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【書き起こし】孫正義VS池田信夫「光の道」対談(夏野剛司会)Part3

孫正義vs池田信夫対談(夏野剛司会)「光の道」対談の書き起こしです。

USTREAM動画
「光の道」2 part1
(1時間57分あたりから最後まで)

資料
孫正義資料(PDF)
池田信夫資料(PDF)

聞き間違い、わからなかったところ等ありますがご容赦ください。

(原口総務相UST会見を見る3人)孫:
はい。
これ、声は聞こえないの? 出してみて。

夏野:
スピーカーでますか?

孫:
なんかマスクつけたり、外したりしているね。

夏野:
何が起こっているか聞きたいですね。

孫:
あ、聞こえた聞こえた。

 

夏野:
Ustreamと画面が違いますね。

孫:
こっちニコ動。

夏野:
ニコ動は生なんで。
あ、カメラ位置が違いますね。
あ、ここだ。
えらく音が途切れているな。

池田:
ちょっとこれ違う話しているね。

夏野:
これどっちから出しています? 音。Ustream? ニコ動は?
ニコ動側に変えた方が、これプレミアムはいってますね。
それに変えた方が音が途切れない。

どちらかというと時事の話ですかね。今日は。
風邪引いていますね。
関係なさそうですね。

 

孫:
口蹄疫か。
じゃあ原口さん頑張ってください。

夏野:
なんかこっちに言ってるよ。
こっち。ニコ動。

池田:
Ustreamはこちらですか?

夏野:
Ustreamはこれで。
ニコ動のカメラがこちらにあるんでたぶん今挨拶されている。

孫:
関係ないね。
頑張ってください。

夏野:
はい、じゃあ原口さんありがとうございました。
じゃあこれ落としていただけますか。

じゃあちょっとご質問。

池田:
もう、だからね、僕のようするに、新しい会社のガバナンスがほとんど唯一の問題で、それ以外は僕は一番むしろ疑問なのは、孫さんがそれほど自信をもってプロジェクト評価なさっているんだったら、僕は一番素晴らしいのは、NTTを100%民営の会社にして、それを孫さんは買収なさって、まさにボーダフォンのようになさるのが一番明快で、誰も文句がつけようがないと思うんですね。(笑い)

孫:
まあ、それは借金返し終わったら、買収してもいいけど。それは政府が売るっていうのであれば。でも、まあそれは取りあえず、あちらも上場会社ですからそれはうかつにそんなことは申し上げられない。あの、コメントしにくいんですが。
ただ、少なくともさっきいったように、NTTをまるごと買収しなくたって、アクセス会社のところを分社化して、アクセス会社のところの社外役員に、一員となって、KDDIの社長だ、なんだと、イーアクセスの千本さんとかと、ワイワイガヤガヤいいながら、日本国家のために責任をもって、メタルを引き剥がして、光に置き換えて、ちゃんと黒字化するということで、その責を問われる立場になっても構わないと。逃げませんよ。もし選ばれたらですよ。

夏野:
いや、孫さんがおっしゃって意味はですね、そこで責任をとるよとおっしゃっているんだけど、なかなかその、それをおっしゃると、視聴者には「乗っとりじゃないか」、あるいはNTTが90%まで築いてきて、最後の10%のところで、みんなでそうやって乗るのか、って聞こえるのも事実だと思いますね。

孫:
それはね、日本国家が筆頭株主で、上場会社としてあって、そこから上がる利益はそのアクセス会社に来るわけですよ。そのアクセス会社の利益は我々には1円もこないわけですよ。

夏野:
ただ、株主構成としては、いまのNTTと変わらないので、そうすると、そこにあがってきてもNTTに上がってきても同じじゃないかという見え方もしてしまうので。

孫:
どちらの利益で上がっても、株主から見れば、同じですよ。両方とも利益がでるわけですから、我々(ソフトバンク)の利益にはならない。

夏野:
ただそうするとですと、競争政策の話を除けば、NTTが自分で一生懸命やってくれてもそれでいい、という話になってしまう。

孫:
私が役員にならなくてもいいですよ、全然。
それはちゃんとさっき池田さんがおっしゃってるように、その新しい経営陣が公平な立場で、一生懸命メタルから光に置き換えるようにやってくれればいいだけで、アンフェアなことをしなければいい。私はなにも役員に入る必要は全然ないですよ。

夏野:
ここでですね、ユーザーの質問が。これは孫さんにしてもしようがないんですけど。「この話でいつも思うけど、なんでNTTがこれをしないんでしょうか」という質問です。池田さん。

池田:
だからね、これはさっきから僕が申し上げている通り、孫さんのプロジェクトが本当に100%正しいとすれば、NTTが当然やっていいわけですよね。つまり、この問題はさっき孫さんがおっしゃっている、NTTの経営問題と、光100%するといっていう問題は、実は別の問題、論理的には。
本当にいまの計算が100%正しい、半年ぐらい議論して、NTTの経営陣もそのとおりだと納得したら、NTTの経営陣がまさに株主価値を増やすわけだから、おやりになればいいわけです。つまり、そのためには構造分離という外科手術をする実はないわけで、実は構造分離……

孫:
外科手術をしないとね、そこで上がる利益がその競争部門である通信のところに合わせて利益が使われる形になるわけで、我々競争会社としては物凄く不利になるから、結局メタルから立ち退かないんですよ。メタルから立ち退かないと、結局二重構造のまま。要するに、地上げと一緒ですよ。

夏野:
ただ、ただですね。その前の議論は国家天下という議論ですが、競争政策の議論で言うと、あそこで赤字出しているから助かっているということもありますね。

孫:
そうそうそう。競争事業としてはね。だけど、そういう小さな考えはよくないでしょう。

夏野:
天下国家的には意味がない。

孫:
ようするに天下国家のためにも、なおかつ公正な競争のためにも、それから国民ひとりひとりのためにも、みんなにとっていいんじゃないですか。

夏野:
やはり天下国家のためになるためには、やっぱりアプリケーションがついてこないと。せっかく光が整備されたのに、みんな電話だけのために使っていたら。それでもNTTのアクセス会社の経営としてはいいけど、孫さんがあれを証明していただいたんですけど。その先にいいことないですよね。

孫:
じゃあアプリケーションいきますか。はい。
よろしいでしょうか。

(孫資料P.80)

 

光の道が生み出す世界。

(孫資料P.81)

 

ということで、まず基本的人権として自由権、社会権、参政権、情報アクセス権。21世紀の新しい権利として、情報アクセス権。全ての国民が、等しく公正にアクセスできるという権利が必要だと。

(孫資料P.82)

 

それは都会の人も田舎の人も格差があってはならないと、いう風に私は思っています。

(孫資料P.83)

 

離島も田舎も含めて、税金を1円を使わずに、100%光にして、なおかつ、利益が増えるのであれば、すべての国民が、平等にその21世紀のメリットを得られると、いう風に僕はすべきだと思っているんです。

(孫資料P.84)

 

人々が豊かになるということ。それはお金だけではなくて、人々がより健康になる、素晴らしい教育ができる、家族の絆が増える、友だちのこういうコミュニティの輪も、ツイッターだ、Ustreamも含めてよくなっていく。そういったことが人々が豊かになっていくことだと思います。

(孫資料P.85)

 

光のあるライフスタイルというのはどんなものか、ということですけども。

(孫資料P.86)

 

(孫資料P.87)

 

例えば、さきほど夏野さんもおっしゃっていたように、オンラインショッピング、薬も買えないという状況ですけども、アメリカだとか、中国、韓国まあ色々あるわけですけども、オンラインショッピングは急激に伸びてきています。

(孫資料P.88)

 

地方経済の活性化に、楽天の三木谷さんが大いに貢献していると思います。世界一の流通網がいま日本にはトラック便があるわけですから、これを大いに利用すべきだ。

(孫資料P.89)

 

世界一のイーコマースビジネスのためのロジスティクス、決済、オンライン店舗、それからいろんな規制も緩和すべきだ。

(孫資料P.90)

 

で、もうひとつ。なぜ、光の道が必要なのかというのに、デジタル教育だ。

(孫資料P.91)

 

高度なIT教育、プログラムの提供。

(孫資料P.92)

 

それから、いろんな大学だとか専門学校、いろんなところで、全部で使えるようにしていくべきだ。

(孫資料P.93)

 

例えば、教科書。紙の教科書で十分だ、という人が、時々いますけど、じゃあ紙の教科書で正しい英語の発音できますか?
まあ、僕も中学校で英語習いましたけど、アメリカに16歳で渡ってみて、ほとんど日本で習った英語の先生がしゃべっていた発音はなんだったんだ。やっぱり日本人が見よう見まねでじゃべる発音より、外人が直接しゃべるネイティブの発音をですね、しゃべってくれる電子教科書のほうが、正しい発音を学べますね。

(孫資料P.94)

 

化学記号だ、物理だとかいうのも、感動だとか好奇心をもっと刺激してくれる。

(孫資料P.95)

 

歴史だって、面白くなる。検索能力も大いに飛躍できる。

(孫資料P.96)

 

この教科書は3600億円でできます。1台あたり、約2万円で作れます。なにもiPadに限らなくて、AndroidもこういうiPadみたいなものがこれから続々と出てきます。
そういうことで、1台あたり、だいだい2万円くらいでできるわけですけども、すべての1800万人の学生全員にタダで配っても、年間700億円、3600億円でワンタイムのコストで済みますが、これ八ッ場ダム1本分より安い。八ッ場ダム1本分より安くて、八ッ場ダムなくても日本国家なくならないけど、日本の子どもたちが情報武装しないと、日本の国家がヤバイ。

(孫資料P.97)

 

その、費用を実は今年から13000円、月に子ども手当が出るようになりましたが、例えばこの13000円の内数として、現金が12720円、電子教科書を現物支給して、月280円で済むんです。電子教科書代2万円を、72ヶ月で割り算すると、月280円。割賦払い。(笑い)
月280円で済む。つまり、子ども手当のほんの内数でできちゃう、ということですね。ですから、新たな金がいるんじゃなくて、いまの予算の範囲でできますよ。

(孫資料P.98)

 

たとえば、電子教科書の中にはNHKのアーカイブ、動画も全部NHKの教育番組だとか、ドラマもいっぱいいいものがあります。これもタダで使える。

(iPadで英語の教科書のデモ)

 

ここで、ちょっと話に飽きた人のために、デモを用意いたしました。たとえば電子教科書のデモ。ここにちゃんと、我々が作りました。例えば英語、といことで、英語の教科書を作ってみました。

 

はい。

 

というわけでですね、これ、電子教科書で例えば英語だなんだってことができます。
例えば、ほかのやつですね。
社会、んーやっぱり理科が面白いね。

 

理科、ということで、電子教科書の理科バージョン。
こういう風に、理科の教科書もちゃっちゃっとめくれる。

たとえばカマキリ。従来の紙の教科書だとカマキリの写真は動きませんけども、例えば、カマキリがこうやってちゃんと気持ち悪く動いてくれる。

 

この気持ち悪く、おどろおどろしいカマキリの映像がこうやって教科書でちゃんと動いて出てくる電子教科書という形になると、子どもたちは目を丸くして、「おー!」
カマキリって最近都会の子どもは触ったことも見たこともない。でも、ちゃんと動くカマキリという形になると、感動もひとしおだ、ということです。

 

ということで、理科だとか、算数だとか、色々ひとつひとつ上げればキリがないですけども、紙の教科書で得られないような感動を続々と提供できるということですね。

ということで、次のページにいきます。

(孫資料P.100)

 

次の事例として、電子カルテ。

(孫資料P.101)

 

この電子カルテがクラウドに入って、すべてのお医者さん、看護師、介護のヘルパー、薬局。こういうところに、これまた全部無償で配る。すべての医療データが、クラウドに入って、お医者さんとかが月280円で利用するか、あるいは削減できる医療費で280円くらい国が払っても良い、ということであります。

(孫資料P.102)

 

これは医療クラウドを病院の先生だけでなくて、製薬会社も有料で利用する。だからクラウド費用は製薬会社の利用料とかでタダで作れる。国民は自分の健康、自分の家族の健康を生まれた時から、死ぬまでの間のものをすべて把握することができるようになる。

(孫資料P.103)

 

お医者さんも研修医と専門医が相談したり、勉強したりすることができる。地域の離れたところの格差も埋められる。

(孫資料P.104)

 

A病院とB病院で、何回も同じ検査をしなくても、病歴だとか、レントゲンの結果だとかを見られる

(孫資料P.105)

 

あるいは自宅で介護している場合、奥さんが自分の主人の状況が非常に心配だ。そこでお医者さんと電子カルテをWi-Fiで繋いで、お医者さんがそこで適切な指示をしたり、コンサルを行うことができる。

(孫資料P.106)

 

あるいはその患者の情報を、医師不足のところにも、ノウハウをいろんな提供したり、ということができます。

(孫資料P.107)

 

たとえばiPhoneだとかiPadに医療アプリが続々といま出てきております。

(孫資料P.108)

 

こういうことで、いま、年間に30数兆円も医療費が掛かっている。いま税収が40兆円を下回っているくらいの感じですね。税収以上に医療費があと5年でかかっちゃう。もう日本国家は医療費倒れする。
こういう状況で3割くらいは医療の事務、医療の検査、医療のレセプト、薬のですね。こういうものをIT化することによって、3割くらいは僕は医療費のコストを下げられると思っていまして、つまりこれは10兆円規模の削減ですよ。10兆円規模の削減ができるなら、お医者さん、医療関係者、全員に無償で電子カルテを配っても、もう9兆円以上お釣りが来ますよ、ということです。

(iPadによるデモ 電子カルテ)

 

これは医療の電子カルテのデモもちょっと用意しました。
なんでも用意している。紙芝居。

十分に準備をしてまいりました。例えば……

 

ん、これ。これデータが入っとらんな。消されたのか。
これだけ? これじゃデモにならんじゃないか。

 

これGEが用意した電子カルテのデータがあるんですが、これを触っていくと、さまざまな医療データ、レントゲンだとかCTスキャンだとか、サーバー上に、クラウド側にのせて、効率アップすることができるようになりました。

(iPadを活用した手術の映像 神戸大学杉本先生)

 

こっちはせめて見れますね。

 

こういう風に、手術の真っ最中でもですね、こうやってお医者さんがiPadを使いながらやっていくと。

(画面が暗転して)あれ?
終わっちゃったんだね。

こういうように、手術の真っ最中もお医者さんがiPadを使って、いろんな手術を正確性を保ちながらやっていくと。

 

こういうふうな事例でありました。

(孫資料P.111)

 

もうひとつ。なぜ光か。

(孫資料P.112)

 

クラウドです。
つまりさきほどのように、教育だとか医療だとか行政、さまざまなものをクラウド側にあげて、ネットワークを活用しながら、すべての日本国民が等しく使えるようにする。

(孫資料P.113)

 

そのためには、光が前提になるわけですけども、日本の競争力は落ちましたね。昔は30年前は電子立国、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とか言ってたわけですが、これからは、情報立国していかなくてはいけない。

(孫資料P.114)

 

競争のパラダイムも、安さとか、技術から、安心安全で日本は対抗しなければいけない。

(孫資料P.115)

 

(孫資料P.116)

 

すべての産業が、クラウドにしていくべきでしょう。

(孫資料P.117)

 

クラウドの全体システムごと海外に打って出る、ということをしていかないといけない、ということであります。

(孫資料P.118)

 

(孫資料P.119)

 

ということで、電子カルテのクラウドだとか、そういう全世界にクラウドジャパン。

(孫資料P.120)

 

だから、これ最後戻りますけどもね、池田さんは情報アクセス権なんか有害だ。都市が大事だけど、田舎は切り捨てるべきだ。
非効率的な労働人口を田舎に固定していいのか。
地域ごとのコスト格差を無視して全国一律のうんぬんかんぬん。

これは僕ね、池田さん言い過ぎだと思うんですよ。
これは、田舎の方で本当にコストダダ漏れで、なおかつ公費をつかってうんぬんだ、ということであれば問題ですけど、さきほどから僕が申し上げている通り、1円も税金を使わずに、ね。なおかつ赤字をむしろ減らして、いままでの光よりも、ADSLよりも安い値段で、使いたい人が田舎であれ都会であれ全部やれるということであれば、損する人はいないと思うんです。

(孫資料P.122)

 

だから、せっかく大臣も総務省も最近は言い始めている、光の道、これはジャパンクラウドの前提となる。

(孫資料P.125)

 

ですから、e-Japanというのが2000年、その当時は私も総理大臣を含めた各大臣の前で、e-Japan戦略の提唱者のひとりとして、一生懸命発言しましたが、2010年、ここからはc-Japan、つまりクラウドジャパン構想ということで、日本全体をさまざまにクラウドでレベルアップするべきだ。その前提としてメタルをやめて光を使いたい。すべての人々に光を。夢を。
こういうことを望んでいるわけです。

夏野:
はい。池田さん、あの池田さんのポイントを孫さんが出して頂いて、ご意見を。

池田:
あのね、ユニバーサルサービスの問題については、たぶん総務省の考え方と孫さんの考え方は少し近いと思う。僕の意見は違うんですけど、僕を含めてかなり多くの経済学者が違うんですけど。
なぜかっていうと、いま孫さんがおっしゃったように、1円も税金をいれないことは実は本質的な問題ではなくて、全国一律に、例えば1400円としましょうか。その値段で仮にはるとしても、例えば、いわゆる条件不利地域、離島とか。例えば、今年の3月だったかな、小笠原諸島に光ファイバーを全部引いたわけですね。八丈島から引いたわけですよね。だいたい800kmくらい。小笠原、父島、母島両方とも合わせ、2500人しかいない。100億円掛けて、そのうち60億円が政府が出しているんだけど、つまり100億円を2500人にサービスしている、1人当たり400万円税金をつぎ込んでいるわけですよね。これを仮に民間会社、当然この新会社もこの小笠原諸島にも、例外なく引かれるわけだから、100億円掛けて2500人にサービスするということが行われるわけですよね。つまり、その場合、一人当たり400万円のコストが掛かっちゃう。

これを仮に1400円で小笠原にサービスをするとすると、100億円引く1400円かける何年分のコストは東京都民が負担してるわけですね。それは政府の税金じゃないけど、経済学で「隠れた課税」と言うわけですけれども、つまり、ユニバーサルに同じ値段でサービスするということは、一番条件のいい人に課税する。つまり厳密な意味での法的な課税ではありませんけど、実質的に課税をする。で、それがなぜ良くないかというと、例えば東京都の一番都心で世界の企業と競争しなきゃいけない。それこそこれからね、新興国との競争は激しくなってくる、という企業が結果的に小笠原のコストを負担することになると、競争劣位におかれるんですね。
つまり、グローバル競争の中で、日本の競争の一番エッジに立つ企業が、いわば、僻地のコストを負担することによって足を引っ張られちゃうというおそれがあるということです。

孫:
まあ、それをね、公金を使ってやらないといけないというとまた議論が長くなるんですけれども、税金を1円も使わないで上場会社として今までに2600億円赤字の部分が、3500億円の黒字になって実現できるのであれば、損する人はいないわけですね。

池田:
いやいや、それは東京都民が損をしている。例えばさっきの小笠原の100億円というのは東京都民が負担しているわけ。それが、国じゃなくて民間のお金だとすると、さっきのアクセス回線会社が小笠原諸島に100億円、例えばこのケースでいえば払って、それをほかの都市の利用者に散らして負担してもらうわけでしょ?

孫:
池田さんの理屈で行くと、小笠原諸島とか田舎の人とか離島に住んでいる人、子どもたちは当然、1ヶ月に10万円も100万円も通信代を払えないので、結局おいてけぼりになるわけですよね。

池田:
でも例えば、小笠原諸島の場合は通信衛星も放送衛星も通じているわけですよね。

孫:
まあでも、今、そういう小笠原諸島にもユニバーサルサービス義務というものがあって、メタル回線はほぼ1400円で引かれているわけですね。

池田:
はいはい。

孫:
僕が申し上げているのは、今メタルサービスが1400円で引かれているわけですから、そのメタルが大赤字を出しているわけですから、すくなくとも料金体制をどうすべきかということは、僕は別途議論のあるところだと思いますが、今、1400円で赤字を垂れ流しているメタルよりはそれを光に置き換えた方がましですねと、赤字は減りますねと。

池田:
うーん。

孫:
なおかつ、私の思想としては田舎に生まれてしまった、あるいは離島に生まれてしまった子どもが、生まれながらにして光を前提としたクラウドサービス、教育が受けられないとか、医療のクラウドが受けられないとかいうのはあまりに可哀想すぎる。
だから僕は「基本的人権」だということを申し上げているんですね。
やっぱり、そういう切り捨てられる人を出すのはあまりにもしのびない。それを切り捨てずにちゃんとやれるのであればその方がベターで、今現在はメタルはユニバーサルサービス義務ということでNTTはちゃんと議論をされた上で、法律でユニバーサルサービス義務ということで、メタルは1400円で全国、離島も含めて今提供されているわけですから、そのメタルを同じ1400円で光に置き換えると、まず第一段階それをやるべきでしょう。
その次に本当に離島とか田舎の子どもたち、おじいちゃんおばあちゃんを切り捨てるべきかというのは、政治判断としてもう一度、今はメタルのユニバーサルサービス義務というNTT法があるのを、今度はメタルがなくなるわけですから、光のユニバーサルサービス義務になって、その光のユニバーサルサービス義務が1400円一律でいくべきか、それとも田舎は10万円にすべきかというのは、これは政治判断を含めた国民トータルを巻き込んだ議論をもう一度、これは法律ですから、もう一度やるべきですねという風に思いますね。
私は田舎を切り捨てるべきじゃないと思う。

池田:
まあ、おっしゃることはだんだん、わかってきました。

孫:
でも、せめて現在のメタルの赤字、離島こそ赤字をいっぱい出している、

池田:
はい。

孫:
その赤字を早く止めようということですね。

池田:
孫さんが問題を分けておっしゃっていただけたので、僕もわかったんですけど。要するに、ユニバーサルにサービスするということと、今メタルのもの、例えばブロードバンドにするという場合、DSLでブロードバンドにするという可能性もありますよね。
例えば、NTTが出した計算によると光で全国の残りの地域を全部カバーしようとすると3兆円くらいかかるけれども、DSLだと600億円ですむと。そういうNTTが総務省に出した計算がありますよね。

孫:
それは維持費のことを言ってないんですね。設備投資の話をおっしゃっている。

池田:
そうです。

孫:
維持費まで含めたトータルのコストは、メタルの理由でアクセス部門は光とメタルの二重構造になっているがゆえに、年間2600億円もの赤字を出している。だから、DSLの方が安いんじゃなくて、DSLの方がトータルコストでは高いんですよ、光より。なぜならメタルが年間2600億円も赤字を出しているから。追加の設備投資としてのDSLのコストあるいは光のコストではなくて、トータルのコストで考えたときに、結局メタルを維持するのが圧倒的に高いと。それが2600億円の赤字の原因になっている。
そこなんですよ。それをほとんど今までの人々は議論してこなかったんですよ。

池田:
まあそれは要するに光にするとね、それがきれいさっぱりなくなるかどうかっていう、これはまた話がややこしく、

孫:
はぎ取ればなくなる。

池田:
実を言うと維持費の大部分は人件費なんですよね。だからさっきおっしゃった余剰人員の50代の人々、数万人いる人々の人件費が保全費という形で乗っかっちゃってるもんだから、実を言うと、

孫:
でも、その人件費も遊んでいる人件費ではなくて、一応ね、メタルが故障するんです、さっきの話のように、距離が長ければ長いほど、1ヶ所でメタルにプチっとセミが卵を産むとそれでやられるんです。実は、メタルの被膜にセミが夏になると卵を産むんです。そこから蟻の一穴でメタルが腐るんです。
それが実は問題で、距離が長ければ長いほどものすごい問題なんですけど。そういう問題も含めて、メタルをはぎ取るということが維持費を減らすことになって、光を引くための、あるいは光の維持費はメタルより遙かに安くてということがポイントなんです。

夏野:
あの、根本の孫さんのご主張の中に、光に変えることで全体的なコスト、つまり投資と維持費を耐用年数でかけたときに光の方が安いというのが大前提になってらっしゃる。
その大前提を応用すれば離島も、今はどっちみちユニバーサルなんでカバーしなきゃいけないっていうのはたぶん池田さんもアグリー(同意)されるポイントだと。

池田:
結局、それはさっきの話に戻っちゃうんで。それはその合理的な計算に、じゃあ仮にNTTの経営陣が同意して「孫さんのおっしゃる通り」だと。そういう風に納得すれば。今のNTTの経営形態で、例えば、機能分離して、政府が監視して規制するっていうやり方でもある程度は可能だと。

孫:
いや、機能分離してもね、そこで得た利益が競争部門である通信部門に結局使われるわけですよ。今までも、経営陣の人員も、しょっちゅう、ドコモの社長と(NTT)東西の社長と持ち株会社の社長がぐるぐるぐるぐるたらい回ししてるわけですよね。結局利益もそこで競争部門に、

夏野:
それは儲かった場合?

孫:
そう、儲かった場合。

夏野:
ただ、それで今、孫さんは競争力、助かっている部分も、

孫:
そうです。だから、私、ソフトバンクから見れば、本当はそういう形で分離して、通信部門が一気に増益になるというのは、競争上は実はつらい話でもあるんです。そうすると必ずしも、我々は安穏としていられるわけではないです。

夏野:
そうですね。あと、先ほどの私の質問で、今、教育の問題と医療、特に医療に関してはですね、孫さんのプレゼンにあったように、これは何十兆、30兆とか40兆とか、こういう規模のことなんですけど、こういうことに関しても厚生労働省はきわめて、そんなに推進派ではないですね。
で、教育の部分に関しても今の教科書なんかの検定のプロセスなんかは、電子化したらたぶん検定委員がみんないやになっちゃう、なんてことを含めると、あの世界を実現するのは、光の道というのがあればもっと行くというのはわかるんですけれども、もっと大きな障害、つまりメタルが光に置き換わるだけでは何も解決しないところがたくさんある。特にクラウドの話もですね、

孫:
利活用はね。

夏野:
そのへんはまだね、つながってない。

孫:
だから私は、c-Japan計画(クラウドジャパン計画)ということで、5年後に電子カルテをクラウド作りましょうと、5年後までに教育用のクラウドを作りましょう、5年後までに教育用の電子端末を教科書用を作りましょうと。実は電子カルテと電子教科書って同じ端末、同じiPadでできる。実は同じ端末でできて大量生産できる。こういうようなものを5年を目途にやりましょうということで、ネットワーク側もメタルから光に置き換える、クラウド側も5年後を目標に作る、それから端末側も5年後を目標に作るということで、どこかで目標ターゲットラインをきちっと決めて平行してやらなきゃいけない。

夏野:
そうすると総務省だけの管轄にはなりませんので、

孫:
おっしゃる通り。

夏野:
そうすると、原口さんが光の道と言うだけでは足りなくて、なおかつ首相が言って、ほかの省庁の方々も口を揃えて言わないといけないんですが。

孫:
どっかで目標ターゲットラインをきちっと決めて、平行してやらなきゃいけない。

夏野:
そうすると、総務省だけの管轄じゃならないので。

孫:
おっしゃるとおり。

夏野:
そうすると原口さんが光の道と言ってるのだと足りなくて、首相がなおかつ、他の省庁の方も口を揃えて言わなくてはいけないんですが。

孫:
ジャパンビジョンが必要だ。

夏野:
必要ですね。

池田:
そこはね、僕も夏野さんの意見にまったく賛成、孫さんとまったく意見が同じで、ようするに孫さんと僕のプレゼンが、はしなくも一致した。ようするにIT産業が実は日本の成長経済の最大のエンジンなんだよと。

孫:
おっしゃるとおり。推進エンジン。

池田:
で、なんで日本がダメになってきたかと言うと、一番大きな原因は、90年代以降の情報革命と、グローバリゼーションに日本の古い産業構造が対応出来ていない。ITは悪くない。ITは着々と孫さんの活躍もあって、日本のITはしっかりしたインフラができているんだけど、それを活用する方の企業が大昔の製造業中心の非常に古い産業構造が残ったままだから、いつまで経っても、日本経済は離陸しないわけですね。
そういう意味では、日本の産業構造を変えていかなくてはいけないという物凄く実は大きな意味を持っている。

孫:
おっしゃるとおりですね。だから日本の産業構造を変えるためには、僕は3つあると思っていまして、ひとつはインフラそのものが、たとえば5年後を目標にレベルアップしなくてはいけない。50年に一回のパラダイムシフトしなくてはいけない。
利活用としての、クラウドだとかあるいは規制の緩和のところをやっていかなきゃいけない。端末を含めて。3番目が実は一番大切なんですけども、それを使いこなせる人間の……

池田:
あるいは組織のね。

孫:
人間は実は、子どもからやるのが一番早かったりすると。日本が20年間もう停滞しているわけです。GDP横ばいがもう20年続いている。もし20年前に10歳の子どもをIT教育、性根を入れてやってたら、いまちょうど30歳になっていて、まさに働き盛りですよ。ようするにネバートゥーレイト(遅すぎることはない)ですけども、まさにIT義務教育の世界に変えて、電子教育100%にして、そして子どもたちがもう見よう見まねで使っているうちにITとはなんぞや、とういうものが日本語をしゃべるように、普通の日常の言葉をしゃべるように、ITのことが身に自然としみこんでくるということが教育をしていかなきゃいけないということだと思うんですね。

夏野:
いま、孫さんがおっしゃっていた3つのポイントは重要だと思うんですけども、よく見て行くとインフラ、光の道の光回線とりあえず90%まで来ていますよね。

孫:
インフラの近くまで。家までは来ていない。

夏野:
それは加入者が加入しないという問題なんで。次の問題で利活用なんですけども、ここは、明らかに海外に比べて遅れている。もちろん、コンシューマ系のサービスは進んでいるんだけど、特に産業系のサービスと、特に行政系のサービスのIT化は極めて遅れている。ここはそういう意味じゃ50%くらい。で、人間組織で言うと、もう孫さんもお子さんもそうだと思いますけど、30くらいだと使えますよね。教育していないのに話せるんだから、教育すれば、もっと使えこなせると僕もアグリーするんですけど。ただ、これも割と進んできているとすれば、2番目の産業の利活用と、3番目の人間組織の年齢層の高い方、これをどうするかということをくっつけて光の道を話した方がいいんじゃないかという印象を今日受けたんですよ。

孫:
それでね、今日僕は本当に思うのは、iPadってね、いままでパソコンなんていやだっていっていた、89歳のおばあちゃんとかが、iPadなら突然、「あ、これなら私も使えると」ぴゅっぴゅっぴゅっぴゅっ触りまくっているわけですね。

夏野:
うちも2歳の子どもがもうゲームをやっていますよ。

孫:
でしょ?

夏野:
返してくれないです。

孫:
教えてなくても使える。機械のレベルがあがってきている。ソフトのレベルが上がってきている。
そういうものをどんどん広めていかなくてはいけないということだと思うんです。

夏野:
ただ問題はですね、いまのiPadもやはりPC接続が原則になっているので。PCにつないじゃうと。

孫:
AndroidのiPad的なヤツはPCを前提にしてないようなものもこれから出てくるでしょうし、iPadでもスティーブ・ジョブズは当然、いまから何年か先にはPCはもうほとんど人がいらない。Wi-Fiが十分速度を持った、あるいは、光になった、という時代がくれば、直接iPad自身がもうPCを超える能力を持つようになってくる。

夏野:
そうですね。ただ、いまはまだ実現していないです。
もう一つ、やっぱり、かなり最初にやったのは、ちょっと私も手前味噌なんですが携帯だと思うんです。
携帯は、PCの知識がなくても、インターネットにアクセスすることを実現し、いま国内で約1兆円くらいのデジタルコンテンツが携帯でなっているんですが、日本はガラパゴスといわれますが、そこまでいっているんですが。
これ、やっぱり総務省さんのビジネスモデルの介入で、非常に日本からこういう新しい携帯が出て来なくなっちゃいましたね。こういうことを一方でやっているとですね、せっかく、光の道で孫さんがおっしゃっているような、あるいは大臣がおっしゃっているようなことも、利活用と、人に対してのやさしいインターフェイスも国内もなかなか出てこないという、さらに難しい。ここどうしたらいいでしょうかね。

孫:
これは両方だと思うんですよ。結局、例えば5年後を目標にして、規制も、全部どんどん改善していきましょう。利活用のための障害になっているものはなんですかということを、全部因数分解して、諦めるんじゃなくて、事をなすということのために、障害になっていることを全部リストアップして、1個1個全部潰していけばいい。

だから、ちょうど5年後に、光の道が全部メタルを引き剥がす、利活用のための障害になる規制も少なくとも5年以上の議論はいらんだろう。そこを目標に、全部ビシーっとリストアップして、開かれた国民の議論をやっていくと。端末もやると。クラウドもやる。いうふうに、ネバーギブアップ。日本の将来は、そういう気持ちでやれば、絶対にできる、ということを僕は申し上げたいのです。

夏野:
その具体的な解決策は、孫さんを首相にしないとダメ。

一同:
(笑い)

夏野:
やっぱり、ここで議論をしていると、いろんな細かい小笠原どうするとか、いろんなことで意見の違いはあっても、総論ではみんな賛成だと思うんです。ただ問題は、NTTの会社形態のあり方とか、メタルを光にしたところの試算とか、ここは具体的で非常にいいんですけども、問題は利活用のところが具体的になにやるというところが、ちょっと申し訳ないんですが、やりたいことは分かるんですが、どうするのか、っていうところがNTTの会社形態ほどの具体的になっていないところが、やっぱりいまひとつすっきりしないところですね。

孫:
おっしゃるとおり。それはね、これまたネバーギブアップで、いちおう電子教科書の検討の協議会というものを発足します。600人くらいで、議員の先生だとか、教育関連の人だとか、いろんな人が入ってきそうな感じです。それから、医療の方も、先日医療のシンポジウムということで、医療機器のいま世界ナンバーワンのGEメディカルの、GEグループ全体のイメルト会長と、日本の医薬品でナンバーワンの武田薬品の長谷川社長と僕と3人で、パネルディスカッションして、医療関係の人々沢山あつまってやりました。
そういうふうな形で、僕はネバーギブアップ。医療関係もそういうクラウド、医療端末、医療クラウド、電子化というものを議論する検討会みたいなものを発足するべきだと思うし、それには厚労省だなんだって、どんどん巻き込んでいくべきだと思うし、教育関係だって文科省にも、僕は大臣にも会いに行きましたけども、やるべきだと、会いに行きましたけども。そういう議論を、開かれた議論をみんなでやっていくべきだと思うんですね。
どうせできない、というのを諦めるのが一番良くない。

夏野:
あと、できればNTTの分割をかけるのと同じくらいのレベルで、省庁の分割、いまの制度の分割とか、ここも語っていかないと、これ揃わないと思うんですよね。

孫:
だからね、そういう意味で僕は、実は日本の政府に一番必要なのは、例えば、我々は今月25日株主総会でソフトバンクの30年ビジョンというのを発表するんです。次の30年をどうする、というのを発表します。
日本国家として、30年とか50年の日本国家をどう再生するかというビジョンをね、日本政府の方として検討委員会を作るべきだと思うんですね。議長は当然首相がやるべきだと思うんですけども、そういう形で5年先だ、10年先だという短いスパンじゃなくて、天下国家30年くらいのビジョンを堂々と語って、議論し、国民、それこそマニフェストで今年どうする、来年どうするというちまいもんじゃなくて、30年後の日本をどうしたい、いうような、骨の太い長期ビジョンをマニフェストにまさに僕は掲げるべきだ。これこそが、国民に対する約束だ、と思うんですね。

夏野:
そうでもしないと日本は将来がない。人口が減っていく国なのに将来がないと思うんですね。

ちょっといままでの議論をまとめさせていただくと、やはり、この光の道っていう概念が出てきて一番重要なポイントはこれをやることで国民的便益が沢山あがるんですよということ。
この国民的便益があがる一つ手前にお金を使わなくても今のメタルを維持する費用よりも安い費用であたらしい回線が引けるので、そちらの方をまずやったほうがいいんじゃないかというのがスターティングポイントになります。
で、これをやる為に重要な事はかなり短期間でやらないといけない。

孫:
そう。だから5年目標です。

夏野:
5年以内にやっていかなくちゃいけない。変えるのであれば、すぐやらなければいけない。後、問題点を言うとそれを今の経営形態でやるのか、あるいはアクセス会社として分離してするのかというと、そこはその上で競争をどれだけやるのかという事のために、分離が必要で、光に変えるだけだったら、ちょっと交代すればNTTでもいいわけですね。

孫:
で、結局立ち退かないんですよ。公平な競争を担保できる形にならないとメタルを活用して、我々も400万~500万のお客様がADSLにいるわけですね。だから立ち退かなければ二重構造はいつまでも無くならないという。

夏野:
条件があれば立ち退くことは考えられる。NTTがいるんだとしてもアクセス会社という分離された並みの料金設定と公平さを持っていれば立ち退き……

孫:
今までもメタルで公平にやるやるって言って、結局だめだったんだよね。

夏野:
付け加えさせて頂きますと、孫さんはメタルでブロードバンドを成功させた方なので今、光を言ってる事にはものすごく大きな意味があります。

孫:
はい。

夏野:
形態上としては、二つの議論があって両方ともかなった方が良いというのが孫さんのご主張。もう一つが池田さんから出ている、国としてユニバーサルサービスの問題をどうするんだろうと言う事に関して、これは政治マターとして整理すべき話で今回の議論が決まった後に調整していけばいいのでは。ということ。
一番重要なポイントはそこが一体化してないという孫さんのご主張に池田さんは納得されているという事ですね。
それから利活用のところは光の道を整備すると共に。

孫:
そう、平行して。

夏野:
平行して一緒にやらなければいけない。これは平行してできないと光の道単独では意味がない。

孫:
そうです。家電製品は電力線が各家庭にいくという前提で無ければ、テレビメーカーはテレビをつくらないんですね。テレビや冷蔵庫、洗濯機が無ければ、電力線は引く意味もないと。だから、両方なんですね。でも実はどっちが先立ったかと言う歴史を見ると、電力線がほとんどの家庭に行き渡ってから、20年くらい経ってからテレビが普及しだしたんです。ですから両方やらなくちゃいけないんだけど、結局、新しいインフラがくまなく隅々まで行くということを前提としたクラウドの設計がなりたつ。

夏野:
ただ、90%行ってるので、後33%を……

孫:
結局家まで引き込むと言うのが費用の大半なんです。

夏野:
ただそこは利活用の問題だと思うんです。利活用がないと33%をこれ以上あげるのは(むずかしい)、やっぱり若者はみんな引いてますから。

孫:
今、ADSLまで含めると60数%がブロードバンドを使っていて。だからADSLよりも少ない値段でブロードバンドができるなら、70%近い人が光のブロードバンドを即利用するという状況になるんです。最後の30%の人々が光の恩恵をブロードバンドサービスとして使うのかというところは、もう一段の利活用が必要だと言うことではあります。

夏野:
ただ、60数%だとまだ足りないですよね。

孫:
それはもう8割、9割、10割が一番良いです、そうする為には平行して5年を目標に光の道も引く、5年を目標にクラウドも作る、5年を目標に規制緩和もする。そして端末も作る、コンテンツもつくる。

夏野:
結局、ほぼ同時にいかないと駄目。ということを頂きました。

孫:
そうです。結局、これを誰かがしないといけない。

池田:
はい。もう時間もあれなので。僕も孫さんの言うことの問題の整理はわかります。

NTTの経営問題と、いまの全部光化するという問題は論理的には独立ですね。さっきおっしゃったのは事実上リンクしているというのはあるんでしょうけど、僕はね、もう少し現実的なことを申し上げると、僕は1985年にNTTが民営化されるときにNHKのディレクターとして番組を作って、半年、真藤社長(※)に一緒に付き合ったことがあるんですけど、そのころから25年くらい、NTTのいわゆる経営問題、ずっと付き合ってきたんですけど、これはもう25年経って、その間、1回くらい、民営化してたら、持ち株会社に再編するときに1回だけものすごいすったもんだの挙句にやったわけだけど、まあ、はっきり言って、ものすごい泥沼なわけですよね。政治的な問題。この問題に突っ込むと、下手すると5年、10年またこれかかっちゃうと。
さっきおっしゃったように、つまり一応論理的に、別の問題であるとすると、僕はこの問題は、NTTの経営問題というのにはまり込んじゃうと、かえって難しくなってしまう可能性がある。

実を言うと、少し現実的なことを申し上げると、一番簡単なのは、さっき申し上げたオールIP化というのは、NTTもアグリーだからおそらくほとんど誰も問題なくすぐできる話。
それはさっき申し上げた通り光化とはいちおう別の問題。IP化してから、それを光化するという段階を踏むことができますよね。
僕はむしろ、まず、一番大事なのは来月にかなり大きな期限が来る電波の割り当てを是正しなくてはいけない。絶対最優先。
その次に、優先でやるとすればIPにする。それは秋くらいにNTTが出してくる。
その次くらいに、いまおっしゃった光の問題、もう少し中長期でやった方がいいと思うんですけど、どうでしょうか。

真藤恒:しんとうひさし。電電公社最後の総裁、NTT初代社長

孫:
いや、あのね、少なくとも現職の総務大臣が、光の道というものをビジョンとして掲げて、そしてそれをこないだ専門委員会で色々な先生方がすったもんだ議論して、このNTTの経営問題も年内に結論を出すと、5年10年を掛けて結論出すんじゃなくて、年内に結論を出す。しかも基本はやる方向で結論を出す。やる方向というのはいろんな前提が、なるほど計算結果こうですね、ということが納得行ったらという話ですけどね。ですから、5年10年経営のドロドロのものに巻き込まれるということはちょっと違うかもしれない。

池田:
いやーこの間のね……

孫:
いや、それで諦めたらいけないと思うんですよ。諦めたらダメ。
少なくともそれでメタルのコストを排除して、日本国家が再生の道に少しでも、一歩でも近づく可能性があるのならば、精一杯そういう議論を堂々とやるべきだと思うんです。

夏野:
あの、いま池田さんがおっしゃっているというポイントは非常に、こう現実的に今やらなければいけない政策課題をまとめていただいていると思うですね。一方では、大きく進展するためには孫さんがおっしゃっていることもやらなければいけない。
おそらく、大きく前進させるためには、さっきの利活用とかトータルパッケージで言わないといけない。これNTTの経営問題だけにフォーカスしちゃうと、これはまずいって話ですよ。

孫:
おっしゃるとおり。

池田:
外野の人がいっぱいいますからね。

孫:
基本的にはトータルパッケージですけども。

夏野:
トータルパッケージできちんと政府全体としてね。なんかマニフェストからあんまりITの話が載ってなかったり。

孫:
そうそうそう。それはけしからん。

夏野:
けしからんですよね。

池田:
それをむしろ、みんなで声を大にして、ITが成長のエンジンである、しかも、絶対的に足りないのは周波数である、いうことはこれはもう来月の7月の見直しに向けて、もうぜひここで言っていただきたいと思います。

孫:
だから、電波の周波数はもう全員合意しているわけで、当然やらなければいけない。なおかつ、利活用も含めたこともやらなければならない。なおかつ、NTTの経営問題も含めて、メタル問題、光問題については、いませっかく議論が盛り上がっているわけで、しかもね、前提として、年内に結論出す。秋までに基本的な方向性を出して、来年、光の道3法案を通すという方向で、現職大臣言っているわけですから、それを議論もする前に「どうせだめでしょう」と諦めたら、また日本が20年を失うリスクがある。

夏野:
だから、ぜひそこで利活用まで進んで欲しいです。

孫:
もちろん。

池田:
僕は議論することは非常にいいことだと思うし、孫さんが今度問題提起したことですごい盛り上がって、ITというちょっといまの政権ではやや見放されていた問題に、関心が集まったというのはものすごくいいことだと思いますよ。

もう何度でも申し上げるけども、ITが経済成長のエンジンだってことを、ぜひ政治家のみなさんも……

孫:
それでね、結局、議論を諦めると絶対に前に進まないということだと思うんですが、少なくとも私たちは一生懸命考えて、具体的にこうすればできるということを提案したんですね。で、具体的な数字まで出したんです。
もしその数字が間違っているということであるのであれば、NTTさんは反対証明する義務があると思うんです。
それから、反対する委員の先生、議員の先生がいれば、反対証明すべきだと思うんですよ。
ボールは相手のコートにある、と。

夏野:
ポイントはこの話は、できれば総務省の密室でなくて、ちゃんと公開で、見たい人は見れるようにやってほしいということがひとつ大きなポイントですね。

孫:
そうです。ボールは少なくとも僕らは、アバウトでボワーンとできればいいなあという感じで言っているわけではなくて、具体的に数値を挙げて言っているわけです。組織論も具体論を言っているわけです。ですから、それに対して具体的な理にかなう、反対論証があるならば、それを堂々と言うべきであって、なんとはなしにできないとか、どうせ泥沼に入るとか、それは反論になんらならないと言うことだと思うんですね。

夏野:
はい、ここでユーザーさんからの質問をお受けしたいと思うんですけども。会場から? あ、会場です。メディアの方がいらっしゃるのかな。会場からご質問はありますか? はい。マイク。

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