旅と執筆とプログラミング

この1年をまとめると、こんな感じだった。

10ヶ月間世界を旅し、アフリカ、東南アジア、オーストラリア、北米、中米、南米の17カ国を巡る。旅の中心はサーフィンと写真撮影

香港、日本、アメリカ、ロンドンでのプレゼン

旅の途上でオライリーのJavaScript Webアプリケーションという本を執筆

もう一冊、オライリーから間もなく出るCoffeeScriptの本の執筆

Spine、Spine.Mobile、GFX、Juggernautといったオープンソースのライブラリ開発を山ほど

スタートアップのプロトタイプ作成

FOWAでのプレゼン

最後にTwitterでの仕事に落ち着く

1年前の2010年9月から話を始めよう。自分が共同創業者だったスタートアップをやめた。有用な経験だったけど、すごく長時間働いて燃え尽きたように感じていた。僕はまだイギリスにいて、心を決めなければならなかった。(ほんの数年とは言え)ずっと抱き続けてきた夢はアメリカに渡ることだったので、Googleノートブックにこんなことを書いた。

人生の選択
ニューヨーク市にあるコロンビア大学に入る。
短所 高いコスト、実用的なことはあまり学べない、退屈かも?
長所 ニューヨークの大学だ!
本を書いてO1ビザを申請する。
短所 時間がかかりリスクが高い。
長所 いい実績になるし興味深い。
そうだ。単に休暇としてニューヨークに行ってもいい(3ヶ月)。スタートアップビザが下りるのを待つ。
楽な選択肢だが、そんなに興味深くはない。

とりあえず2をやって、保険として3とか?
結局2の選択肢に決めて、ずっと温めていたJavaScript Webアプリケーションの本のアイデアを書き出すことにした。本を書くのに、もうひとつの夢だった世界旅行をしながら書くよりもいいやり方があるだろうか? 世界一周飛行機チケットをワンワールドで手配し(みんなが思っているよりも安いよ)、次の週に最初の目的地である南アフリカへと発った。

MAPBLUE

アフリカに行ったことがないなら、ぜひ行くべきだと思う。あの美しい生のままの風景は、体験したことのない人にうまく伝えるのが難しい。前の年に東海岸で3ヶ月ほどサーフィン旅行をして南アフリカに惚れ込んでしまった。今回は1ヶ月しかいなかったけど、ケープタウンからダーバンまでトランスカイを縦断した。北へ旅しながら書き始め、オライリーに提案していた章立てのアイデアに肉付けしていった。

トランスカイは南アフリカでもすごく辺鄙な場所で、なだらかな丘と小さな村と泥で作った小屋があるばかりだ。彼らには今でも族長の階層があり王がいて、ほとんどの人が野外で暮らし魚を食べている。僕のお気に入りの場所であるコーヒーベイという美しい入り江までは、ひどいでこぼこ道を2日間行く必要がある。そこから海岸をさらに北上する旅に備えてバッテリーを充電し、記事をいくつかローカルに保存した。

手つかずの海岸を何マイルも歩き、村から村へと、砂と波以外何もないところを1人行ったのを鮮明に覚えている。水かさの増した川に出会い、リュックを高く掲げてNikonやiPodを濡らすまいとしながら川を泳ぎ渡った。アフリカというのは自分を忘れ、心を自由にし、人生で本当に大切なのは何かを見つけ出す場所だ。

cow

次に行ったのは香港で、そこで21の誕生日を迎えた。それから陸路シンガポールからハノイへ行った。多くの人が知らないことだが、香港の70%は国立公園だ。龍背のような壮観なルートをハイキングして素晴らしい時を過ごした。また時にはboot.hkのようなコワーキングスペースに出入りして旅仲間にRubyを教えたりした。そして夜にはソーホーでカウチサーファーたちとパーティをして明け方まで過ごした。

YUUKEI

タイ、カンボジア、ベトナムのあたりは今回の旅の中でも特に気に入っている部分だ。アジアを回ったことがないなら絶対行ってみるべきだろう。どの国も美しく、天候が良くて、食べ物はおいしいし、人も親切だ。アンコールワットは世界の驚異だ。誰もの「死ぬ前にやりたいこと」リストに入っていてしかるべきだと思う。アンコールワットに行きたいと思ったのは、実際その他の場所も多くはそうなのだけど、トレイ・ラトクリフの写真を見て触発されてのことだ。そもそもこの旅へと僕を駆り立てたのは彼だった。

WAT

ある無名ブログの記事で、カンボジアの沖合にある美しい離れ小島について読んだ。シアヌークビルのバーの話をしていて、そこでその島に行く釣り船を手配できるということだった。僕は親しい友達何人かと夜行バスでこの町に行き、件のバーを探した。バーからバーへとたらい回しにされ、ほとんど丸一日がかりでようやくその場所を見つけ、翌朝の便を手配した。

KANBOJIA

上の写真は僕たちが泊まった一晩10ドルの掘っ立て小屋の外にあるビーチだ。地元の人間以外でその島にいるのは僕たちのグループだけで、好きなだけ羽を伸ばすことができた。日中はビーチでのんびりし、島の料理人がこさえた素晴らしいフルーツサラダを食べ、夜は光るプランクトンが漂う海で泳いだ。

MEKON

次に向かったのはベトナムで、メコン川に沿って旅して国境の町にたどり着いた。そこで西洋人は僕たちだけで、意思疎通の問題があった。幸いその町で唯一英語が話せるらしい人間を見つけ、彼が自転車で町を案内してくれた。彼の助けは、僕のクレジットカードがATMに詰まったときに格別ありがたかったね!

MAN

それから僕たちのグループは分かれ、ベトナムに着く頃には本の執筆もだいぶ進んでいい感じに仕上がってきた。サイゴンに何週間か余計に滞在して章を書き進めた。中国の新年のお祝いの頃で、これは本当に見物だった。

次に行ったのは日本、オーストラリア、ニージーランド、ハワイだ。旅の体験すべてを一本の記事に押し込めることはできそうにないので、それがこれ以上ないくらい楽しいものだったとだけ言っておこう。驚くほど多くの美が1つの国に詰め込まれているのがニュージーランドだ。中でもお気に入りの思い出は、夕日の中ワナカ湖畔を走ったことと、食料や必要なものを背負いルートバーンに沿って山の中を何日もハイキングしたことだ。この国の旅を通して一生の友達を得た。本当に天国のような場所だ。

ニュージーランドの南島を一回りする頃には本も実質書き上がって、テクニカルレビューアに原稿を送った。

NEW-ZEA

次がニューヨークとサンフランシスコだ。この2つの素晴らしい都市には、何人か友と呼べることを幸運に思えるすごい開発者がいる。Techcrunch Disrupt (あのハッカソンはすごくおすすめ)は、プログラマを見つけるのに最高の機会だ。

ニューヨークとサンフランシスコでの滞在中、色々な会社の面接を山ほどこなし、Twitterでフロントエンドの仕事することになった。あんなすごいチームと働けることにすごくワクワクしている。しかも夢の場所サンフランシスコだ。

ビザが下りるまで中南米を旅しながらお気に入りのプロジェクトをハックした。SpineというJavaScript MVCライブラリだ。コスタリカ、パナマ、ペルー、ボリビア、アルゼンチンと巡った。ペルーはすごく気に入った。高度で少しまいったけど、探検して素晴らしい時を過ごした。下の写真はコルカ渓谷の名高いコンドルで、世界で最も深いこの渓谷を下る途中で撮ったものだ。

KONDOL

コスタリカにいた時、ロベルトという男からツイートが来て、僕の本を読んで興味を持ったので一緒にサーフィン旅行をしないかということだった。喜んで誘いを受け、サンホセへのバスに乗って数日後に会った。日中はビーチサイドでSpineやRubyのハックをし、車のバッテリーを電源にノートPCとデータ端末を使っていた。バッテリーの残りが少なくなると、太陽電池パネルで充電している間サーフィンしに行った。

SURFING

本の執筆というのはすごくおすすめだ。旅との組み合わせならさらにいい。実際サンフランシスコに目標を置いていなかったら、コンサルやスタートアップをやりながらずっと旅を続けたいところだ。本を書くのは直接的には大した収入にならないけど、経歴に箔が付くし、間接的にいろいろなチャンスに巡り会えるようになる。本の執筆で一番好きな部分は、あるテーマについて調査し本当に深く知ることができるところだ。

GAKE

この一年は僕が生きてきた中で一番良い年だったけど、次の一年はさらに良いものになるという予感がする。当面腰を落ち着けることにしたけど、旅への思いを振り切れるとは思わない。今もポケットにはパスポートや財布そのほかが入っていて、いつでも旅立てる準備ができている。

ところで今回の記事は単なる旅行話ではなくて、1つのメッセージがある。

プログラマが変わっていると思うのは、遠隔地や旅行中でも容易にできる仕事でありながらみんなそうしないということだ。もちろん例外はあるだろうけど、この旅行中に同じようなことをしているプログラマには一度も出会わなかった。残念なことだと思う。プログラマ仲間への僕のメッセージは、言い訳するのをやめて実行しようよ、ということだ。人生一度しかないんだから。素晴らしい体験になるだろうことだけは請け合える。

自分はすごく幸運だと感じている。情熱を傾けられるものを見つけ、毎日好きなことをやっている。でも僕の現在の状況は別に偶然でもまぐれでもなく、計画と目標と努力の結果だ。

人は努力するほど、幸運になる

この記事の要点は、尊大で自己陶酔的な自慢話じゃなくて、目標を持つことは機能すると示すことと、他の人も同じようにするよう刺激を与えることだ。今いるところと、一年後にいたい場所をよく考えて、そこへ至る具体的なステップを書き出すといい。自分の夢を追うことだ。

関連の書き起こし