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【書き起こし】孫正義VS池田信夫「光の道」対談(夏野剛司会)Part2

孫正義vs池田信夫対談(夏野剛司会)「光の道」対談の書き起こしです。

USTREAM動画
「光の道」2 part1
(58分から1時間57分あたりまで)

資料
孫正義資料(PDF)
池田信夫資料(PDF)

聞き間違い、わからなかったところ等ありますがご容赦ください。

孫:
はい、じゃあ第二部のプレゼンを準備していますから、ちょうど導入ポイントになっている。

(孫資料P.32)

 

メタルの撤去による光整備を実現させなければいけない、ということであります。

(孫資料P.33)

 

そもそもですね、いまNTTのアクセス部門、アクセス回線の部門というのは維持費が年間1兆700億円掛かっています。その内数として、メタルの維持費が年間7600億円なんですね。光が年間3100億円です。
これをメタルを全部引き剥がして、光だけにしましょう。そうすると、光の維持費は増えます。年間当たりの維持費が増えます。3100億円が5200億円になる。
ただし、メタルの維持費がいま7600億円掛かっているのがゼロになる。
そうすると、合計で5000億円削減できるんですね。アクセス回線維持費が。年間5000億円も削減できる、ということです。

(孫資料P.34)

 

5000億円、なにがそんなにどうなのよ、という事に対しての内数がこれです。
一番上の緑のところは「その他」ですけども、上から2番目の黒っぽいところ、これがメタルの減価償却費。それからその下の3900億円、これは池田さんも質問しておられましたけども、3900億円ってなんですか。これはメタルの、直し賃ですね。保全費、こういうものだけで年間3900億円掛かる。
その下が、光のところでブルーのところです。このメタルを全部引き剥がしてしまえば、この約五千数百億円のところがいらなくなるということですね。もちろん光の部分は増えるのでトータルでは5200億にはなるけれども、1兆円よりは安いでしょうと。年間5000億円も削減できますよ。ちなみにこの数字は我々がでっち上げた数字ではなくて、NTT東西の接続会計ということで彼らが公的に発表してる、全て公表してる数字を我々はただグラフにしただけです。

池田:
これ右側もですか?

孫:
右側は我々が試算したやつです。ただ、試算ですけども左側にある光のNTTさんが現在使ってる光の数値を公開してますから、それを回線数でただ増やしたと。単純に計算できる範囲ですね。

(孫資料P.35)

 

ということで、さらにそれをもう少し詳しく見ると左側の上半分がメタルで、その下が光で、これをもっと詳しく管理費だとか減価償却費だとかうんぬんかんぬんというふうに書いてます。
これもNTT東西の接続会計で公表している数値、公表しているから右側の光100%になったときの試算ができる。NTTさんの公表数値をもとにプロとして我々が専門家としての計算をして、試算をしたという数字ですね。

(孫資料P.36)

 

で、ちなみになぜメタルを引き剥がした方がいいかというと、そろそろ寿命が来てるということなんですね。メタルを引いてから20年以上経ってるものが60%です。同じメタルの中でも。
で、右側のグラフにあるようなの、点々のやつがありますが、18年ぐらいを過ぎるとぐっと二次曲線的に故障率が上がる。縦軸が故障率で、横軸が経過年数。ですからメタルはもう古くなり過ぎて故障率がどんどん上がっていって、非常にいま効率の悪い状況になってしまっている。60%以上が20年以上になってる。

(孫資料P.37)

 

池田さんは、田舎の方はメタルのままで、そんな田舎で光を使う人は少ないんじゃないか。だから光を田舎まで持っていくのは金の無駄遣いだ、というふうにおっしゃってます。多くの方がそんな風に勘違いされるんですね。これは実は勘違いでありまして、田舎ほど、メタルの保全費が高いんです。田舎ほど赤字なんです。
アクセス回線部門っていうのはNTTさん年間2600億円くらい赤字を出してるんです。赤字の最大の理由は田舎の距離の長い、しかも古いメタルがべたーっと張り付いてる。これが一番保全費が高くて、ちなみにそれをもう一回さらに分析をしてみました。

(孫資料P.38)

 

なんとですね、その全体の10%の距離の田舎に引かれてるメタル、これがですね、収入が800億円です。だけど費用が2700億円もかかってる。つまり1年間で1900億円、全体の距離のたった10%、まあ距離じゃなくて回線数、全体顧客の10%の田舎の人が使ってるメタルが、なんとNTTのアクセス部門全体で2600億、メタルと光を足して2600億の赤字ですけども、その赤字のうちの70%は、なんと田舎に放置されてるメタル、全体でいう10%のお客さんが使ってるメタルが赤字の理由の7割だ。毎年1900億円の赤字を垂れ流し続けてる。この垂れ流し続けてる赤字を、一日も早く止めなきゃいけない。そのためにはメタルを置いたままだと金がかかって仕方がない、剥がす方が金がいらなくなる、ということなんですね。ですから赤字を一日も早く止めるためにやらなきゃいけない。

(孫資料P.39)

 

そもそもじゃあメタルは本当に引き剥がしていいのかということですけど、メタルは誰のものか。実はメタルは国民のものだ。メタル回線はNTTが公社時代に引いて、しかも当時は100パー独占で、しかも当時は電話がほしければ電話加入権を買いなさい、何万円も出して買いなさいと言って、非常に高いお金を国民負担で4.7兆円も払って作ったわけですね。ですからメタルは国民のものですから、赤字を垂れ流し続けてるメタルを引き剥がすかどうかというのは、最終的には国民判断すべきだということなんですね。

(孫資料P.40)

 

アメリカもメタルの維持費が問題だということをオバマ大統領が今、最近指摘し始めました。やっとアメリカもそれを気付きだしたということですね。光ファイバーの方が維持費が安い! ということを公的に言い始めました。今年の3月16日です。

(孫資料P.41)

 

池田さん、物理線よりは交換機のほうが問題じゃないか、交換機を先に変えるほうがいいんじゃないかという説をおっしゃっておられましたが、アナログ電話のためにNTTさんが使っている交換機を早く廃止しましょうというのは私も賛成です。それを廃止するためにはですね、やはりIPで全体ができるように、しかもメタルじゃなくて光でするようにするほうがベターなんですね。
ですから、アナログ電話のための交換機を無くすというのは賛成です。でも、それだけじゃ足りなくて、もっと大きな費用がかかっているメタル回線も1日も早く、私は両方ともなくさないといけないと思っている。全部IPにするべきだ、二重設備の解消というのが必要だ。

(孫資料P.42)

 

光か無線かという二者択一ではなくて、両方しなきゃいけない。無線の使用効率も、さきほど池田さんも夏野さんもおっしゃっているように、無線の周波数の割り当ても有効活用しなきゃいけない、しかも、固定回線のメタルもお金が掛かりすぎているから、メタルを一日も早く外して、光に一本化する。
だから、光か無線かじゃなくて、光アンド無線。無線の有効活用のために、バックボーンとしても光にしなくちゃいけない、ということであります。

(孫資料P.43)

 

もうひとつ、池田さんがブログの中でメタル+VDSLで十分じゃないかということをおっしゃってますが、VDSLはほとんど500メートル以上いくと使い物にならない。ですから光で近くまで持ってきて、最後のラスト100メートル、200メートルをマンションの中でVDSLを使うのはいいんですけども、実際のバックボーンの長い距離をメタルでやりましょう、しかもそれをVDSLでスピードをあげましょうというのは非常に無理がある。二重コスト、さきほどいったメタルのコストを下げるということの解消にはならない。

(孫資料P.44)

 

私は黒電話しかいらないという田舎の方にも光を無理やり押し付けるのかという話に対して、それも池田さんがおっしゃっておられますけども、無理矢理ではなくて、光ファイバーにメタルを切り替えるんですけども、家の中は従来使っている黒電話のままでいいんですよ。そこにアダプタをつける。アダプタのTAプラスWi-Fiのチップを入れて、従来通りの黒電話を従来通りの料金で従来のどおりの使い方で、ブロードバンドなんていらない、光サービスなんかもいらない、という田舎のおじいちゃん家もですね、メタルのコストを下げるために、光に置き換える。そして、田舎のおじいちゃん家に孫が遊びに来たときに、電子教科書はWi-Fiで繋がる、電子カルテもWi-Fiで繋がる。その電子教科書と電子カルテは無償で、さきほどいったように、国家として提供できるんじゃないか。

(孫資料P.45)

 

光に契約を移行するのに、事前周知の内容ですけど、メタルに光に本当に変わられるんですか、ということですけども、契約の変更は不要だ。なぜならば、水道管が、鉄パイプの水道管からビニールのパイプに入れ替えるというときに、もし水道代の料金が同じままであれば、元栓が鉄の水道管であろうが、ビニールの水道管であろうが、お客さんは気にしない。契約を変える必要はない。単に効率化のために、衛生のために、元栓のパイプを変えるというのと同じように、お客さんにとって黒電話がいままで通り使えて、料金も同じで、工事代もいらなくて、追加負担もいらなくて、なにもいらないならば、契約を変える必要はない。コストダウンのためにやりましょう。

(孫資料P.46)

 

そういうと一部の方が、いやいや、いままでのメタル線は停電の時も使える、でも光線になると停電の時に使えないんじゃないか、という説がありますが、実は停電を調べてみました。年間で平均10分しか停電になっていない。しかも年間の停電回数は0.15回。これは実際のデータです。
というわけで、昔はしょっちゅう停電していたけど、最近はあんまり停電しないんですね。しかも短い。停電時間もですね。

(孫資料P.47)

 

そこで、さきほどのアダプタの中に充電式の電池を入れて置く。さきほど10分間停電といいましたけど、1回あたり50分間利用できる。しかも10年間くらい利用できる電池をこのTAのアダプタの中に入れて置く、ということでいけば、停電対策も可能ですね。

(孫資料P.48)

 

ということで、それから、NTTさんはですね、メタルをなくして、光だけにすると、いままで使っていたホームセキュリティだとかガス検診だとか、信号だとか、水道の監視だとか、緊急通報だとか、そういうメタルをベースに使っている機器が使えなくなるよ、とおっしゃてますが、これは先ほどの黒電話の理屈と一緒で、アダプタを無料で配布すれば、十分済むわけで、これはもう技術的に単純な簡単な話ですから、年間何千億も赤字出しているという状況から比べれば、はるかに安く済む、ということです。

(孫資料P.49)

 

しかも最近はセキュリティだとか、交通管制システムもですね、むしろメタルよりも光回線をベースにしたものに、システムもレベルアップしてきてる、ということであります。

(孫資料P.50)

 

先ほどから一番メインのご質問の、じゃあ経営形態。NTTの経営形態まで話を踏み込む必要はないんじゃないか、ということですけれども、経営形態にまで踏み込まないと、メタルを廃止して光に置き換えるということはできない。ということで、経営形態について申し上げます。

(孫資料P.51)

 

メタル回線を、先ほど言ったようにいま月に1400円で物理線は提供しているわけですけども、光も同じ1400円、しかも税金を1円も使わずに光100%に置き換える。というのが「光の道」構想の神髄であります。

(孫資料P.52)

 

これは、アクセス会社というのは、いままでアクセス部門は、いままで年間は2600億円の赤字ですけども、保全費だとか維持費だとかそういうのをなくせば、メタルの費用をなくせば黒字経営できる。

(孫資料P.53)

 

どのくらい黒字になるかというのも計算してみました。現在はNTTのアクセス部門というのは、収入1.2兆円、費用1.5兆円、年間2600億円の赤字ですが、メタルを無くすと費用が先ほどの話のように大幅に減りますので、3500億円の黒字になります。
ですから赤字部門が、税金1円も使わずに、光を全部、100%引いても、3500億円の黒字になると。その差6000億ですね。

(孫資料P.54)

 

ということで、じゃ離島とか山の中とか村の中は、そこまで光を引くのは無駄遣いでしょ? というのが池田さんの根源的な指摘ポイントですけども、この2.5兆円で全国のメタルをゼロにして光に置き換えようという費用の中には、人が住んでる、日本国民が住んでいる離島も100%含んで、山の中の、ド田舎のところの炭焼き小屋まで含めて全部光に置き換えても2.5兆円で済む。たった2.5兆円で山の中も何もかも離島も100%終わる。という計算です。
この計算は、これまた先ほどのNTTの公開資料の数字をベースに我々が試算したやつで、この数字が正しいかどうかは、いまから2~3カ月、半年かけて、専門家の方々で検証していただいて結構だと思いますが、ちなみにNTTさんは1.5兆円でできるって言ってるから、ただしそれは引き込み線とか宅内設備を入れてないということなので、我々の計算とほぼ合ってます。ですからこの2.5兆円は調べれば分かる範囲ですから、大した議論にはならない。

(孫資料P.55)

 

先ほどの保全費だ何だっていうのを細かく、もう全部洗いざらい我々が何年もかけて調査をした数値から出したものに基づいてますよ。我々が当てずっぽで、でっちあげで出した数字じゃないっていうこと、これは、これまたNTT東西の公開資料をベースに、接続会計の資料をベースに我々が、「何に属しているのか」と、それぞれ費用をですね。という形でちゃんと、メタルの維持費だとか光の維持費だとか、そういうことで全部区分けしたやつで、この区分けが異論があるというなら、それは5%とか10%ぐらいの違いはあるかもしれませんけれども、それはまた検証すればいいだけの話ですから。わたしが申し上げてる論点にはほとんど異常なし。

(孫資料P.56)

 

これを数値にまとめてみたのがこれです。今日現在は緑色のところ、一番左側の緑色のところに、全部どんぶりで計算されています。2008年のNTT東西の利益は、たったの445億円しか営業利益は出てません。
しかし、それを実態で見ると真ん中の状態になるんですね。アクセス部門が2600億円の赤字で、物理線のアクセス部門ではないその上の通信サービスのところは3000億円の黒字なんですね。
この3000億円の黒字が、先ほど池田さんも指摘しておられるように、これがですね、アナログを、通信をベースにした「交換機」無をくすだけで、この真ん中の下の水色の下の通信部門の利益はさらに増える。
3000億円の利益が4000億か5000億になり得る。ということなんですね。ですからそれはそれでやるべきだ。
それはNTTさんの通信部門のためにやるべきだと、わたしは思います。でもそれをやるためにも、ここの上のところのアクセス回線部門、ここのところを、全部メタルを撤去してアナログ電話を終わらせて、IPに移行しなきゃいけない。それをやるとアクセス部門は、右上にありますように3400億円の黒字になって、通信会社が仮に先ほどの交換機を、残したままの費用を払い続けたとしても3000億の利益ですから、これは実際は3000億どころかもっと利益が出るということですね。

(孫資料P.57)

 

「バランスシートはどうなんだ!」とこれまた池田さんからのご指摘がありましたので、われわれがバランスシートもちゃんと計算してみました。アクセス部門のところを分社化したときに、左側が現在のNTT東西のトータルのバランスシートです。これを、アクセス部門を分社化のたときに、アクセス部門の資産がどれくらいで、負債がどれくらいで、純資産がどれくらいかというのをちゃんと全部、計算してみました。
これは当社の、試案です。分社するときのバランスシートの試案ですから、これまた今から何ヶ月かかけてですね、多いの少ないの議論すればいいわけですけれども、基本的にこんな感じになります。だいたい約半分ですね。だいたい約半分の資産が、アクセス部門のところにある。通信部門のところが、残り半分。という感じです。

(孫資料P.58)

 

じゃあ「2.5兆円のお金は誰が金を出すの?」と。「これまた税金を使うのか」と池田さんもご質問をしておられますが、1円も税金を使わずに、さきほどのようにアクセス部門が新会社になると。分社化したときにアクセス部門は、3500億円の黒字だというふうに申し上げましたが、実はフリーキャッシュフローはもっと黒字なんですね。なぜかと言うと、減価償却というのは、現金支出を伴わない費用ですから。この部分はフリーキャッシュフローとしてはプラスですね。ということでフリーキャッシュフローは実は、年間4500億円の黒字になると。

年間4500億円も黒字ならですね、資金調達の2.5兆円くらいは、民間の銀行、機関投資家から、一瞬で集まります。「本当に集まるのか?」ということですが、ソフトバンクがボーダフォンジャパンを買収するのに、2兆円、金かけました。ちなみにソフトバンクは4500億円のフリーキャッシュフローはありませんでした。当時は、1500億とか2000億しかフリーキャッシュフローのない会社でも、2兆円の資金調達ができたんですね。
ですから、2.5兆円くらいの資金調達は、4500億円もフリーキャッシュフローがあれば十分やれるということです。ですから設備投資の2.5兆円、光のための設備投資2.5兆円は、民間の資金調達だけで、税金1円も使わずにやれる。ということですね。

(孫資料P.59)

 

ですから、もうひとつのご質問、池田さんのご質問の、さっきのリストの中にありましたが「アクセス回線会社というのは、公社にするのか?」「いまどき公社を新たに作るのか?」「公的資金使うのか?」ということに対する答えは、「100%民間の会社でございますよ」と。「公金を使って新たに公社を作るんじゃない」ということです。

(孫資料P.60)

 

その会社を作ると工事費も安くなる。つまり今までは光ファイバー、個別のお客さんごとに、個別に申し込んできてたのが、一律的にやれるのでコストダウンができる。

(孫資料P.61)

 

ちなみに4200万回線、これをどのくらいの工事人数で本当にやれるのか、ということも質問がありましたので、これもお答えを用意しました。1斑2人+警備員1人、1班3人ですね。これで13000班を用意して、1日3件工事ができます。そうすると1200日で出来る。ですから、4年から5年で十分、終わる。工事が、ですね。ですから、100%光化するのに、十分出来ますよ、という。人員の計算も、ちゃんと、工事能力の計算も申し上げました。これは14万人電気通信工事事業者が、日本にいるわけですから、で、しかもなかにはですね、かなり仕事があんまりないというお客さんも最近おられて、だいぶ肩たたきなんかされているわけですね、NTTさん、グループ会社にいかに人員を追い出すか、というような感じでやっておられるわけですけども、雇用にも役立つ。ということですね。

(孫資料P.62)

 

ということで、3万円で出来る、というのの理由はそういうことであります。で、12万円が3万円。「ほんとに3万円に出来るのか」という質問が池田さんからありましたので、さらに詳しく、池田さん用に用意致しました。

(孫資料P.63)

 

池田:
はははは。恐縮です。

孫:
3万円の内数でございます!

池田:
ははは。

孫:
このように、ちゃんと我々は積算をして、言っている数字はすべて積算にもとづいて言っている、と。「あてずっぽうで、ソフトバンクのいいかげんな数字だろう」と、「またそんなホラを言うのか」と、この間の委員会でも、だいぶボロクソに言われましたが、たった15分でプレゼンせえ、と言われたので、15分で全部説明できなかったから、今日は思う存分言いたい! というふうに思いますが、すべて、積算にもとづいて出している。ということを改めて申し上げたい。
1件あたり3万円でできる理由はこういう事です。この内数の中に18000円の引き込み工事費、光引き込み工事費と言うのがあります。これもさらに次のページで内数を出しました。

(孫資料P.64)

 

このようにですね、すべてが我々は、何年間もかけて、この理論を構築するために、さまざまに専門知識を入れて、我々も何百億かかけて光を引こうとやってみたんです。タダ乗りしたんじゃなくて、やってみて、いかに無謀なことか、ということで。効率よくやらなきゃいけん、全部計算して、実数に基づいてやって。

(孫資料P.65)

 

しかも、NTTさんの人員は、むしろですね、50代以上の人が、かなり余っている。団塊世代です。この方々が、有効活用出来る。ということで、本当はNTTの労組の方から見てもですね……

池田:
ははは。

孫:
ボーナスがむしろ増えるのではないか。

夏野:
ははは。

孫:
アクセス部門いま赤字だからあんまボーナスももらえない。2500億円の赤字が突然何千億を超える黒字になる。敷設部門であれば、メタルとか光、物理線をひいている方々の、何万人という社員の方も、イヤイヤ使われるのではなくて、望まれて使われる。生きがいも出る。ボーナスももしかしたら黒字になれば増えますよね、ということでございます。

夏野:
ありがとうございます。今、もう分かりやすいプレゼンだったので、みなさんお分かりだと思うんですけども、一番大きなポイントは、光に全面的に替えるということで、アクセス会社の維持費用が激減するということ。ですので2つのネットワークを持っているのが、一番コストがかかるっていう状態にいまあるっていうことですね。

孫:
そうです。

夏野:
特に田舎の問題は、田舎を(光に)替えるよりも維持コストのほうがかかるじゃないかということで、まあ、極論すれば、バンと今日、全部光に替えられたら、試算は完璧に合うんですね?

孫:
これは、5年で。5年で100%切り替えるということで全部試算しています。で、年次の数値も、全部あります。

夏野:
ただ5年間の移行期間のこの赤字は、維持…‥?

孫:
徐々に減っていく。

夏野:
徐々に減っていくので。そうすると……

孫:
5年経って全部切り替わったら…‥

夏野:孫:
あの数字になると。

孫:
そうです。で、5年間のあいだの、赤字が徐々に減っていく、その間に光を引いていくためのキャッシュフローも、年次で全部計算してます。

夏野:
ただ、厳密に言うと、その5年間の負債があるので、たぶん、資金調達結構難しいですよ。

孫:
いやいや。それも全部計算して、5年間に入ってくる収入もありますから。ですから、2.5兆円よりも実は少ないお金で……

夏野:
入ってくる収入はいま……(聞き取りづらい)……ですか?

孫:
え?

夏野:
入ってくる収入はいまは……

孫:
赤字が減るんです。

夏野:
「赤字が減る」しかないですよね。

孫:
そうです。

夏野:
だから、新たな収入は基本的に期待できないですよね。この試算では。

孫:
いや、入ってくる収入と、減っていく赤字と、全部含めて。で、お金も、資金調達も1年目でぜんぶ2.5兆円必要なわけじゃないんですね。

夏野:
そうです。はい。

孫:
ですから、年次ごとの資金の入りと出をすべて計算して、年次のバランスシートと、年次のキャッシュフローと、年次のP/L(損益計算書)もすべて計算して。まあ、今日は時間がもったいないから出してませんでしたけども、資料は全部計算してます。

夏野:
ちなみにこれ、計算の前提で、いま1400円とおっしゃっているのは、いまの基本的な電話の機能の置き換えの部分が1400円で、これインターネットアクセスの分には、いまのADSL分くらいの料金を試算されている。

孫:
そうです。そうです。そのページはさらに後であります。

夏野:
ざっくりみなさんにわかりやすいように。いまの普及率が33%。これがどこまであがるというふうに? 試算では。

孫:
いま、光に使われているのと、ADSL、その他で使われているので、全回線のうちの6割くらいは、ブロードバンドに使われている。

夏野:
そこが置き換わる。

孫:
その6割が光のブロードバンドに、ぜんぶ置き換わると。残り4割の方は徐々に、4割が3割になって、2割になって、でも最後の2割ぐらい、残った方は、もう電話のままで使ってていいじゃないですか。でも光を使った電話ですよ。

夏野:
たとえば5年後はどれぐらいで見ていらっしゃいますか。

孫:
まあ今よりは10%か……。

夏野:
7割ぐらいと。

孫:
7割ぐらいから、8割ぐらいになるだろうと。

夏野:
はい。わかりました。ですから、ここで黒字に移行する期間のあいだにブロードバンドの普及率も高まるので、いわゆるARPU(average revenue per user)と呼ばれる1家庭あたりの通信会社への支払料金も増えるって言うことも前提に、計算されているっていうことですね。

孫:
そうです、ちゃんと。すべて積算に基づいています。

夏野:
はい。で、あと重要なポイントとして、この光の話と、それから無線というのは両方やらなきゃいけないんだという話。

孫:
そうです。

夏野:
それから、まあいろんなことで、細かいことですけど、移行の周知、どうするかと、そういう技術的な、テクニカルな問題はほとんど解決出来ますよ、というお話。それから最後に、いちばん重要な問題として、これで会社は儲かりますと。

孫:
はい。

夏野:
儲かりますと。

孫:
儲かるから、公金は1円もいらない。

夏野:
はい、そうです。新たな、政府からの、お金をもらったりとかそういうことはいりませんということなんですけども……

孫:
ある意味、儲かりすぎるので、むしろ1400円もいずれは、さらに値下げの余力が出てくるはずだと。

夏野:
そういうメリットもある可能性がありますということですね。で、よろしいですか、ご質問…‥?(池田さんに)

池田:
ええ。はい。あのね、僕の質問はあとひとつだけで、今の孫さんのお話、数字が全部正しいとすると、これは大変素晴らしい夢のようなプロジェクトです。
もしこのプロジェクト評価が完全に正しいとすれば、僕は一番わかりやすいのはソフトバンクがNTTを買収することです。

いま政府が3分の1の株式を持っていますが、3分の1が国営という中途半端な経営形態はよくありませんから、政府が株式を売るべきだと、僕だけじゃなく色んな人が言っているわけです。
たとえば、政府がNTT株を放出してもう少し買い足せば、ソフトバンクがNTTを買収することだってテクニカルでは不可能ではないですよね。
いまの孫さんの話は、ソフトバンクが政府の株式を買収してNTTを買収するというプロジェクトの、投資家に対する説明だとすると、パーフェクトだと思うんですよ。

どういう経営の結果になっても、孫さんが100%責任を持たれるわけだから、これは極めて明快なんですね。ところが問題は、提案される孫さんと、実際にそれを経営する主体が違う場合が問題なんです。
今の計算は孫さんのプロジェクト計算ですが、実際にそれを経営するのは誰なのか。
例としては、NTTの連結子会社だとすると、NTTの取締役会が意思決定をするということになりますよね。
その場合には、NTTが孫さんの計算を採用しない可能性もある。

もうひとつの可能性としては、政府が決めるという、公社というのはさっき否定なさいましたけど、実を言うと、政府が決める場合がいちばん辻褄があうんですね。
政府が法律で全国に光を引くと決めるのであれば話は簡単ですが、お話聴いてると多分そうではない。

そうすると、問題は、誰が社長になって取締役会の構成はどうなって、議決権はどういうふうな構成になっているのか。

孫:
株主方ですよね。

池田:
そうです。はい。それを一番聞きたい。

孫:
はい、その答えも用意してある。次の第三部に入ります。NTTの構造分離の必要性。

(孫資料P.67)

 

まさにこのために今質問いただいたような、事前の打ち合わせはなんにもないけど、ちゃんと話の流れは読んでおりましたので、このプレゼンを申し上げます。

(孫資料P.68)

 

NTTは構造分離しなければいけない。どういう株主構成になるんだということですけれども、今現在はこのページにある左側のようにですね、NTTは通信のサービスの部分、つまりこの上のところですね。
上半分のところの、通信サービス、ブロードバンドサービス、電話サービスのところと、物理的な線のメタル線あるいは光線、アクセス回線の部門の両方を一体でやっているわけですね。
右上に書いてある接続事業者というのは、たとえばKDDIとかソフトバンクとかイーアクセスだとか、いろいろな会社が含まれている。これが両方一体でNTTがやっているわけです。

これを私は上下分離するべきだと。メタル線を100%光に置き換える。これアクセス会社ですけれども、アクセス回線部門ではなくて、アクセス回線会社にするべきだと。

完全明瞭会計の形にすべきだし、経営のポリシーもひとつだけに絞る。それはメタルを光に置き換える。この1点に絞って経営をやるべきだ、ということであります。

(孫資料P.69)

 

なぜそうすべきか。この左上の方が今現在ですけれども、メタルと光と両方あるからアクセス部門というのは赤字です。これを、メタルをゼロにして光にするということになると、光の部分が黒字化します。
黒字化するんだけれども、急に大幅な黒字になるのは、メタルの回線廃止によってアクセス部門がたいへん黒字化する。独占的優位性が一気に増すわけです。
独占的優位性で得た黒字化の利益が、上のNTT東西の通信部門(ブロードバンド、電話サービスなど)のところに利益が両方に使われるとなると、競争事業会社としてはたまったものではない。
だとすると、競争事業会社は自分を死に追いやるために、自分が乗っかっているメタルのサービスから立ち退くということに、なかなか合意できないわけです。
メタル回線の上に、ADSLとかいろんなおとくラインとか回線サービス、KDDIさんもメタルプラスとかやっている。ここから立ち退かない。いつまでも。
立ち退かないと、せっかく良きことをするのに話が前に進まない。だから、ちゃんと構造分離をして、イコールフッティングにする。

アクセス回線会社は、光一本化して、しかも安いコストで、同じコストで通信サービスをしているNTT東西と競争事業者に、同じ納期、同じ価格、同じ手続きできちっと公平に、公正に出す。
という形になるならば、今使っているメタルを前提にしたADSLだとかメタルプラスだとか、お得ラインとかそういうところから気持ちよく立ち退きましょうということになるわけです。これは公正競争を実現する。

(孫資料P.70)

 

ここの部分をまとめますと、国民のためにメタルの赤字は直ちに止めるべき。国全体のために。

メタル撤去でNTTのアクセス部門が大幅に黒字になるなら独占的優位性が増すわけですから、公正競争にならないので、構造分離する。
構造分離するのなら我々も気持ちよく立ち退いて、みんなハッピーだと。NTTも大幅黒字になる。そしてKDDIも、我々もイコールフッティングになって、国民は安くて良いモノが使えるようになる。公金1円も使わない。

(孫資料P.71)

 

「構造分離は、ほかの国では誰も議論していませんよ」という池田さんのブログにありましたので、他の国でも構造分離を今、真剣に議論しはじめて、実施もしはじめているという例をここに用意しました。

(孫資料P.72)

 

さきほど、夏野さんがおっしゃったように、「メタルが光に同じ1400円同士で置き換わった、物理線が置き換わったとしても、その上の通信サービスである電話サービス、あるいはブロードバンドサービス、これは今現在のADSLサービスとしてかかっている費用分ぐらいは要るんですよね?」それはその通りです。

ただし、イコールフッティングでみんなが光を使うようになりますので、競争が激しくなります。NTT東西も、我々も、KDDIも、競争が激しくなりますので、少なくとも今のADSLより光が安くなる。
物理線は1400円同士で、メタルも光も1400円同士で、その上のブロードバンドサービスも、電話サービスも競争が激しくなるので、今よりも安くなる。

今のADSLよりも安い価格で光に置き換えられるのに、ADSLに居座りたいというお客様はほとんどいないと思います。安くて良いものが入るならば。しかも、契約変更もいらないということであればですね。

(孫資料P.73)

 

ですから池田さんが、「全国一律料金は行なうべきではない」「地方はコストに見合う高い料金にすべきだ」「差額を自治体が所得補償すればいい」というような節をブログに(書いていました)。
僕はこれ、池田さんは言い過ぎじゃないかと思うんです。けれども、私はメタル線は全国一律価格で、いま実質一律価格で提供されていますので、光も一律、同水準で離島も田舎も全部提供してあげても、十分黒字になる。

(孫資料P.74)

 

1円も国費を投入せずにできるということで、やるべきだと。メタルから光に、一社的にやると設備競争が起きないじゃないかという、もうひとつ、池田さんもそうですが、他の先生方もよくおっしゃいます。
私に言わせれば、物理線がメタルから光のものに換わっても、それは単なる物理線で、ほとんどのメタルは50年前のメタルが今もメタルのままだし、いま光の物理線を入れたって50年後も物理線なんてほとんど変わらない。

必要な設備競争は、その上位レイヤーにある、ルーターだとか、スイッチだとか、そういうようなところが正に、あるいはIPのためのいろんなさまざまな部分。機械。
そういうところがまさに設備競争、技術競争しなければいけないところ。ですから、設備競争しなければいけないところは、はやくハイテク競争する。ローテクの物理線は、一軒の家に電力線を2本も3本も引いてもしょうがないわけで、電力線はほとんど変わらない電力線のままで。

その電力線を利用するテレビだとかエアコンとか冷蔵庫はどんどん競争すればいいし、その上の上位レイヤーにあるところの競争をすればいいということです。

(孫資料P.75)

 

50年に1回のパラダイムシフトをやるべき。そうすると、CATVの会社だとか電力系のブロードバンド会社が、「そんなことされると、俺ら置いていかれる」という風に反対する人がいます。

私に言わせれば、狭い了見じゃないかなというふうに思うのですが、もし彼らがいま引いてしまった物理線をそのまま使い続けたほうが、どうせ設備投資しちゃったから安く済むというときは、それをそのまま使えばいい。
いや、競争力を失う。新たに引くお客様のところは競争力を失う。もう引いてしまったところは設備投資しちゃってるわけですから、追加費用はかからないわけです。

ですから、そのまま使ったほうがいい。新たなお客さんに引くのには、価格競争力をなくす。そのときは我々と同じ値段で使えばいいじゃないですか。あなたも。

ですから、電力会社も、ケーブルテレビの会社も、物理線はなにもあなたのお客さんに引いたり外したりとかムダなことをせずに、同じように新たなお客さんにはNTT東西ですら、我々ですら、1400円で使うんだから、あなたも1400円で使った方が安いと思うときは、あなたも1400円で光を使った方がいいんじゃないですか。1400円以下でできるときはあなたの競争力があるから自前のやつでやればいいでしょう。ですから、1400円以上かかることはありえないです。1400円で使えるわけだから。1400円以下で使えるときだけ、自分のやつを使う。だから公平な競争が保たれる、ということですね。

(孫資料P.76)

 

(孫資料P.77)

 

株主価値はどうなるんだ、ということですけれど。経営形態として、株主としては今日現在NTT株主がドコモだとか東西だとかいろんな会社を持っています。そんなかで、東西のアクセス部門は赤字ですが、さきほどいったように、黒字になるアクセス部門は別会社にして、公平な競争にするのであれば、メタルを剥がせるので黒字になる。それを両方ともNTT株主が全部持つ。

池田:
ちょっとこれが分からないんですけど、これは連結子会社ということですか?

孫:
いや、分社です。分社。

夏野:
これ、説明するとAT&T方式といわれているもので、AT&Tが分解するときに、たとえば分配するんですね。NTTの1株を持っている人が、同じ人がアクセス会社の株を発行して、1株を持ってもらう。

孫:
そう。だから、いま現在NTTの株主は、NTT株と新会社株と1人が2株持つ。2株持つんだけど、両方の総和の価値が同じであれば、価値は同じだと。でも、実は2株持つんだけども、かたっぽが黒字の会社になるわけですから、NTT株主価値はむしろ増える、ということです。

池田:
つまり、株主構成はいまのNTTとそっくり同じということですね。

孫:
同じです。ひとりも変える必要がない。ですから、株主は誰がどうなるんだ、という議論はいらない。いまの民間上場会社のままだと。上場したままでNTT株主が1株が2株に分割して両方もてると、ということですね。

(孫資料P.78)

 

現在の、つまり2008年の営業利益が440億円がなんと3400億円になりますので、両方で6000億の利益が出る会社になりますので、同じ今現在の株主が、株主価値はむしろ10倍以上増えるということですね。利益の価値に応じて、比例して、株主価値が増えるということです。

池田:
あの、いまおっしゃったことで少し分かったんですけど。夏野さんからAT&Tとおしゃったように、AT&Tのいわば長距離網だけ作りだすようなことをして、まさに構造分離をしたわけですよね。その場合、AT&Tというのは、AT&Tという新しい会社の経営陣がいて、日本と違うのは政府が入ってませんけどね。その場合に、新しい会社が取締役会がいて、社長がいて、そこが意思決定するわけですよね。

孫:
そうです。

池田:
その社長が、仮に誰になるかしりませんけど、これ、NTTの人たちがかなりの部分を占めるとすると、いまの孫さんのおっしゃった試算を新しい会社の取締役会が実行するかどうか。

孫:
だから、新会社ができますね、分社化した。新会社の株主は現在のNTT株主ですけども、そのNTT株主が役員を決めるわけです。任命権を持っているわけです。その役員に立候補する人が、かならずしもいままでのNTTの持株会社の下の社長のつけ回しみたいな人事、グループ内の人事じゃなくて、NTTの筆頭株主ですから、いってみれば日本国民が筆頭株主、ということなわけでありますから、公募したっていいわけです。ですから、そこに例えばですよ、私はいまここに夏野さんがいるから言うわけじゃないですけど、例えば夏野さんがそこの新会社の社長になったっていいわけです。

夏野:
わはは。

孫:
誰かが立候補して、だって、株主が決めるわけです。誰でもいいんです。

夏野:
ただし、あの、取締役会は立候補制じゃないので。

孫:
いや、だけど新会社の取締役も従来のNTTの経営陣の横滑りではだめだ、というガバナンスを筆頭株主である日本国家が、政府が、むしろ声を大にするべきだ。

夏野:
いや、孫さん、そこは大事なお話だと思うんですけど、いままでお話いただいた内容っていうのは非常にですね、これ実はNTTがコンサル料を払って……

孫:
そうなんですよ。聞いてもいいような話なんですよ。私に文句を言うんじゃなくてね。逆にNTTの株主価値が増える。

夏野:
逆に言うとですね、なぜNTTを、このアクセス会社を分離しなくちゃいけないか。逆に孫さんがなぜそこを主張されているかというのを私なりに解釈すると、やっぱりいまの経営陣だとちょっと難しいかな、と思っていらっしゃらるということを、ずっと言ってるということを私は聞こえるんです。

孫:
いえ、それはね。NTTのグループの中にも何万人も社員がいますから、もともと公社時代に入った方もたくさんいるわけです。それがむしろ経営陣の大半。

夏野:
ていうか、あの、私以外の役員は全員、公社時代に入った方でした。

孫:
そうでしょ。ですから、公社時代の時の方というのは、むしろ日本国民に優れた通信サービス、通信回線を日本中に引きたいと高い志で入社しておられるんです。そういう方が、志高い方が絶対にNTTの組織の中にもいる。
さらに、ガバナンスとして、相撲協会じゃないけど、社外役員を筆頭株主である日本国家、つまり日本国民が筆頭株主ですから。議論をすべきだ。

夏野:
実は、NTTの持株(持株会社)というのは著名な方が何人も社外役員に入っていたりして、形としては、完全に民間会社になっていますし、それからアクセス回線の話も含めて、いま赤字を出していますけども、国のお金は使ってないでやってますし。ということでいうと、一番早いのはこの孫さんがおっしゃってた光への変換を、いまのNTTのままやるっていうのは、いまのひとつの、半分くらいの解にはなる。

孫:
だけど、それいまのNTTの構造の中でやると、機能分離というわけですね。そうすると利益がNTTグループの中でそのまんま、ひとつの持株会社の中でぐるぐる回りますので、競争会社としてはたまったもんじゃない。

あなたが利益を出すために、我々がメタルから立ち退くんですか。

夏野:
ただ、2つの議論があって、ひとつはやっぱり、光の道を実現するために、アクセス会社を分離すると。これはどちらかというとマネージメントをきちんと、決断をもってやれるかという話と。
もうひとつの話は、競争政策として、アクセス回線のところがみんなが共用の形にしないといけないんじゃないかと、この2つの話をいまおっしゃられたということですね。

孫:
そう、おっしゃるとおり。

それでね、もうひとつは、アクセス会社は新会社であれば、その新会社の、まったくNTT株主は株主で、経営陣はまったく切り離すべきだと思うんですね。完全に。社員はNTTの中からいっぱい募っていいですよ。経営陣はNTTのもともとの役員あるいは社員の中からあがってきてもいいけども、半分以上はむしろ社外役員で、しかも社外役員の中に、例えばイコールフッティングで利用するKDDIの小野寺社長とか、たとえば私も社外役員の一人に入っても構わない。つまり公平さを担保するという意味で、競争政策、そのためにフェアな形にするべきだ。

夏野:
いまふたつの論点が孫さんの主張には入っているということですですが、池田さんいかがですか。

池田:
さっきから僕、あの、ご質問しているのはひとつのことだけで。要するに、新しい会社の経営責任を誰がお取りになって、それからさっきからおっしゃったような、赤字になって税金は1円もいれないということで、民間企業が赤字が出た場合にもそれを補填するか、あるいは最悪の場合、撤退するという判断もしなくてはいけない。それは当然新会社の社長がなさるわけですよね。

孫:
そうです。

池田:
つまり、その取締役会なり社長が孫さんのプロジェクト評価、もしも同意されない場合、この孫さんの計画は成り立たないわけですよね。そこはどういう風に考えられているんですか。

孫:
ですから、この分社化をする前に、大枠の、基本的考え方、基本的数値が、そもそも理にかなうものなのか、無茶苦茶なでっち上げなのかというのを、この数ヶ月を掛けて、やっぱり専門家として、我々もKDDIも、あるいはほかの外部の方も、NTTの経営陣の方も、その議論に参加をして、検証すべきだと思うんですね。
検証して、なるほど、おおむねそれで行くな、となったら、筆頭株主である日本政府がしかもNTT法という、独占を、もともと100%独占して、国家が100%株主だったわけですから、筆頭株主日本国家が議論に参加をして、NTT法をいろいろ、いまユニバーサルサービス義務とか、法律の中にあるわけですから、その法を絡めて、なおかつ日本国家として、国民として、何が一番いいのか、上場していますから、株主価値も含めて議論して、なるほど、おおむね全体いいな、ということであれば、そういう決断をし、役員は株主総会でやっぱりちゃんと公選されて、その筆頭株主である国家も、ちゃんとものを言う、筆頭株主として、サイレントな筆頭株主でなくて、つまり国民がものを言うということが鍵だと思うんですね。開かれた議論にする。

夏野:
ただ、郵政会社があんなことになってますんでね。元次官になっちゃってますからねえ。

孫:
だからそれはね、元次官とかいう天下りを絶対にここでいれちゃいけない。

夏野:
なので2つ、私の方から質問というか。ここはやはり孫さんに語ってもらった方がいいなと思っている点が2つあって、1つは光の道の話を孫さんがされるときに、いまお話しされていることは素晴らしく理にかなっていると思うんですけれども、僕は問題は2つあると思っていて、それは、本当に実行するためには池田さんの指摘のように「経営陣は誰が選ぶの」とか、株主構成が今のままだと、今でもNTTの経営陣は国家が選べるわけですけど、実際はそれができてないわけですね。

孫:
それをやるべきですね。

夏野:
それを途中でできなくなっちゃったら、みんな、郵政を見ているので、小泉さんのときはよかったけど、途中で倒れちゃったら、結局、次官が来て元に戻っちゃう話に。
これをみんな心配してると思うんです。これが1つ。
それからこれは経営の話として非常に、ちょっと専門なんですけど、もうちょっと手前で、僕はやはり佐々木さんのご指摘になられているところだと思うんですけど、ラインが引かれても、あるいは光が来ても、33%から70%まで上げるために重要なことはやはり、今使っている人はだいぶ使っているんですが、使ってない人はどれだけ使うかというところだと思うんですけど、このためには電子教科書とか電子カルテやるために文部科学省と厚生労働省という、最大の抵抗勢力ですね、こういったところに対して網をかけていかなければ、5年で実現しないと思うんですよ。
で、さらに言うと、厚生労働省は薬のネット販売まで規制しているような、先進国ではあり得ないような、僕は愚策と思ってますけど、愚策を平然とやっているところなんで、例えばすべての自治体がね、住民票取るのもネットでというのもなかなかやってくれない、選挙ひとつなかなか、「ホームページを変えちゃいけない」とかまだ言ってるみたいな、「ツイッター使っちゃいけない」みたいな。こういうものを変えていくのとセットで語らないと、これ以上の説得力がでないと思うんです。

孫:
おっしゃる通り。おっしゃる通りで、そのために次のプレゼンが。

池田夏野:
はははは。

孫:
ちゃんと読んでるのね、事前の打ち合わせはしてないけど。でも、その話に入る前にまず、池田さんがそもそも「光の道はナンセンス」だとおっしゃったので今日はそれがきっかけだった。

池田:
はいはい。

孫:
その経営形態ということについて、私が一生懸命計算した試算、専門チームをいっぱい作って、膨大な時間をかけて調べたのがだいたい想像いただけると思うんですが。この計算根拠が正しいという前提であれば、池田さんは光の道に反対ですか、賛成ですか。

池田:
それはもう、さっきと同じで、本当にこれが100%正しいと仮定すると、孫さんがご自分でおやりになってはどうですか。

孫:
私、やりたいですよ、やれるものなら。

池田:
ええ。

孫:
だけど、ソフトバンクの経営というものがありますから、

池田:
はいはい。

孫:
まだ、借金も返し終わってないから。

夏野:
はははは。

孫:
それはそれで、私には別途の責務がありますけれども、でも少なくともね、イコールフッティングで中立的な会社になるアクセス会社の社外役員の一人に入って、しかも責任をちゃんと持った形で社外役員として入るということは、僕は全然逃げませんよ。もしそういうことで、「お前、言ったことをちゃんと役員会の中で発言して、言ったことを言いっぱなしじゃなくて本当に実現させる自信はあるのか」ということであれば、僕は仮にそこの社長じゃなくたって、サイレントな社外役員ではないです。つまり、役員には、経営陣としての役員には、善管注意義務と忠実義務という二大義務があって、株主の価値に対して忠実でなければいけない。

夏野:
形としてはそうなんですけど、やっぱり僕は、郵政会社の例を見ていると社外役員でもNTTでもなかなか少ないと思うんです。

孫:
少なくとも、日本国家が筆頭株主ですから、株主総会で社外役員を半分以上は入れるべきだと、そのうちのひとりに誰か民間の会社から立候補していいということであれば、私は立候補するということを今ここで約束します。

夏野:
ただ、今の、

孫:
立候補して、なおかつ国が筆頭株主ですから、うるさいあいつを役員のひとりにしたら面白いということであれば、それで社外役員に入ることができるのであれば、私はやってみせる。中立な会社としてちゃんと言った通りのことを、役員会で机たたいて大騒ぎして、

夏野:
でも、多数決で負けたら、

孫:
多数決で負けたって大声上げる。

池田:
(笑い)

孫:
だって、国民に開かれた議論にしていきましょうということなんですから。

夏野:
そうそう。そこはね、みんな異論ないと思うんです。

孫:
だから僕は、KDDIの小野寺さんも入るべきだと思うんです。イーアクセスの千本さんも入るべきだと思うんです、電力会社の社長も入るべきだと思う。

夏野:
ただですね、今の孫さんのポイントは、どちらかというと中立的な競争を実現するためにはそれでいいと思うんですけれども、やっぱり、リスクと取ってしかもいろんな問題を抱えながら光に置き換えていくという、前半の話ですね、中立的なアクセス部門を分離して、みんなで公平競争しましょうという論点と、もうひとつ一番大事な実現させていくということ、実現に関しては僕も社外取締役をやっているので、まあ10社、6社は上場なんですけど、やっているので、やっぱり実行するところは実務の方に頑張ってもらわなければならない。

孫:
そうです。欧米では実務を行う社員と経営の意志決定を行う役員会はある意味、厳然たる役員会が強い命令権を持っている、

夏野:
まさに、そこがポイントなんです。

孫:
役員のところにちゃんとね、僕は、

夏野:
その欧米型のガバナンスを実現するっていうのをセットで今回言っておかないと。

孫:
そうです、おっしゃる通り。だから、筆頭株主である日本国家、それを管轄している総務省。現に今、総務省はそっぽを向いているかというとそうでもなくて、現職の大臣が、なんか今日も8時くらいからなんかUstreamで、

夏野:
10時ですね。

池田:
10時。

孫:
なんか、話されるそうですけど。まあ、大いにやる気を持っておられる。総務省の幹部の方々も、最近ね、「ひょっとしたらやらなきゃいかんかな」という気に少しなりだしているように感じる。

夏野:
ただ問題はね、今回原口大臣に残っていただいて良かったなと思ってるんですけど、変わる可能性がありますよね、

孫:
そりゃ、あります。だからこそね、こういう議論を開かれた議論として。

夏野:
おっしゃる通り。

孫:
ね。テレビで30分とか15分とかちょろっとじゃなくて。

夏野:
もう1つは開かれた議論のときに、やっぱりここまでのことを話すべきだと思う。

孫:
そう。

夏野:
経営の問題、ガバナンスの問題。

孫:
すぐね、なんとか委員会とかになると、15分ずつとかね、時間の制限をきられてね、「はい、次」とかいってね、思う存分語れないわけですよね。

夏野:
あと、もう1点ですね、一応司会なんですけど。

池田:
夏野さんと孫さんの討論会に。(笑い)

夏野:
NTTの半分バックグラウンド的に言うと、NTTもものすごく、これはかなりマジメに取り組んできた課題だと思うんですね。

孫:
いやいや、NTTさんもですね、光を引きたいんだと思う。

夏野:
そうです。

孫:
引きたいけど、メタルで赤字を出してるから引くに引けないというね、つまり、金がかかるわけですよ。

夏野:
いや、それで。

孫:
2600億円赤字出してたらね、光のためにまたどんどん突っ込むという勇気もなかなか。

夏野:
ただ、それでも90%までもってきたのは、なかなか頑張ってやってきたと思うんですけど。

孫:
そうそう。

夏野:
そこにはやっぱり、最後の10%になかなか難しい問題がいろいろあるなかで孫さんが、この試算をしていただいたのは、僕はむしろ応援だという風にとらえてもいいと思う。

孫:
だから、NTTの経営陣の方も社員の方も本当にね、高い志で一生懸命光を引こうとしておられる。僕はそこは非常に高く評価しているんです。尊敬申し上げている。だけど、今のままだと、30%の普及率、近所までは9割来てるけども家の中までは引き込まれないというところで止まっちゃうわけですよね。

夏野:
だから、これをやるのはやっぱり、最後はリーダーの話かなあと思うので。やっぱりこれまでの日本の産業の上で、調整型のリーダーだとなかなかそこの最後の10%の決断ができないと思うので、それの後押しとしては僕は非常にこの孫さんのご提案は非常に面白い、素晴らしいと思うんですけど。
ただ、さきほど僕がちょっと言いかけた、国の抵抗勢力。厚生労働省、文科省、それから税務署あるいは選挙管理委員会、このへんをどうやって動かしていくのかっていうのはどうしましょう。

孫:
だからまあ、利活用のどんなメリットがあるかというのは今から話しますけど。その前に、いいですか、池田さん。

池田:
あのね、僕もさっき申し上げたように、分割した会社のガバナンスっていうのがこの問題のカギ、最大のカギだと思うんですね。さっき夏野さんがAT&Tのことをおっしゃいましたけど、AT&Tというのは分離するときは夢のような会社で、それこそ儲かる会社だと思われていたわけです。80年代に分化したころは。ところが、残念ながら結果的にはうまくいかなくて。競争がはげしくなったってこともあって、競争が激しくなったことは良かったんですけれども、AT&Tに関しては、だんだん調子悪くなっちゃって、この間、ちょっと前に地域電話会社に吸収合併されて今はAT&Tって名前になってますけど、あれは元は地域電話会社が買収した会社なわけですね。つまり、新しい会社を作るということはいいんですけれども、その会社の経営がおかしくなってくると可能性も当然ある、その場合に、じゃあ、それが赤字になったときに誰がその資金を補填するのか、さっき税金は一銭も入れないとおっしゃったので、そうすると当然株主になってる、一般株主あるいは企業が赤字を補填しなければならない。そういう意志決定は、いったい誰が行うのか。

孫:
上場会社ですから、郵政と違って上場会社ですから当然、株主がそこを常にウォッチして四半期ごとに決算発表を行って、今現在2600億円赤字になっている会社が僕のさっきの試算で3600億の黒字にとりあえずなるわけですから、黒字になった後にまた赤字に舞い戻っちゃったというリスクがどのくらいあるのかというのは、僕はそこまでリスクないと思いますよ。だって、回線のところは競争で付け替え、付け替えじゃないわけですから。そんなに難しい経営じゃないと思うんですよ。

夏野:
孫さんのプランのあの5年の間に、どんだけ効率的に光に変えられるかっていうポイントと、どんだけ電子教科書を含めてアプリケーションが出てくるかという、ここで経営が決まると思うんですね。つまり、最初の5年が10年かかっちゃうと試算が全部崩れちゃう。

孫:
おっしゃるとおり。だから5年でやるようなちゃんと人員とかを計算して、我々も色々引いた経験がありますから、僕はやれるという計算はありますが、それはいまから数ヶ月かけて、ちゃんと検証して、精査して、それは無茶だできないということであれば、そこでもう一回議論すればいいわけですが、私はできると思っている。それをただ精査していただきたい。精査した結果、できなければおまえは嘘つきだと、その時点で言っていただきたい。

夏野:
で、孫さんのご主張としては、その精査をちゃんと公でやって欲しいと。

孫:
そういうことです。

夏野:
僕おそらく、NTTの方はやってると思うんですよ。あれ、孫さんが言っていることは本当かってね。だって自分の手元にデータがありますしね。経営企画部とかなんとか企画部がいっぱいあるわけですから。

孫:
だからそういう意味ではね、NTTさんも反論しているなかに、無茶苦茶な反論はあまりないなと。反論しているなかに、本当にできますかねえと。でもメタルを前提にした信号機とか、セキュリティ、セコムみたいなヤツとかね、CAT端末(クレジットカードの信用照会端末機)とか、そういうの使えなくなるどうしようとか。でも反対している内容は実はさほど膨大な反対でなくて、僕に言わせれば解決可能な十分な範囲に収まっている。

夏野:
それはその5年間に苦労しそうなことを色々と問題を出してきている。

孫:
僕に言わせれば、その反論している内容は全部精査できる。逆にいうと全部解決できる範囲だと思っている。

夏野:
そこが経営陣の手腕になるとおもう。
ちなみに原口さんの会見が始まったようなので、ちょっと休憩代わりに拝見しましょうか。

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