ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」 Part1

この新30年ビジョンをつくるために、1年間かけて、ソフトバンクグループの全社員、2万人が真剣に議論して、全員が自分の意見を出しました。
そして多くのツイッターのユーザーからも、いろんな叡智をいただきました。

それを今回まとめて、私が代表して新30年ビジョンというかたちで話をさせていただきます。

[ソフトバンク新30年ビジョン]

この30年ビジョン。
どんな会社にしたいか。
どういう想いで事業を行っていきたいのか。
それが30年ビジョンの中にはいっております。

3つのパートにわかれています。
1つ目のパートは我々の理念であります。
何のために、どんなことのために、事業を行っているのか。
この理念が1番目です。

2番目がビジョンです。
この30年先、どうのような人々のライフスタイルになるのか。それに対して我々はどういうことができるのか。そのビジョン。

3つめのパートが、戦略。
我々がなしたいことをどのようにして行っていくのか、という戦略です。

その3つのパートに分かれて今日は話をさせていただきます。

今までの僕の人生の中で、先ほどもちょっと申し上げましたが、おそらく今日が一番大切なスピーチになると思うし、また30年に1度の大ぼら、というのは毎回言えるものではありません。

私の現役時代の最後の大ぼら、とご理解いただきたいと思います。
30年に1回の大ぼらだ。
ですからちょっと時間を90分を越えるかもしれませんが、ぜひ我慢をしてきいていただきたいと思います。

[理念]

それではさっそく第1のパート、理念でございます。

我々の理念、何のために会社を経営するのか。
何を成したいのか。
一言で我々が成したい事をあらわせ、ということであれば、この一行であります。

[情報革命で人々を幸せに]

「情報革命で人々を幸せにしたい」

さきほどのビデオにもありましたように、全社員からこの30年何をどうしていきたいのかというプレゼンをしてもらいましたけども、本当に私がうれしかったのが、全てのプレゼンの中に、想いとして、人々の幸せに貢献したい、このことが中心に据えられている。

もちろん上場会社ですし、一般の企業でございますので利益もあげなきゃいけない、新しい商品も出さないといけない、料金競争もしなきゃいけない、というのは現実ではあります。
しかしその現実のためだけに人生をすごしたのでは、なんのための人生だ、ということだと思います。

私たちはたったひとつ、何をなしたいのか。
情報革命で人々を幸せにしたい。その1点であります。

[喜びと悲しみ]

そこで私はツイッターで多くの皆さんに意見をきいてみました。

幸せってなんだろう?
悲しみってなんだろう?

[悲しみを和らげたい]

まず皆さんにとって悲しみってなんでしょうか? ということをツイッターで聞いてみました。

[人生で最も悲しい事は何だろう?]

人生で最も悲しいことはなんでしょうか。
一言ツイッターでつぶやいた。
たった1日2日で2500を越える意見が寄せられました。

ツイッターの力というのは人類のさまざまな叡智を集める非常に適したものだと思います。

[悲しみ(円グラフ)]

その声は、実質1日であつまった声は、2500あつまったわけですけども、21%の人々が身近な人の死だ、という答えでした。
自分の家族、自分の愛する人、そういう人の死が自分にとって一番悲しいことだ、という答えです。
14%の人が孤独だと。
11%の人が絶望だと答えました。

もちろんそれぞれの表現の仕方の違いはありますが、こういう答えでした。

何にも感じなくなること、裏切りだとか、そのほかにもいっぱいありました。

[身近な人の死]

その一番多くの人が答えた身近な人の死ですが、これについてちょっと調べてみました。

[世界の死亡要因ランキング]

世界の死亡要因のランキング。2008年度で心臓病が一番多く930万人。2番目がガン。3番目が脳卒中。
これはずっと以前は、100年前200年前はもっと違う原因で人々は死んでいました。

私たちは情報革命の力で、この一番多くの人が言っている「身近な人の死」を、すこしでも長らえることができないか、生命を長らえることができないか。
そういうことを少しでも少なくなればいいなあ、と思います。

[孤独]

2番目は孤独ということであります。

[1人暮らし高齢者数]

一人暮らしの高齢者の方々が、今現在470万人おりますけども、いまから30年後には倍増の800万人になるんではないかと予想されております。

独居老人ですと、死んでいくときも誰にも知られないままひっそりと死んでしまうということも、これから増えてくるんではないか。

孤独死が東京都内だけで年間5000人。
全国だと5万人もの人々がこういう状況である。

そういうように死というものは大変悲しいもので、少しでも減らせるよう願っている。

[絶望] [自殺者数推移]

絶望というものをどうやったら量ったらいいのか。量ることはむずかしいですが、たとえば絶望して自殺した。

自殺は日本は世界の中でも最も多い国だといわれている。

自殺の一番大きな、約50%の理由は健康問題。
25%は経済問題。
こういうようなことが少しでも減らせばいいと心から願っている。

ということで、悲しみというのは先ほど申し上げたとおり、死だとか孤独だとか絶望だとかいろんなものがあります。

結局、死も別の言い方をすると、孤独だ。

[孤独、悲しみ]

身近な人、愛する人が死んでいなくなって自分が孤独感に責められる。絶望もある意味孤独と表現できるかもしれない。

そういう意味では、人生最大の悲しみは、孤独かもしれません。

[人間の最大の悲しみは、孤独。]

私たちはその悲しみを少しでも減らしたい。
その逆、喜びを大きくしたい。

[喜びを大きくしたい]

一人でも多くの人に満面の笑みを浮かべてほしい。
我々の願いである。

[人生で最も幸せを感じる事ってどんな事なんだろう?]

人生で最も幸せを感じることってなんだろう?
同じようにツイッターで問いかけてみました。
一瞬で多くの答えがあつまった。
分析してみるとこういうことです。

[幸せ=感動]

日々の生活で生きていること。生きているだけで幸せだ。

ちょっとした木漏れ日のなかで小鳥のさえずりを聞いた。
病気をしたあとで治った。生きていることを実感するだけで幸せだ。
自己実現、達成感。
愛すること愛されること。
人々によっていろんな表現がありますが、喜びは人それぞれ、千差万別あると感じた次第である。

[5つの感動]

それらをくくって言うとすれば、見る感動、学ぶ感動、遊ぶ感動、出会う感動、見る感動、(家族、恋人と)愛し合う感動。
私たちは一人でも多くの人に大きな感動を。

[情報革命で人々を幸せに]

情報革命で人々を幸せに。
冒頭から申し上げておりますが、このことが唯一つ、我々が成したい事である。

すぐれた製品をつくる。
料金競争をしてお客さんを1人でもたくさん増やす。
そういうことが最大の目標ではありません。

それらを提供することによって人々が幸せを感じてくれる。
悲しみを減らす。
感動の輪を広げていきたい、幸せの輪を広げていきたい。

[これまでの30年、次の30年。]

そこでこれまでの30年間、ソフトバンクを創業してちょうど今年で30周年になるわけですが、これまでの30年間をちょっと振り返ってみたいと思います。

こちらの映像をみてください。

(ソフトバンク30年間のあゆみのビデオ)

いま見ていただいたのが、我々の30年間のあゆみでございます。

振り返って見ると、いろんな波だらけだったなあ、と。
一歩まちがえると、崖っぷちの向こう側に落ちてしまう、そういう苦難の連続でありました。
なんとかここまで無事に存続できたというだけでも奇跡かもしれない。

でも我々はこれからもまだまだがんばっていかなければなりません。

こちらのグラフを見てください。

[連結営業利益]

ADSL、ブロードバンドを開始して、3000億円もの累積赤字を一瞬で出してしまった。

あのときは株主総会で多くの皆さんから
「理屈はいいから株価をあげろ!」
「主人が残してくれた大切な遺産をソフトバンクに全て投じました。信じているからなんとしてもがんばってください」
涙が出ました。

死ぬ気でがんばらんといかん。歯を食いしばってがんばるぞ! という思いで、どん底からはいあがって、なんとかがんばってまいりました。

[2009年度連結営業利益ランキング]

昨年度の業績として赤字のどん底からはいあがって、営業利益で日本で3位というところまで来ました。
これもいつまで続くか分からない。
まだ先は激しい戦いが続いている。

ほんの数年前までは赤字であった。
ほんの短期間の一息ついたという状況かもしれない。

ですからそういうときこそ、もう一度原点に帰って、我々は何を成したかったのか、これから次の30年間で何を成したいのかについて、もう一度より明確なビジョン、戦略を確認しあおう。

今回の30年ビジョンの発表会につながったわけです。

[デジタル情報革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進し]

いままで我々がかかげていたビジョン。
デジタル情報革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進し、我々の企業価値、皆様がお持ちの株式の価値を最大化、それを実現しながら人類と社会に貢献する。

この思いは、創業第一日目から今日まで一切変わっていない。

これから先どうするのか。原点にかえってみんなで議論して、私自身も参加してみました。

まったくかわらない。
一行であらわすと、情報革命で人々を幸せにしたい、ということであります。

[ビジョン]

じゃあ、どういう形で事を成すということを実現するのか。
これから先の人々のライフスタイル、これから先のテクノロジーの進化はどうなるんだろう。
もう一度先を、遠くをみつめてみよう。

[300年成長のDNA]

今日みなさんには30年ビジョンを発表する場です、ということを申し上げてお集まりいただきました。

実は30年ビジョンですが、30年では足りない。
どうせこれが最後の大ぼらですから、ついでに300年くらい言っておこう。
ということで300年のビジョンをちょっと言います。

[今日お話しするのは300年単位で語るビジョン]

創業者の私にとって、我々ソフトバンクグループのDNAを設計しないといけない、というのが私の最大の役割だと思っております。

人間の命は50年100年でなくなりますが、企業の命は人間と人間が集まりあって集団で存続しますから、僕がいなくなったあとも我々ソフトバンクグループは存続していかないといけない。

私の一番大切な役割は、我々グループの将来進み行く方向性、グループの組織の考え方、哲学、そういうもののDNAを設計するということだと思います。

30年でどこまでやれるのかということだけでなく、仮に30年で成し遂げることができなくても、40年後50年後、10年遅れようと20年遅れようが、その方向性にむかって生きていく、その方向性にむかってたゆまぬ努力をするのが一番大切なんではないか。

5ヵ年計画で1年早く達成した、1年遅く達成した、そういう次元で議論をしようというのではありません。

方向性を定める。
そういう意味では30年というのは単なる一時期でしかない。
今まで30年たちました。次の30年というのは第二ステップ。
300年の中での第二ステップだという位置づけ。

[迷ったときほど遠くを見よ]

300年とか30年とかいうと、いったい30年後のテクノロジーはどこまで進んでいるんだろう?
人々のライフスタイルはどう変わっているんだろう?
想像すらなかなかわからない。
わかりにくい。

そういうわからないときこそ、なおさら遠くを見るべきだ。
もっと遠くを見ると、景色が鮮明に見えてくる。

近くを見れば見るほど船酔いする。あらがみえてくる。
遠くまで見てみると、実はそんなものは誤差だとわかる。

[そして未来を見極めるには過去から学ばなければならない]

そして遠い将来を予言する、あるいは予見するためには、過去をみてみるべきだ。
ものごとは過去があって現在があって未来がある。

[300年前の世界]

だから300年先をみるためには、300年前の人々がどうたったのか、あらためて調べてみました。

たくさん調べたけどいくつか代表的なものだけ。

[300年前の平均寿命]

300年前の一般の庶民の平均寿命はたった33年。
貴族のようなお金持ちですら39歳しかなかった。
人々は案外早く死んだんだ。

[工業革命の時代]

人々はどういうライフスタイルをおくったか。

300年前くらいからちょうど産業革命、工業革命がはじまった。
蒸気機関がつくられた。製鉄法ができ、紡績だとか蒸気船、鉄道が開通、まさに文明開化。
300年前ぐらいから人間が自らの手で穀物、農作物を作るだけでなく、自らの筋肉の力を延長させる。
圧倒的な動力。
機械が生まれ、動力が生まれ、人々のライフスタイルは圧倒的にかわりました。

[機械を恐れる人間たちの暴動]

その結果、機械はすごいぞということで、逆に今度は、それまで人間がやってきた仕事、穴を掘って鉄を見つけるとか、重たいものを運ぶ、遠くまで移動する、そのためにカゴだとか人力車だとかあったわけですが、人間がやってきた仕事を機械が置き換えて、人間の職を奪う。
機械は人間にとって邪魔なもの、こわいものだ。機械をこわそう!
ラッダイト運動が19世紀初頭におきるという事件がおきる。

日本でも岡蒸気といって機関車が最初通り始めたときに大変な反対運動がおきて。
怪物のような魔物なようなものが来るとわしらの生活はどうなるんだ、と大きな反対運動、反動というものもありました。

今日現在の我々の生活をみると、機械と人間が共存し、機械のすぐれた能力をつかいこなす。
人間が過酷な重労働、まるで奴隷のように扱われていた重労働、危険な作業からどんどん解放される。

人間がもっと人間らしく、寿命がのびている。
文明の利器、機械によって水道が掘られ、水道ができた結果衛生がよくなって、人々が死ぬ原因も減ってきた。
平均寿命が今日延びてきたのも産業革命のたまものではないか。

ざっと300年間の大きなパラダイムシフト。
そして現在にいたっている。

[300年後の世界]

そういう過去をみて、次の300年間でテクノロジーはどう進化するのか。人々のライフスタイフはどうなっていくのか。
考えてみました。

[情報ビッグバン]

300年前に機械による人類の生き方がかわった。パラダイムシフトがおきた。機械によるビッグバンがあった。

これから300年間で、本当の意味での情報のビッグバンが起きるのではないか。
今はまだほんのその入口である。

[100年間で3500兆倍]

過去100年ぐらいを遡ってみます。
情報革命の入口の100年間。

コンピュータが計算をする、どのくらい計算の能力が増えたかを調べてみた。

同じ1000ドル、約10万円で買える機械の能力で、いったい何回の計算できるかを調べてみた。
100年前はアナログ機器の計算機は大変大きな高いもの。
1秒あたりに0.000006回しか計算できない、というシロモノ。

そんなに遅くて高いものにお金を払って何をしたいの?
それでも重要な役割を果たしていた。

そこから数えて100年間で3500兆倍コストパフォーマンス、機械による計算能力が3500兆倍になった。

コンピューターの基礎的な理論を確立した2名。
ノイマン、チューリング。この二人の偉大な理論と発明によって、コンピュータというものがトランジスタ化され、現在のコンピュータに至る。

基本的な原理は二進法。
電流が流れる、流れない。トランジスタがくっつく、はなれる。
それまでは電球のような真空管、光る・光らないの二進法。
二進法でコンピュータは計算している。現在は真空管のかわりにトランジスタが使われる。

実は人間の脳細胞もまったく同じメカニズム。

[大脳脳細胞数300億]

脳細胞にはシナプスというものがある。
シナプスがくっつく・はなれるの二進法でものを計算したり考えたりしている。
コンピュータとまったく同じ構造。
生理学的、生物学的にはもちろん違いますよ。

行うメカニズムはコンピュータも人間の脳細胞も二進法でできている。

人間の大脳には約300億個のシナプスという脳細胞がある。
300億個の二進法、くっついた・はなれたを脳細胞が行っている。

[2018年脳を超える]

大脳が物を考えているわけですから、大脳の脳細胞の数300億個を、コンピュータのワンチップの中に入ってるトランジスタの数が、人間の大脳の数をいつか越えるわけです。いつ越えるんだろうと私が20年前に計算してみました。予測してみました。

計算した結果、2018年です。

そして直近になって2年ぐらい前にもう一度検算してみましたら、まったく同じ、2018年でした。

もし仮に2、3年はやいとかおそいとかあっても、僕に言わせてもらえば誤差です。
300年という年月の単位でいえば誤差だ。

ようは人間の脳細胞にある300億個をいつコンピュータのチップの中のトランジスタの数が越えるのか。
50年先ではない。
100年先ではない。
あと8年でやってくる。

あと8年前後で、なんと機能的には人間の脳細胞を越える能力をワンチップのコンピュータが持つに至る。

仮に2、3年ずれていたとしても誤差だと申し上げた。
なぜ誤差だと申し上げるか。300年分推論してみました。

[1垓=1兆×1億]

いまから100年後に、いったい何倍になるのか。1垓(ガイ)倍になる。
垓(ガイ)という単位あんまりきいたことないでしょう。

1兆の次ってなんだっけ? 1京(ケイ)か。
なかなか聞かない単位ですから。

この中で1垓という数の単位を知っていた方、手をあげてください。
1人2人3人…。
ほとんどの人が考えもしない。そのくらい大きな数。

1mを1垓倍すると宇宙のハテを越えるという計算。
それくらい大きい。

300年後ではなく100年後にやってくる。

そこから100年後にはどうなるかというと、1垓倍の1垓倍になる。

そこからさらに100年後には、1垓倍の1垓倍の1垓倍。

1垓という単位は1兆の1億倍ですから。1兆という数の1億倍が1垓。
1垓倍の1垓倍の1垓倍、300年たつとそんなおそろしい数になるわけですが、ここまでくると数の単位が人間の辞書にはない。

人間の辞書の単位を越えた、それくらい大きなものになる。

本当になるのか? というと、一概には言えない。

(笑い)

1垓倍になろうが、1万倍であろうが、大事なことは人間の脳細胞の機能を越える、それだけはまちがいない。

ちなみに人間の脳とほかの生物を比べてみました。

[脳細胞数の比較]

チンパンジーと人間の脳細胞、たいしてかわらない。
チンパンジーの脳細胞(シナプス)は80億個。
人間は300億個ある。

ミツバチのような昆虫で100万。
アメーバは1個。

アメーバに脳があるかどうか疑問のあるところですが、全部の細胞が1個しかないわけですから。

アメーバが1個だとして、それが脳ではないんですが、1個まるごと脳だと仮に換算して、人間はたった300億倍です。

アメーバと人間の脳細胞がたった300億倍。

[脳細胞・コンピュータ素子数の仮説]

さきほど申し上げた1垓倍はどのくらいかというと、人間とアメーバの差を越えている。

人間は昆虫やアメーバを馬鹿にしますよね。

でも100年後のコンピュータ、ワンチップからみると、彼らから見た人間の脳細胞というのは、我々から見たアメーバ以下である。水虫以下だ。

たのしくない。
やなこと言うヤツだなあと思うかもしれません。

1垓倍の1垓倍。

300年という単位を想像すると、どれほど予想外なことが起きるか。

おそらく300年後も人類はパンを食べている。
300年後も日本人はコメを食べている。

もしかしたら300年後も吉野家の牛丼で食べている。

300年たっても人の食べるものとか基本的な動作はあまりかわらないと思う。
300年後の自動車もたいしたことないと思う。

だけどコンピュータの進化はほかの進化をはるかに超える、予想することすらできない。

これくらいの倍率になると当然科学者たちは、原子の大きさを下回るところまではいかないとか、いろんな科学的な議論をする。

でもムーアの法則のトレンドにしたがっていくと、それくらいの倍率になる。

我々がいま考え付かないようなまったく新しい概念のコンピュータ、進化がなされるかもしれない。

[人類史上最大のパラダイムシフト]

これから300年、人類はこれから人類史上最大のパラダイムシフトを体験することになる。

[ソフトバンクが実現したい未来]

パラダイムシフトがやってくる、人類のライフスタイルが変わるという300年後の未来において、ソフトバンクが実現したいことってなんだろう。

[ソフトバンクの未来への責任は、人々を幸せにする情報革命の実現。]

300年間ソフトバンクグループが存続し、現在の人類が考えられないような、1垓倍にならなくても、仮に1000倍、100倍だとしても、人間の脳をこえるものが初めて地球上に生まれる。そんな大転換がある。そういう中でソフトバンクは何をしたいのか。

ソフトバンクの未来の人々への責任は、未来の人々をしあわせにする。そのために我々は情報革命を行う。

間違った情報革命をしてしまうと、たんにお金のために、人々を支配するためにその恐ろしい武器を使う。
エゴ的な、おそろしい黒い心で新しい人類の武器を手にしてはいけない、と我々は思うわけであります。

[最先端のテクノロジー、最も優れたビジネスモデル]

最先端テクノロジー。
最も優れたビジネスモデル。
これを使って情報革命を通じて人々の幸せに貢献したい。

[脳型コンピュータの実現]

何が生まれるのか。
一言でいうと、脳型コンピュータが生まれる。

この中で、脳型コンピュータの意味が分かる方、手をあげてください。原理を知ってるぞ、そんなものは常識だ。そんなものはすぐやってくる。
その基本的メカニズムがわかる方。
ほとんどいません。

300年前の人々は、我々がいま携帯電話を持ち、自動車に乗り、空を飛び、テレビで動く映像を見る。
想像すらできなかった。

今から300年後の人々は脳型コンピュータを当たり前のように使っている。私は想像します。

脳とは何か。

[脳とは]

脳とは基本的に、データとアルゴリズム、この2つを自動的に獲得するシステムと認識している。

データってなんだろう。
脳にとっては知識。
アルゴリズムとは脳にとっての知恵。

人間には知恵を持つ。
知識をどんどん毎日学んでいく。

脳が自分で学んでいく。
誰かが脳をプログラミングするのではない。

今までのコンピュータはプログラマがプログラムしてはじめて計算したりする。

人間の脳は自動的に勝手に学んでいく。
勝手に考え始める。
そういう能力を持っている。

メカニズムを持つのが脳である。
学習するコンピュータ。

[学習型コンピュータ]

学習する脳型コンピュータについて私はある科学者と意気投合しました。
もう亡くなられましたが、松本元(まつもとげん)さんという、脳型コンピュータを研究しておられた第一人者。

僕は将来彼はノーベル賞を受賞すべき人間だと思っていた。

脳型コンピュータはデータを自動集積し、知恵に相当するアルゴリズムを誰かがプログラミングするのではなく、自ら学習しながらプログラムしアルゴリズムを獲得していく。

その両方の武器をそなえたものが脳型コンピュータ。

[最大のテーマは人類とコンピュータの共生]

なぜそこまでいくのか。
皆さんさきほど出た例のミツバチ。

ミツバチの脳のハードウェア的な機能、チンパンジーの脳の機能、人間の脳の機能。
ミツバチにもチンパンジーにも人間にも、誰かが知恵をプログラミングしてるわけじゃないですよね。

脳のハードウェアであるシナプスの数が増えてくると、脳は見たもの聞いたもの触ったものをどんどん学習し、活用して知恵を生み出していく。

ハードウェアとしての脳の機能が1垓倍だとか、1垓倍の1垓倍の1垓倍の規模になってくると、勝手に脳型コンピュータは、自ら、かたっぱしから情報を得てくる。そして考え始める。

ある意味では知識に相当するデータの自動集積は、ヤフー、グーグルの検索ですでに行われている。

ヤフーとかグーグルは、あれは人間が最早、情報であるデータをインプットしているのではない。
今日現在すでにコンピュータが自らデータをどんどんロボットクローリングという技術を使って、コンピュータが勝手にどんどん集めていって、サーバーにいれて、クラウドコンピューティングというかたちで人々にデータを提供している。

さきほどいいました2つの機能のうち、データ(知識)の自動集積、かたっぽうは実はすでにコンピュータは自らやりはじめている。
残りかたっぽの武器であります知恵、これについても時間の問題で、脳をはるかに上回る機能のコンピューターが出ると、時間の問題でこれをやりはじめるだろう。

一部のきざしがではじめている。
人工知能。
ロボットの手が異なった色、形の積み木をすばやく積み上げる。異なった大きさ、色のクスリを、一番効率よく仕分けしてビンにつめる。
人工知能ということで勝手にコンピュータがやる。
すでに一部やりはじめている。

最近おもしろい事例がありました。

[コースを変えてしまったコンピュータ]

ホンダの研究所で行われている実験ですけども、人工知能のコンピュータのチップを乗せた車がどういうふうにコースを回れば一番速くゴールにたどりつけるか。
人工知能で考えて自分でコースを勝手に変えていく。

途中で間違えてコースにぶつかった。
コースを壊してまげて走ったら、ゴールに速くついた。
ぶつかって壊れて、というのは事故。
事故なんだけど事故の結果、一番速くゴールにたどりついた。

次からは人工知能を搭載した車は、自らの意思でコースに体当たりして勝手に一番早い道を走ることを学習してしまった。

まさに人工知能が一番最適な知恵を使って目的に達する、自ら考え始めたという事例になる。

我々人類は議論をすることになる。

人間の脳を1垓倍かしらないけど、はるかに越える、チップだけでなく知恵を獲得していく、人間より頭のいいものができてしまう。
今は人間がプログラミングしているわけだから人間のほうが頭がいい。

それを超えるものができてしまう。
はたしてそこまで許すべきか。

科学技術の進化をそこまで許したとき、人間が制御できなくなるのではないか。

もう一つ議論されていることにクローンがあります。

[クローン羊]

羊の毛を一本抜いて、ビーカーに入れていろいろやると、細胞分裂を始めて、クローン、まったく同じDNAの羊、顔も形もすべて同じDNAのコピーができる、ということが科学技術でできるようになりました。

赤ちゃんとして父親と母親から生まれるんではなくて、毛一本で勝手に試験管で作れてしまう。そういう技術が確立されている。

人間にも実は応用できる。

私も毛がなくなる前に預けておこうかという気になりますが。

(笑い)

はたして人間の複製を作ってしまっていいのか、科学技術者のなかで真剣な議論がおこなわれ、各国の政府が人間のクローンだけは法律で禁止しましょうと一致しました。

科学技術をどこまで許すのか、人間にとって何が有益で何が有害かという議論であります。

そういうことでコンピュータは時間の問題で、間違いなく、知識と知恵というところまで、人工知能でいろいろ便利になるので、止めることができないくらい進化してしまうだろう。

実は脳にはもう1つだけ重要な、最も重要な機能があります。

感情というものです。

[人間の脳の働き(知恵・知識・感情)]

人間の脳は大脳がこの3つで成り立っている。

知恵と知識を道具として使って、人間の脳は何をゴールに、何を目的にするか。
自分の脳が一番ここちよく感じる感情をみたすために、知恵と知識を使っている。
一番脳がここちよい、快感を感じる。

おなかがすいた。それを満たす。
ねむたい。それを満たす。
お金をかせぎたい。それを満たす。
立派な家に住みたいという欲望。それを満たす。

感情の欲望を満たすために、知恵と知識という道具を使って、脳は機能している。

感情の欲望の中に、欲望のまま、本能のおもむくままだけで脳を活用していくと、大変危険なことになる。

野蛮な人たちが生まれてしまう。

人間の脳は段階に応じて、満足感には段階がある。

[感情のピラミッド]

一番低い次元の感情は生理的欲求。
食べたい、ねむたい。
本能的欲望ともいえる。

もう少し知性がつくと、人々は理性を働かせて、あまりにもむき出し本能のままいくと人に迷惑をかけてしまうという社会性がうまれる。知性がうまれる。本能的欲望を制御する。

知性をもう少し高い次元にいくと、自己実現。夢を実現したい。
オリンピックで金メダルを取りたい。
ワールドカップで優勝したい。
すばらしいピアニストになりたい。
そういう自己実現がもう一段高いところにある。

もっとも高いところにあるといわれるのが、愛。

もっとも悲しいことは、身近な人の死。孤独になりたくない。

愛を満たすのが脳細胞が求めるもっとも高い次元の欲望。

これがむき出しの欲望、本能的欲望を制御する。

さきほどのクローンの羊、クローン人間を許すべきかの議論、それとは別の次元で、人間はコンピューターに感情を許していいのか、人類は300年の間にこれまで体験した一番大きな議論に直面する。

[超知性の実現]

コンピュータが自ら感情と意志をもって自ら動き始めたら、ある意味こわいことです。

逆に言うと、人間をはるかに越える知恵だけを持つと、暴走までして最短距離を走ろうというものが出ます。

むしろ私は暴走をとめるためには、本当に高い次元の感情、人々を豊かにさせたい、優しさ、愛情というものを、むしろコンピュータに持たすことが、コンピュータの脳を制御する。

超知性の実現。
ハートを持たせる。心を持たせる。
優しさ、愛情を持たせるほうが脳型コンピューターの正しい進化ではないか。私は思う。

[情報革命で人々を幸せに]

情報革命で脳型コンピュータは人々を幸せにする。

人間が人間を幸せにするように、機械が人間を幸せにしてくれるように、超知性のコンピュータが人間を幸せにするために共存していく。

本当にそうか? 疑念をもたれるでしょう。

300年後にどんな幸せを超知性を使ってやっていくのかという例をいくつかあげてみましょう。

[平均寿命の推計]

300年前、平均寿命たった33歳でした。
いまは83歳まできている。

いまから100年後200年後、300年後には私は平均寿命は200歳になる、と思います。

そのころにんると高齢者というと300歳の人のことをいう。

100歳、まだひよっこだね。若くていいね。といわれる時代がくる。

[DNA治療・人工臓器の一般化で平均寿命200歳へ]

どうやれば平均寿命が200歳になるのか。
ちなみに過去300年間、だんだん平均寿命ののびが加速している。

この100年間、10年で3.5歳ずつくらいのびている。

科学技術、DNAによる治療、人工臓器の一般化というものが300年以内にやってくる。

DNA治療の一般化、人工で作られた、人から移植するのではなく、自分自身の細胞からつくる。拒絶反応もない。
それが一般化していく。

人間のパーツを入れ替えて長生きする。心臓をいれかえる。肝臓を入れ替える。あちこちいれかえる。
どこまでが自分だろう。

脳が一番大切。
脳を入れ替えるのがなかなかむずかしい。

[人体間通信、テレパシー的通信の普及]

脳を入れ替えることはできませんが、脳を補強することができるようになるだろう。

実は人間の脳は、手足と、いろんなところにある神経で通信している。微弱な電流が流れている。

人間の神経、脳が考えて指、手足を動かす。通信している。

人間の体を通信の媒体とみなすと、脳からコンピュータのチップに体を通じて通信するという時代が300年以内に必ず来る。

チップを体にくっつける。チップと脳が通信しはじめる。
チップをどうやってくっつけるんだ?
チップエレキバン。

(笑い)

はりつけなくても時計でもいい。ピアスでもいい。
人間の体にチップが直接触れる。チップと脳が通信する。
そのチップと離れたところにいるチップが無線で通信する。

そのチップと相手の脳が体内通信をする。

そうすると、まるでテレパシー。

それが科学技術で300年できるようになる。

チップとチップが無線で通信する。

[完全自動通訳の普及]

300年後のソフトバンクは、携帯電話会社ではなく、テレパシー会社といえるかもしれない。

そのチップとチップが無線で通信しあって、異なった言葉をしゃべっている人間同士が、中国語、フランス語、英語だとか、皆さんがしゃべれない言葉をしゃべってる相手と、コンピュータが自動翻訳し、相手とテレパシーのように自動翻訳してくれる、そういう時代もくる。

犬ともテレパシーできるようになる。
本当か?
30年に1回の大ぼらですから言わせてください。

そのチップが、脳型コンピューターのチップが、動くことができるモーターとくっついたときに。人工筋肉。動力をもった、動くことのできるモーターとくっついたときに、ロボットになる。

[災害救助、介護・家事、救急医療]

知恵をもったロボット、人工知能、脳型コンピュータを搭載したロボットが、300年以内に一般化する。

人工知能をもったロボットは、たとえば地震などの災害、今はあぶないところに救助災害で火事や地震で消防士が命をかけて助けているが、命をかけて助けなくたって、人工知能をもったロボットコンピューターが危険なところ、瓦礫をもぐって、かならずしも人間型ではなく蛇のようなにょろにょろのようなロボットが「おーい、生きてるかー!」
叫んで、相手と通信する。

あるいは大きな動力を持って、たんなるショベルカーではなく、しゃべるかー(喋るカー)という機能を持つ。

家事だとか医療。そういうものも知能をもった、優しさをもった、たんに機械的に手術する、「痛い痛い!」「我慢しろ!」ではなくて、優しさをもった人工知能のお医者さんのほうがいいですよね。
どうせ診てもらうならそっちのほうがいい。

そういう形で人間に優しい、すぐれた知能を持って、強い筋肉も持っている。

考えてみるとさまざまなロボットが生まれるだろう。

[ロボットの種類>生命体の種類]

いろんな形のいろんな知恵をもった機能特化型、あるいは万能型、ロボットがぞくぞくと生まれる。

300年後の社会。
今見ている景色とはまったくちがうライフスタイルをすごしているかもしれません。

そのときにロボットを作る会社は必ずしも自動車メーカー、家電メーカーなど、筋肉をつくるのが一番得意な会社が強いとは限らない。

筋肉に何を指示するか、なにを考えるか、知恵のところが一番難しい。
我々ソフトバンクは一環して情報革命するわけですが、脳型コンピューターに、やさしさをもったハートを持った愛情をもった、そういうものをロボットに提供していきたい。

[新技術のほとんどをコンピュータにより発明]

新しい知恵が続々と人工知能、脳型コンピューターが生み出していくようになると、新しい発明、新規技術も、脳型コンピューターが自ら発明しはじめる。

[知的ロボットとの共存]

ほとんどの発明がこのような形で、コンピューターが主役になって、ロボットが主役になって、知的な、優しさをもったコンピュータとの共存。
必ずしも恐ろしい、こわい、破壊的な社会ではない。

300年前の人々は機械が怖い、おろそしいものだと誤解を多くの人から持たれて、ハンマーで叩き壊した。

同じように知性をもった、優しさを持ったロボットは危害を与えるものではなく、むしろ人間より優しくなるかもしれない。

彼らとの共存する社会がうまれるかもしれない。
我々はそれを実現したい。

我々はサイエンスフィクション(SF)を作る映画監督ではありません。
小説家でもありません。
我々はそれを実現させたい。

優しさをもって愛情をもって、情報革命のために行いたい。
「何のために」ということが一番大事です。

人々を幸せにするために、こういう脳型コンピューターをひろめていきたい。情報革命をひろめていきたい。

一家に一台といわず、10台100台、脳型コンピュータを搭載したロボット、家電製品がどんどんでるのではないか。

[人類への脅威]

人類がいままで体験したことがないような、解決できなかったような、人知をこえた、叡智をこえた難題にも、彼らと一緒に解決していく時代がくるかもしれない。

人間が解決できない未知のウイルスとの戦い。テロ、隕石、大地震、人知を超えた難題も彼らと一緒に解決していく時代が来る。

[それでも人は愛を求め、愛に傷つく]

すぐれた文明の利器をもった時代がきても、人々はやっぱり、なんでもコンピュータまかせというわけにはいかない。

人間は愛を求め、愛に傷つき、誤解をし喧嘩をする。
献身的にささげたり、300年後も愛ってなんだろうとつぶやいているだろう。

愛ってむずかしい。
300年後の人々も。

[情報革命で人々を幸せに]

我々がやりたいのはたった1つ。
繰り返します。
情報革命で人々に幸せを提供したい。

たったこの1つ。
たったこの1つを我々は成したい。

[大風呂敷を広げる孫正義社長]

という話を300年後の大風呂敷を広げましたので、30年後の世界はは急に現実的に見えてくるんじゃないでしょうか。

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