年東京生まれ。81年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。90年ハーバード大学歴史学博士号取得。95年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。
2008年より同センター長。
アーク都市塾塾長を経て、2009年より元気塾塾長。
(2010年04月27日現在)

こんにちは!

今日の宣言は、前例踏襲から創造的破壊ということでお話したいと思いますが、よくわからずなんかシフトだということで来ました。
まず始めに言いたいことはですね、全治3年とか、もうすぐ経済回復とか言ってますけど、この経済は回復しない。本当に。してもしょうがない。
だって同じところに戻るんですか?ほんとに。
無から有は生まれないですよ。どんだけ優秀なものを使っても。
3年から5年とか車を乗り換える。
2000億をかけたフラットテレビ、ヨドバシカメラでみんな嬉しくて買ってますけど、
あれ、1インチ四方を1万円切ればすごいって言っていたのに、今52インチで10万円とか利益が一社も出てない、サムソン以外は。
これ、世界は本当に戻るの?
一人で携帯を何個も持ち歩く、使える車を乗り換える、やっぱりそうではなくて、これから新しいところに向かうんだと、要するに今さなぎだった、この経済不況をとって、まださなぎに戻るんではなく、蝶になるんだっていう気持ちが大事だと思うんですね。

僕こういう顔だからか、最近アラブに好かれてるんです(笑)
いや本当によく行くの。
来月も、ハッサン皇太子って、もう好きなんですよ僕のこと。
なぜかわからないけど。
WANA会議って何かっていうと、ウエストエイシャンノースアフリカン会議なんですよ。
中東の人達は、もう自分たちのことをミドルイーストって言わないでと。
ミドルイーストていうのは、ヨーロッパ人が見た目なんですよ。
ファーイーストが日本で、イーストが中国で、セントラルイーストがあって、
ミッドイーストがあった。
それに対して、僕たちはウエストエイシャンノースアフリカンだと、言い始めた。
実は、インプリケーション大きいですよね。

明治の時に福沢諭吉、脱亜入欧といった。その全く違うことが起こってて、
日本は今閉そく感漂ってますけど、アジア成長地域に我々を位置づければ、実はリーディングカントリーなんですよね。
中東の人が自分たちが、ミッドイーストじゃない、ウエストエイシャンと言い始めて、その会議には残念ながら、アメリカ人呼ばれないんですね。
ドンパチやってる最中ですから。
呼ばれないの当たり前ですよね、見てください。
この1945年の広島、草木一本生えない。
これが4~50年経つとこうなんですよ。この図、右下が、この図ですよ。
これが1945年の東京、この真ん中のプチっていうの、ポコッと膨らんでいるのは、国会議事堂ですよ。
それが4~50年がんばれば、こうなるんだ。
ちなみに国会議事堂、真ん中の辺に小さくあります。
てことは、中東の人達にとって日本は希望ですよね。
頑張ればああこういうふうになれるかもしれない。
アメリカと戦っていても。我々は素晴らしい歴史がある。
そのことを伝えたければいけない。そこを振り返らないといけない。

今起こっていることは何か。本当に馬鹿な事が起こっていると思いません?
モノが売れない、大変だ、コストカット、賃下げ。
賃金下がれば、購買意欲は減退。
何が起こるか。
モノが売れない、大変だ、コストカット、賃下げ。
モノが売れない、大変だ、コストカット、賃下げ。
これ、デフレスパイラルですよね。
今本当に必要なのは、モノが売れない、賃上げ。って言える人ですよ。
賃金下げたり、賃金安い国、あるいはコスト下げるだけだったら、
経営者いらないですよね。僕でもできるもん。
それも安い賃金で働かせる。でも、世界で2番目の経済大国で賃金カット、情けないじゃないですか。
賃金を今、上げると、世界で一番賃金を払っても、日本は世界で一番の豊かな国になるんだって言う、その覚悟が必要です。

そんなことはできない、やった人がいるんです。ヘンリー・フォード。
ヘンリー・フォードは1908年、今から102年前、
本当に小さな会社で、フォードモーターカンパニーって言う会社を作ったんです。
その時にフォードは日給5ドル政策というのをやったと。
たいしたことないと思うでしょうが、当時の平均日給が2ドル70セントだったんですよ。
今、新入社員、20万円くらいですよね。こんな小さい会社がうちは40万円払うと言ったと同じ衝撃くらい衝撃だったんですよ。
当時ウォールストリート・ジャーナルは、犯罪とまでは言わないが、自殺行為ではないかと、デトロイトのこんな小さい会社が2倍の賃金を払うと、そしたらフォードは、私の従業員は、私の車を作るんじゃないんだ、私の車を買うんだと言ったんですね。
これ、たった5年後ですよ、5年後のフォードモーターカンパニー。
この下のぶつぶつは、砂利じゃないですよ、花でもないよ、これは全従業員。
まさに彼らがものすごく働いて、給料2倍払っても、さっきいったように3倍の生産性ならば問題ないんですよ。
彼らは、世界で一番安いモデルを作って、そしてフォードの予言通り、その車を買った。
最近、ベルトコンベアーが良かったって説に対して、東大の和田さんがそうじゃない、
フォードの生産性を支えたのは、高い賃金と、我々は新しいアメリカを作ってるんだって言う自負だ、僕もそう思う。
一番大事なのは、モチベーションですよ。
今の経営じゃモチベーションは上がらない。
ちなみになぜ世界で一番高い写真といわれているかというと、この従業員全員が、ポーズってやってる時も5ドル支払われたと。
すごいでしょ、6万ドルの写真。

日本は、カリフォルニアより小さい。了解?
カリフォルニアは42万平方キロメートル、日本は37万平方キロメートル。
次の質問は難しいぞ。じゃあ、カリフォルニアには州知事は何人いるか?
そう?本当に?一人ですよ、誰?シュワちゃん。
次の問題はもっと難しいぞ。まだ10分もあるんだ嬉しいな。
次の問題は、そう、これは本当に皆さん考えて欲しい。いくぞ。
日本人は、シュワちゃんより頭が悪くて効率が悪いんで、シュワちゃんが一人でできることを作ってこれ、すごい後悔したんだけど、
47人いないとできないと思う人?
もう一回言いますよ。カリフォルニアは日本より大きい。
日本はカリフォルニアより小さい、で、人口は日本の方が4倍、経済規模も4倍くらいかな。
シュワちゃんがひとりでできることを、なんで日本は47人もいるんですか?
喧嘩をしろって言われたらですね、それは相手はターミネーターなんですけど、石原慎太郎は口だけですから、47人もいるんだろうけど、喧嘩をしろではなく、行政をしろですよ、おかしいと思うでしょ?
こんなことをやっていちゃいけない、我々はやっぱり道州制だと思うんですよ。
道州制ってどういう事か、見てください。

例えば関西州で経済規模が94兆円、中国州で30兆円、足すと124兆円ですよね。
右上の、カナダと同じじゃないのと。
今日、大阪地方から来ている人います?
僕は大阪に行く時、今からカナダに行ってくると、そういう気持ちで行きますよ。
中部地方見てください。75兆円。北陸州合わせると、97兆円。
韓国よりも大きいんですよ。
九州と四国合わせると62兆円。EU最大の工業国家、オランダとほぼ同じじゃないですか。
どうですか、みなさん。日本の中にこれだけの豊かさがあるって感じてます?
感じてないですよね。それはなぜか、東京や大阪で吸い上げたのを47つにばらまいて、これじゃおかしいと、こんなことをやっている場合じゃない。
僕の学生でも、はじめのうちはいいですね先生と、そのうちにダメ、ダメと、なんでそういうの?と大分と熊本は仲が悪いと、青森はちょっと、岩手は違うんですとか、そんなことないよと、これ明治政府がすごかったんですよね。
当時300県があった、300藩を60県に1871年に集約したんですよ。
大行政改革をやった。1871年のシステムがそのまま動いている。
僕は学生に、九州なんて人為的に政府が作った、明治政府が。大分熊本関係ないだろと、学生に言うと縄文時代からの決まりごととか、ワケの分からないことをいってるんですよ。
こんな小さなことを出来なかったら、日本に未来はない。

でもこれをいうと、道州制って広域行政だから個性がなくなりますよね。
全く違う。広域行政じゃなくて、道州制の本当の眼目は、国の中に国を作るっていうこと。
ニューヨークのビジネスマンは隣のマサチューセッツのボストンに行くと、ワイシャツとか
買って帰る。なぜかというと、マサチューセッツは洋服などにかかる消費税がゼロだから。
我々ニューハンプシャーに行くと、酒買って帰る。
ニューハンプシャー州は酒税がゼロだから。
デラウエアはアメリカで一番本社が大きい。本社の法人税が安いから。
だからみんなで競争するんですよ。北海道、同窓なんですけど、中央と太いパイプが
あるとか言わないで、もう日本の中央政府は見限って、私はプーチンと組む。
どうよこれ、いいでしょ。パスポート独自発行すると。
全部のシベリア開発ってすごいんですよ。シベリア開発は北海道がやると。
北大にありとあらゆる人材を集めて、そこが知識の源泉となると。
合い言葉は、ボーイズ・ビー・アンビシャス・アゲインとか言っちゃって。
もうやめて行く、絶対行く人、一橋になんかいてもしょうがないと。
それからもう、北大だろうとクラーク博士って、米倉博士って僕がボーイズ・ビー・アンビシャス・アゲイン。
そしたらですよ、北陸新潟州が焦ってまずいと。敵はシベリア行くって言ったら、
大丈夫、われわれには万景峰号があるじゃない、ねえ(笑)。
北朝鮮開発だ。ポスト北朝鮮の金正日体制はわれわれが担うとか言って、北朝鮮は、すごい資源があるんですよ。
九州がこれはまずいと。道制は政府に任せたとしても、FTYAは起こらないから、シンセン、香港、台湾、上海、こことも九州州は統一貨幣を発行すると。
元とか円とか、もう一回両に戻ろうとか言って、あそこだけ1両、2両とか。
というような、みんなが競いあって、おもしろいことをやって、そしてそこでうまくやった人が、首相になればいいじゃないか。
ということですよ、新しいフロンティアは。

みんな、できないと思ってるでしょ?
でも僕15年前に、フランスがフランを捨てると思わなかった。
思いました?あの誇り高いドイツがマルクを捨てるって思いました?
僕は思わなかった。でも彼ら、チャレンジしてますよね。
今、大変ですよギリシャとか、ポルトガルとかいるから。
でもチャレンジしてるじゃないですか。
ヨーロッパ便利ですよね。北欧に行くとまだ、スウェーデンクローネ、
デンマーク、一緒にしろよ、ユーロでいいじゃないかと思うんですけど、
やっぱり彼らはそれを超えて、新しいものにまだ躊躇してると。
僕はこれくらいのチャレンジができなかったら日本はいかんと。

正月くらいにグラミン銀行行ってきた。ユニス博士、同じような顔をしてるけど、
これがまたおもしろいよ、グラミン銀行バングラデシュも。
若者はこんなところにいる場合じゃないぞと。
今すぐグラミンに行けという感じですが。
何がすごいかというと、農村調査に行ったんですけど、風呂に一週間入らなかったのは
大丈夫だった。ちょっと頭かゆかったけど。
何が大変かっていうと、朝昼晩カレー(笑)。これはちょっとつらかったね。
味付けが同じなんですよ。農村は冷蔵庫がないから、常に新しいものだけど、味付けが同じだと、もうお腹が減ってさあ帰らなきゃと、今日なんだろうなあという楽しみが無い。みんな調査して、帰ろうか、今日はカレーだな。
けっこうつらいですけど、朝昼晩同じものを食べても、うちの犬は喜んでいるじゃない。
みんなおんなじ。

何を思ったかというと、グラミン銀行では1平方メートルくらいの太陽光発電で、グラミンフォン、携帯電話を充電してるんですよ。
それを貸してくれて、グラミンの中、バングラの中にはけっこう携帯電話が普及している。
電力はないんで、1平方メートルの太陽光パネルでやってるんですけど、ひとりの学生が、先生、これじゃ電力足りないですよね、いずれもっと大型の発電が必要ですねと言ったんですけど、本当だろうか。
我々がしなきゃいけないのは、この1平方メートルの太陽光発電で、使える家電の開発じゃないの、今の日本の使っているものをそのまま持っていくのが、本当に正しいことだろうか。ですから、ここにもしエンジニアとか開発者がいたら、全員このBOPにいってくださいと。そこにはイノベーションの種が沢山ある。
現状維持するためのイノベーションではなく、新しい世界を作るためのイノベーションが必要だと思うんですね。

これもいい話だったし、これもいい話だったし、これもすごいいい話だったんだけど、これなんか泣いちゃうと思ったんだけど、もう時間もないのでやめるけど、これがまたいい話だったんだ。
僕が言ったのは夢だと、そんなことはありえないと言うひとのために、ジョン・レノンのイマジンの一節を捧げるから、お互いイノベーターでありつづけましょう。

どうもありがとうございました。

written by piyochin