【全文書き起こし】バイアウトからの逆算、誰があなたの会社を買うか?⑤

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【全文書き起こし】バイアウトからの逆算、誰があなたの会社を買うか?④
の続きです。

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合田氏:
少し会社の話に入っていきたいと思います。まず、AppleとGoogleとMicrosoftの比較だけ簡単にしたいんですけど、これは各社の株価を見ていますけれど、GoogleとMicrosoftというのは、こんな感じて2、3年ぐらい少し停滞していると。Appleさんは時価総額最高とあるのでガーッと伸びて、今ちょっと非常に下がっていると。でも、それぞれの会社の業績を見ると、そんなに悪くなくて、一番上のこのトレンドだけ見てほしいんですけど、左にいくほどアメリカ型なので最近なのですが、全部売上としては伸びているし、営業収益も伸びているんですよね。だけど、残念ながら株価にはこれだけ差がついているということは、Appleさんはもちろんこのままどんどん新しいものを生んでいくという難しい使命があるんですけど、GoogleさんとMicrosoftさんは「何か新しいことをやってくれ」と株主が期待をしているわけですよね。その新しいものを自社でやれればいいけど、やっぱり何か他のところから持ってきたいなという風には考えるかなと思います。

簡単に言うと、業績としてはそんなに3社悪くないんだけども、新しいものをどんどん出してくるAppleに期待が高くて、こちらに関しては「もうちょっと頑張ってくれよ」という形が株に出てきているイメージですよね。さっきの方の話で戻ると、GoogleさんとMicrosoftさんは、「もっと頑張ってくれ」ということなので、Googleさんは出来ればアドだったら1つは、今はPCのアドですごく寡占していますけど、モバイルの方にもっと行きたいだろうし、広告以外の部分で売上を上げたいと思っていると思うんです。そういう部分というのは、彼らにとって非常に興味がある。Microsoftさんも、ソフトウエアとしては売っているんですけれども、これは当然ながら多少頭打ちがくるので、もう少しオンライン系のWebサービスであるとか、そういったものをどんどんやっていきたいという話になると思います。Appleさんは、当然ながらさらにまた新しくなっています。

ちょっとGoogleさんのIR資料をサラッと見てみます。英語で恐縮なんですけど、パーッと見てみると「FORM 10-Q」というやつが見つかると思うんです。これがIRレポートなので、IR(インベスター・リレーションズ)というところにいくと、大体載っていますので、こういうのをちょっと引っ張ってみてくれれば、いろいろ書いてありますので探してみてもらいたいと思います。どんなことが書いてあるかと言いますと…IRの資料って結構読まれた人って沢山いますか?皆さんは大体読んでいますか?そうでもない?そうでもないと思って解説をすると、1つはコンペティション。これ、Googleさんのコンペティションなので競争…要するに、何で困っているか、誰と競争しているかって話が書いてあるんですが、ここにいろいろ書いてあって、例えば、バーティカルサーチエンジン。Amazonみたいに勝手に中でサーチされちゃうものとか、eBayなんかというのは非常にありがたくないと。ソーシャルネットワーク、Twitterなんかも、Facebookなんかクローズしているのでありがたくないといろいろ書いてあるわけですね。

何が言いたいかというと、この人たちって何を避けたいかというと、サーチ広告がほとんどなので、とにかく他にプラットフォームをつくられたらひたすら困るということなんです。他にプラットフォームがあれば、逆にそれは出来るだけ自分のものにしたいというモチベーションに変わるかなと思います。Googleさんの方で、彼らが今から注目している分野というのはCorporation Highlightという部分とか、もう1つ、こういうことがあったらうちの会社はつらいというリスクファクターという部分があるので、この3つの部分ぐらい読んでいただけると、その会社が何を考えているかが非常にザックリかもしれないけど分かると思います。Corporation Highlightで分かるのは、この人たちが頑張っているのは、とにかくモバイル系でサーチするときに他の方法をやられちゃったら嫌なので、モバイルでもなんとか頑張って広告を取りたいと。そのためにはリスティングだけじゃなくて視覚、音声、場所のサーチもガンガンやっているぜと。ここら辺でいいサービスを持っていればいいですよね。あとGoogle Localということで、GROUPONが非常に近いんですけど、様々な地域情報の提供ということなので、地域情報ってローカライズが必要ですよね。50カ国ぐらいの言葉に対応していると書いてあるんですが、だからある程度の国でローカルな情報を持っていると、結構この人たちは嬉しいだろうと思います。あともう1つ、ディスプレイ広告なんかも頑張っているんですが、多分動画向けの広告ってそんなにまだ上手くいっていないと思うんですよね。動画向けの広告のテクノロジーがあったら、結構好むだろうなと思います。

もう1つはエンタープライズ系、ここまで広告ですよね、ここからコンテンツになると思うんですが、やっぱりここを伸ばしたいと思うので、エンタープライズ向けに何か面白いサービスがあると、この人たちは非常に喜ぶだろうなと思います。逆に、やってほしくない技術っていうのがこれですよね。その他に何がしらか検索エンジン、Facebookも別の検索エンジンを持っていますけど、そんなのをやられるとか、あとはGoogleさんがアドを出すときにブロックされると非常にありがたくないと。で、今って自分の見たい広告だけに変えるような技術ってある程度でてきていると思うので、そういう技術っていうのは、彼らが自分たちで使うという意味でも、あるいは使われたくないという意味でも、非常に彼らとしては興味のある分野だろうと思います。

あと、これはGoogleさんのヘッドクオーターのですね、ティーザーのところから、ちょっと字弱いんですが、取ってあるんですが、彼らとして今力を入れてるのはプライバシー系ですね。プライバシー系は非常に興味があるというか、頑張って開発人員を増やしているということと、あとはユーザーエクスペリエンス系ですね。インターフェース、やっぱりアプリから若干弱い部分があるので、これに関しては非常に力を入れて開発をしてますので、逆にそういうサービスがあるから、彼らとしては非常に興味があるだろうと思います。

次はちょっとAppleさんの話をさらっとして。Appleさんの話なんですけど、AppleさんはとにかくGoogleとは全然違うのは、対面販売がすごく重要だと。あと素敵な経験をなんとかさせたいということなので。あと教育がんばりますっていうのがあるんですね。昔から「iTunes U」っていうのがありますしね。だからたぶんこの人たちとしては、ハードウェアをとにかく値下げさせる圧力が非常に辛いと。これを値下げさせたくないし、できればテレビからモバイルまで全部自分たちのプラットフォームで囲っちゃいたいし。ありがたくないのがやっぱりFreeのPeer to Peerのサービスなのか、Spotifyとか、まあ分かんないですけど、あまりありがたくないと思うので、そういうサービスは嫌だねー、ということですね。

なので、たぶんこの会社が好むのはUI系の話と、あと教育系iTunes系のサービスは好むだろうということと、特にありがたくはないんでしょうが、Peer to Peer系の音楽では達成できないようなユーザーエクスペリエンスをもし提供できるサービスがあれば、彼ら自身にとっては非常に興味がある分野であるだろうなと思います。

Microsoftもそんな感じで似たような話なので、ここはちょっと飛ばします。

ちょっとそれ以外の会社をいくつか紹介して、日本の会社に移りたいと思うんですが、Visaのことは大体皆さんご存知だと思うんですけど、この会社かなり有用で、accumulated incomeっていうのはたぶん利益余剰金だと思うんですけど。8688million USドルで、およそ1.4mil USドルが1億円と、100円と換算すると、8000億(円)くらい自分のおなかにお金を持っているわけですね。非常に良い会社。なんでVisaの話なんかしたかっていうと、課金ってやっぱり肝なので、Visaも頑張ってこうやってるんですよね。ディベロッパー、マーチャント、コンシューマーといろんなペイメントのサービスに対して2010年は自分たちでここだけソフトを開発したと。だけど、2011年、これ全部IR資料見ればこういうの書いてありますので、ぜひ見て頂きたいと思って見せているんですが…2社買って、これはペイメントの、日本でいうJ-Paymentみたいなサービスですね。Playspanっていうのは、バーチャル通貨あたりの課金ができるサービスなんですけど、ここら辺を買って、かなり垂直統合で開発者からコンシューマーまでの部分っていうのを統合していくと。Squareっていうのはアメリカにあるクレジットカードのモバイルで決済できるサービス、そういうところとも、これはコラボですけれども、コラボするという形で、だんだん課金に関しての部分っていうのを自分では垂直統合していくっていう形なので、ここの中に入っているものであれば、「興味がある」興味を持って、しかもお金も非常に持っているであろうという感じです。

次にアメリカの会社を離れて、Baiduさんの話をしたいんですが、Baiduさんっていうのは日本にもだいぶ進出してきましたけど、この会社は売り上げとしては毎年伸びてますし、profitとしても伸びてはいると。だから比較的調子は良い会社ですね。負債がこれだけに関して、比較的、まあ2倍くらい自分の現金として持ってるので、お金も出せなくないと。というような感じで、大体2000億くらい持ってますよね。キャッシュを持ってらっしゃるということなんですが。やっぱり日本に関しては撤退するという意味では全くないですけれども、日本に関しては難しいという話をしていて、海外展開はやはりなかなか難しいですね、中国企業。なんでかっていうと、たぶん中国に関しては、これちょっと見にくいとは思うんですが、Baiduさんと、テンセントとかシナとかそこらへんをずらっと並べてそれぞれのサービスをリスト化してあるものなんですけど。何が言いたいかっていうと、中国の中って物凄いコンペティションにさらされていて、たぶんこっちに相当開発を割いていると。日本に出てくること自体は悪いことじゃないんですけど、飽和もしているし、なかなか海外展開まで手が回らないっていうのが現実なのかな。となると、去年おととしくらいまでは結構頑張って、投資とかを海外にもしてたんですが、今は中国の中でいかに勝つってとこに一回集中して、勝った後に出てくるっていう可能性がこの会社としては大きいかなと思います。

次、NAVERさんですね。これもひとつお金を持ってらっしゃる会社で、さっき言いましたが大体1000億くらい持っていて、大体これが負債、銀行から借りているのが793623に対して、その大体2倍くらい自分のお金を持っているので、非常にキャッシュをしっかり持ってらっしゃる会社なので、何がしら買うっていうのは非常に良いですよね。彼らの重点テーマっていうのがいくつかあって、サーチ広告、たぶんここら辺がほどんど売上を占めてるんですけど、それ以外にモバイルのサーチとかモバイルのゲーム、あと日本市場に関しては結構興味を持って投資をかけてくるようなことが書いてありますので。特にLineみたいなサービスっていうのは、決して悪いわけじゃないんですが、そんなにマネタイズがガンガンできている感じではないんですが、単独としては、仮にそこまでバリューが出なくても、この人たちは日本市場であるとかそれ以外の市場で、誘導することにはたぶんすごく興味があると思うんですよね。なので、後で簡単にGREEさんとDeNAさんの話もしますけど、単独のサービスとしてはそこまでマネタイズできなくても、ユーザーをある程度持っていて、導火線になるようなサービスであれば、ゲーム系の会社っていうのは非常に好きですよね、そういうのが。なので、買収の対象になるな、ということです。

docomoさんの話はちょっと飛ばして、Softbankさん、これもまあ日本の話なので飛ばして、最後GREEさんとDeNAさんの話だけして、ちょっと長くなりましたが終わりにしたいなと思います。

まずGREEさんの状況なんですけども、GREEさんはさっき言った自己資本比率っていうのが、簡単に言うと自分のお金と負債の比率っていうのが6割は自分のお金で、4割が負債って感じで、なかなかお金を非常に持ってらっしゃる感じですね。自己資本が300~400億くらいですか、だからNHNほどには余力はないかもしれませんので、たとえば1000億持ってるNHNに比べれば、バイアウトの価格としてはあまり高いものは買えないんですけど、お金は持ってらっしゃる。株価としてもぐぐーっと伸びてるので、もう1個成長したいと思ってらっしゃるはずなんですね。いろいろ課金も増えてますし、広告メディアも増えてますという感じですね。

この会社としては、何が出てくるかって言いますと、グローバルにどんどん展開したいという話をしてますので、基本的に海外で展開する時、NHNもそうですけど、何がしらかユーザー持ってって導火線になるようなサービス。例えば、これは私の勝手な予想ですけど、LINEみたいなサービスっていうのはもちろん買うことは無理ですけれども、それ自体がマネタイズできてなくても、良い感じでGREEさんのソーシャルゲームに持って来れるのであれば、かつこの人たちが出ていってる市場ですね。具体的には中国、韓国、あとは難しいかもしれないですけど北米。ここらへんで何がしか導火線になるようなサービスを持っているのであれば、マネタイズできてなくても結構この会社は興味はあるのかなーという風に思われます。これがGREEさんの方ですね。

最後にDeNAさんの例なんですが、まあDeNAさんも、売上としては、こっち側にいくほど最近なんですが、伸びてますと。営業利益も伸びてますと。で、自己資本比率も60%自分のお金で、40%が借りてるお金なんで、比較的良いと。ただ、株価としては若干こう寝てるかなーという感じですね。多様な事業を展開してるんですけど、ソーシャルメディア事業とかEC事業とか。ただ売上としては比率で見るとやっぱりソーシャルメディアなんだと、この会社結論から言うと、課金でほとんど儲けてる会社ですよ。だから、課金がおかしくなっちゃうと、ちょっとヤバいわけです。あるいは他に売上を立てるしかないので。この会社も海外展開を積極的にしてますけど、いかに海外でユーザーがいて導火線になるサービスっていうのを探すか。日本はもう十二分に成功してるので良いんですが。例えば韓国とかアメリカ、その他東南アジアに出ていく時は、まだまだ導火線が弱い可能性があるので、そういうサービスには非常にたぶん興味を持ってくるだろうなと思います。なので、そこら辺の導火線がないのかなと思われるのが、いろんな人と提携をして、とにかくユーザーベースをひたすら抱えて自分は導火線を持ってきて、プラットフォームに持ってくる戦略をとってるので、そこの部分に対して何がしらか提供できるものがあれば、大体良いかなというところです。

ちょっと後半駆け足になりましたが、だいだい大雑把な話の部分は今くらいで終わりにしたいと思いますけど、何かもしご質問があれば…どんなことでも結構です。

(質問者:聞き取り不可)

合田氏:
私の個人としての考えを伝えますと、それは基本的にしにくくはなるけど、可能性としてはあると。アメリカで会社を作った会社に、日本のVCさんが投資をするという例は結構あるんですね。ただし、日本の会社に対してアメリカのVCが投資をするっていうのは、よっぽどそのサービスが良くない限りはないと思うんですけど。悪い言い方をすれば、若干アメリカの方が格上ですので。向こう側が日本が投資したものに対して会ってくれる可能性はあると思います。ただし、会社がアメリカにないと、ちょっと不利ではあると思います。あと他に何かありますか?

なければ、そろそろお時間も来ましたので。じゃあ最後、バイアウト自体はみなさん頑張って大金をつかんで頂ければなと思います。今日は説明が途中前後して分かりにくい部分もあったかと思いますが、分かって頂きたかったのは、IR資料とかを見ればある程度その戦略が分かるのと、ある程度大きい市場に入っていかないと、結果的にバイアウトが非常に難しいので、調達しない分には全然良いと思うんですけど、調達しちゃうとちょっと難しくなるから、そこは考えなきゃいけないなということです。

長くなりましたが、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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