TPPで日本は郵貯・簡保の資産を無差別開放させられる

「田中康夫のにっぽんサイコー! TPPアメリカの真の狙いは!? 10/11/13 ゲスト:小野寺五典(衆院議員) 」より一部抜粋。

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小野寺:結局TPPのことは、実際おそらくその最大の相手国はアメリカになります。そのアメリカの本音ということ、それを実は誰も日本の政治家は聞いていないのです。

田中:今のメディアもですね。

小野寺:そうです。それで私は先月14日になりますが、約1週間アメリカに行っていたのですが、その時にこのUSTR(アメリカ通商代表部)とそれから農務省を回ってまいりまして、一体何がアメリカの真意、そして日本にこれ、TPPに日本が入る場合には何を日本に要求してくるか。それを確認してまいりました。

一つは、驚くことは、アメリカというのは変わった国で、実は議会が大切な国になります。ですからTPPの交渉に入る、あるいはアメリカと貿易交渉をする場合には、90日ルールというのがありまして、90日前にアメリカの政府は議会に出して「今度日本とこういう協議をしますよ」ということを提示します。そしてアメリカの議会は「じゃあ、協議をするためには、当然、協議の相手国は手ぶらじゃ来ないよね」と。「お土産をまずもらってから、それから協議を始めましょう」こういうのがアメリカの通常のスタンスなのです。

入る時の手土産なんですが、向こうから言われたのは「おそらく議会がいろんなことを言ってくるでしょう。」ただ、今想定されるとすれば、まず交渉にあたっては例えば牛肉。これは日本でBSEが発生しまして、輸入に際して月齢を制限、月齢を決めてある程度制限をしています。まずこれの撤廃。これを前提にしてくれと。

田中:だからアメリカの牛肉は全部、無制限で入れさせなさいと。

小野寺:そうです。自由に入れろと。これを実は韓国が決定をした時には、韓国では焼身自殺が出たぐらいの大きな問題です。

田中:非常に多くの若者まで白いお面をかぶって、ローソクを持つというのがありましたね。

小野寺:そうです。実はこれだけではなくて農業分野だけじゃないんです。実は裏に控えているのは、他にも日本の市場開放、特にアメリカが欲しいもの、これがいくつかありまして、農業の次に言われたのは郵政の問題、特に郵便。向こうが多分関心があるのは、郵便貯金・簡易保険。ここの分野でかなり「もっと開放しろ、内外無差別」と。おそらく資本を入れてきたい。多分いろんなことが、今後要求として出てくるんだと思います。

田中:なるほど。郵政の問題というのは、この番組をご覧の方は冷静に認識されているかもしれませんが、多くの方にとっては、「特定郵便局の既得権益を開放することが郵政民営化だったんだ」と。しかしその時にですね、特定郵便局の側に立つということではなくて、そこにある、今のお話にあった簡易保険であったり郵便貯金であったり、その何百兆というお金がどのように運用されていくのか。国内なのか。日本が主体的に海外で投資するのか、海外に牛耳られちゃうのか、ということだったのですが。

今のお話でいうと正にその、郵貯や簡保のところを「開放しなさい。」

小野寺:そうです。内外無差別というのが基本的な考え方です。実はこの萌芽、芽はですね、今年の5月24日、WTO交渉にあるジュネーブというところにあるのですが、そこの日本の大使が呼び出されて、アメリカとEUの方からこれをガンガン言われたんです。

とにかく日本の郵便貯金・簡易保険、これをこれから開放してほしい。そして内外無差別と。

実はこれだけじゃなくて、ちょっとよろしいでしょうか。

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これは政府が正式に用意した資料ということになります。そしてここでまず、どうも私たち農業の話ばっかりイメージがあるのですが、それ以外の非関税障壁というのが、実はこのTPP地域では大きな問題になっています。

そして、今ここのちょっと下の方にありますが、今、24の分野に分かれて各部会がありまして、それぞれ例えば、ここで言いますと市場アクセス、工業製品とかあるいは繊維・衣料。あるいは当然農業もありますが、金融サービス、あるいは、これ多分通信とか放送とか、そういうあらゆる部分に入ってきます。

私がもう一つ心配なのは実は、おそらく人の移動、これは例えば看護師さん介護士さん、将来的には、お医者さん。あるいは日本の公共投資。この問題にも大変強い関心を持っていまして。

何より情けないのは実はこういう情報が、私は直接行って聞いているんですが、日本政府はあくまでもここにありますが伝聞情報という、政府の書類でこの伝聞情報というのが正式に出ている。

田中:ここで今お見せをしているのは、内閣官房が作成して配布をした資料なんですね。

小野寺:ええ。それで伝聞情報という、こういう不確かな情報で実は私たちはこの大変大きなTPPに踏み込もうとしている。

私はこれが多分、この問題の一番の問題、私どもが考えなきゃいけない課題だと思っていますね。

アメリカ側が前から言ってきているのは、日本の公共調達公共事業や、あるいは国が発注するさまざまなノートや鉛筆いろんな備品がありますよね。こういうところを外からもアクセスできるようにして欲しい。そしてポイントは、英語で全て発注書をこれからは出して欲しい。それをホームページでアメリカでも情報を得て参入できるように、入札に応じることができるようにして欲しいという。

多分、日本の市町村役場まで全部英語で公共事業の発注書を出せというのは難しい。有り得ないと思うのですが。

それからもう一つ。田中先生は本当に作家でいらっしゃるんで、日本語をとても大切にされていると思うんですが、今後向こうから来られるというのは、例えば、看護師・介護士の資格試験。これは実は日本語で行うということで私たちは「外国から来てもいいよ」「でも日本語で合格して下さいね」という一つのハードルがあります。

田中:そうですよね。だって日本国民にサービスするんですから。おじいちゃんおばあちゃんも含めて。

小野寺:ところがこれに入ると今後、例えば公共事業と同じように、「資格試験は英語でも受けられるようにして下さい」と。

そうすると、たくさん例えば東南アジアから受験をして、日本に東南アジアの方の看護師さん介護士さんができる可能性もあります。今、働いていらっしゃる日本の看護師さん介護士さん、この方々の賃金とか待遇がむしろますます悪くなるんじゃないか。いろんなところに影響が出てくると心配しています。

田中:それだけじゃなくて、逆にその、日本語がカタコトであるという方が来た場合に、おじいちゃんおばあちゃんのみならず、小さな子供も病院で、微妙にここが痛いということを英語でしゃべんなきゃいけなくなるかもわからない。

公共事業がいい悪いなのではなくて、今言った公共調達、全部市町村が英語で書類を作る。逆に言えばそれはコストがかかるのに、それがオープンになることだという意味にもなる。

小野寺:そうですよね。やっぱりアメリカの本音は、アジアの成長に自分も一枚かみたい。そしてそれはTPPという形で、自分の意見がすごく強く反映して、アメリカ主体のスタンダードを作りたいんだと思うのです。

そうすると、例えば、例は正しいかどうかわかりませんが携帯電話。日本の優秀な携帯電話が、基準が日本ではない海外基準になってしまったので、日本の携帯が売れない。海外ではほとんど。

こういう中、日本に不利な基準がアメリカ主体で作られてしまい、結果的に例えば私たちの、アメリカが一番初めに郵貯簡保の話をしてきましたから、その大きな巨大なお金、私たち国民の資産。これが開放され、アメリカがもしこれを狙っているとすれば、あるいは日本のさまざまな今は非関税障壁で守っているものを、実は取りに来る。

表面はなんか農業の話に見えますが、実はその根底には、日本の大きな知的財産なのかあるいは金融資産なのか、いろんなものが多分これからあると思います。

田中:あともう一つ、私はよく取材の方々、新聞記者・テレビ局の人に言っているのは、「電波もそうですよ」と。電波というのは携帯電話だけじゃないんで、放送というところにもルパート・マードック氏のような人が5人、10人、それがいい悪いじゃなくて「あなた方、この農業とか郵政とか既得権益者だと言ったけど、あなた方最も守られた人たちも…。」

小野寺:そうですね。実はイギリスが、同じようなアメリカとの交渉の中で、放送の電波帯がありますよね、例えば何チャンネルは何々局、何チャンネルは何々局とあると思うのですが、その電波帯を毎年入札にしたんですよ。そしたらその入札の金額で約2兆円。税収がその入札金額で上がった。ところがテレビ局は毎年同じチャンネルを取れるかどうか分からない。取れなかったらテレビ局は終わってしまうじゃないですか。

田中:そうですね。

小野寺:ということで大変な競り合いになって、これが逆に番組の質を落としてしまったと。そういうこともあって見直しているわけなんです。

ですから私は自由化の最終的なところは、もしかしたらおっしゃるようにメディアまで入って来るのかなと。これは心配ですよね。

田中:ですから逆に「これは我々に関係ない。安くオレンジが食えるようになる、牛肉が食えるようになる」などという話ではない、ということですね。