【全文書き起こし】シンガポール・ベトナム進出を考えているベンチャー企業向け海外進出セミナー④

木村氏:海外進出を成功させるための実務ということで、主に税務の観点からですけれども、それ以外の部分についても触れながら行きたいと思います。先ほど篠原さんの方からいろいろメリットデメリットお話し頂いたんですけれども、あらためてシンガポールに法人を設立するメリットということで、3つポイントがあると思っていまして、1つは法人税制です。税金が安いという単純なところと、それ以外にもポイントが出てくるので、そこは追ってご説明させて頂きます。もう1つは法人維持費というか立ち上げの費用ですね。そこのところにもメリットがあるかなと。3つ目は個人所得税ですね。行かれた個人の方にもインセンティブがしっかりあるよということで、そこの説明をさせて頂きます。

はじめ設立維持コストなんですけれども、篠原さんの方からシリコンバレーは非常にバーが高いとお話し頂きましたが、大体設立関連の登記費用で日系の会計事務所さんに頼んで30万~50万ぐらいということが言われています。それで、こちらの方はたいたい現地の会計事務所がやるんですけれども、会計事務所に頼むと、基本的に資本金を払い込んで、その他諸々の手続き費用でほとんどかからないので、数万円とか10万円とか、そういうレベル感でいけるということが言われています。なので、届け出をしたら認可が下りて簡単に設立できるということで、非常に設立コストが低いということが言えると思います。

シンガポールで逆にやらなきゃならないと言われているのが就業規則を作るというところで、就業規則を作る時は大体、雇用契約書の雛形と就業規則の方で、各々10万、15万とかで30万ぐらいかなという話をされていました。日本の感覚でいくと、就業規則がない会社さんというのも結構あると思うんですけれども、向こうに行くと、非常に労使関係が厳しく見られます。あとはシンガポールである程度雇用していかなければいけないという中で、はじめの方にここを整備するのが必須ということが言われていました。あとは就労ビザの取得です。いろいろなタイプのビザがあるんですけれども、シリコンバレーより比較的取りやすいということが言われていました。こちらのビザの種類が4種類ぐらいあって、それぞれ大学を卒業した方用ですとか、それよりも更に上級職で給料がこれぐらい以上の方用とか、賃金のレベルに応じてビザが決まっているということです。ある程度とりやすくて、大体費用でいくと1人あたり6万円~7万円ぐらい、家族の方が10万円ぐらいかかるということです。

ビザで1つ難しいのが、シンガポールは結構うまく海外の方をコントロールしていて、出方に差があるというか…時々によって結構差があるということは言われていました。シンガポールは、今非常に土地が足りないというか、そういうような環境になってますので、なるべく外からの人を制限して、中の人を雇用して、中の人を雇用しているところがさらに外の人を採れるというような環境を作っているので、今までそんなに問題視されなかったビザですけれども、今後はちょっと論点になってくるかなと思っています。


こちらの上の方が、大体設立まわりで初期に必要になる方で、下の方が法人を維持するコストですね。主にこちらに3つ書いておりますが、賃料、法律顧問、会計顧問で、賃料の方は先ほど篠原さんからあったように、シェアする時で10万とおっしゃってましたが、先ほどのクロスコープさんの方でも大体15万とか、そういったぐらいのパッケージ料金を払えばインフラもあって使えるかなというイメージです。法律顧問の方は、特に付けても付けなくてもということだと思うんですけれども、なかなか向こうにスポットで行かれた時に、契約まわりをやられるような時はスポットでお願いせざるを得ないかなというところもあります。篠原さんはどうされてましたか?まだそこの段階ではないですか?

篠原氏:僕は自分の顧問弁護士がアメリカの弁護士なんですけれど、ついてきてもらっています、契約の時は。

木村氏:おお、そうなんですね。なるほど。でも通常はやはり…

篠原氏:通常は自力です(笑)

木村氏:自力なんですね。

篠原氏:はい(笑)

木村氏:なるほど。サポートは受けないでという感じですかね。

篠原氏:そうですね。あとはスカイプで入ってもらうことはあります、弁護士に。

木村氏:なるほど。ということで、なかなかスタートアップの方で難しいのは、法律顧問をどの程度利用するかというのが非常に難しい点だと思うので、今の篠原さんのご意見等を参考にしていただければ。

最後、会計顧問なんですけれども、こちらも現地の事務所を使うのか、それとも日系の事務所を使うのかで、結構料金が違っています。現地の事務所を使う場合は、大体仕分け100本とかスタートアップで100本、その程度のイメージ感で現地の方は7、8万円~10万円ぐらいのイメージで、それが日系になると12万~15万とか、もうちょっとかなということが言われていました。どちらがいいのかというメリット・デメリットなんですけれども、現地の方に頼むより、やはり日系の方に頼む方が圧倒的に多いらしいんですけれども、やはり日本語で全部書類を作ってくれるというところと、あとは微妙に会計基準とかがシンガポールと日本で違うようなところも無難に処理してくれる。しかも日本語でやってくれるというようなところで、日系企業に頼まれるということでした。シンガポールの企業は、基本的に会計監査が、売上が一定以上いくと必要になりますので、そちらの方で、数十万ぐらいコストがかかるということが言われています。ただ、今のを総合しても実際にシリコンバレーの方で起業される方は、ビザ待ちで半年とか、さらにビザが下りなくてというお話をされていたりするので、それを考えると圧倒的にスピード感を持って起業できるかなと思います。

続きまして税制ですね。海外進出する時にヘッドクォーターを置く時の1つのメリットだよとお話しされていましたけれども、一番の特徴はシンガポールは法人税制が17%ということで非常に安いということが言えます。あとは、先程VC側の観点からご説明いただきましたけれども、キャピタルゲイン課税がないので、これは実はヘッドクォーターを作った時も同じで、親会社に配当を吸い上げた時も課税がないというところで、それは非常にメリットかなということが言えます。あとは源泉税です。配当を払う時とか、利子とかロイヤリティーを払った時の税制も非常に安定的で、特にここがすごい有利ということではないんですけれども、やっぱり配当の課税なしというのが特徴かなと思います。よく言われるのがASEANに出る時のヘッドクォーターがシンガポールで、中国に出る時に間にかませるのが香港ということで、非常に似てる点としては税率が安いというところと、あとは配当に関するキャピタルゲイン課税がないということが言えると思います。なので、後ほどちょっと下の方の租税条約のお話は簡単に説明させていただきます。

繰り返しになりますがポイントです。EAの進出で、これはちょっと以前やってしまっているんですけども、配当で吸い上げる際にはキャピタルゲイン課税がされないかというところが非常にポイントになります。それで、これは日本なんですけども、日本が上にある場合の特徴としては、先程はここにシンガポールを置いた場合、ここからここへの吸い上げで税金がかからないという意味だったんですけれども、日本の方でここからここへ吸い上げる時に売上みたいな形で受取配当金の95%が益金不算入となるんですけれども、ホールディングスの方で、ちょっと分かりにくいかもしれないんですけれども、そこの源泉税を取られていると、そこの部分が費用的に扱われて控除できるんです。日本の制度の場合ですとそれが税金から差し引きできないでそのまま費用になってしまうので、ここの原則課税なしというところが非常にポイントになっています。こちらは、シンガポールから配当を払う際の源泉課税がないというのが非常に税制上、重要になってます。
 例えば、ここが10%シンガポールの方で取られるということであると、ここを吸い上げた時に日本の方でそこに入ってくる受取配当金というのには課税されないんですけども、ホールディングスの方で1回こっちに払う際にプールしなくてはいけなくて、プールした分に関しては税金の控除ができなくなるので、繰り返しになりますけれども、払う際の源泉がされないというのが非常に重要なポイントになります。ちょっと分かりにくかったと思うので、ここについて特に興味がある方は後ほどご質問を頂ければと思います。

キャピタルゲインは同じですね。あともう1つ、国際税務のところでポイントになるのが、国際税務って何なんだ?どういうところが有利になるんだ?というところで、あまり詳しくは今日は触れないんですけれども、結局、進出していくと国境を越えた時にどっちの主体で課税するんだという問題が非常に多く出てきて、二重課税をされる可能性が生じると。これが非常に大きな問題になっています。
 シンガポールは非常にこのリスクが少ないというので有利になります。イメージで説明すると、日本の方で100売り上げた時に法人税40かかるんですけれども、シンガポールの方でも30課税されてしまいましたよという話の時に、国の間でどうするという話があって、このまま30と40、両方とも取られたのでは非常に厳しいねという話で、ここの被ってる部分については税金がかからないようにしましょうというのが租税条約というので結ばれています。二国間で二重課税にならないようにしましょうという取り決めがしっかりされていると、お金が取られないので、この租税条約の数というのが非常に重要になります。シンガポールのいいところは、非常に多くの国と租税条約を結んでいるので、課税における紛争リスクというのを事前に回避できるというのが挙げられます。こちらもちょっと細かい話なので、後ほど興味がある方は…

あとは海外進出のパターンですね。まず、海外進出のパターンは実は3つあって、1つが駐在員事務所を出す、2つめが支店を出す、3つめが海外子会社を作るというパターンがあるんですけれども、それぞれの時にどのような課税されるリスクがあるかという話だけ簡単にしたいと思います。

まず海外支店の前に、駐在員事務所を作る時、こちらの論点が一番問題になります。駐在員事務所を作った時に、支店でも同じなんですけども課税対象になるかならないかというのは、そちらの方にPEというものがあるかというのが判断基準になります。ここにPEと書いてあるんですけども、PEとは何かというと、Permanent Establishmentといって固定的な施設で事業を行う一定の場所ということが定められています。いろいろと規定はあるんですけれども、海外に駐在員事務所を作った時に一番怖いのがPE認定をされてしまってそちらの方で課税されてしまうということになると、非常に税務に関するコストがかかってくるので面倒臭いと。これのポイントなんですけれども、結局、駐在員事務所はそもそもの握りで、やはり現地で契約活動を行わないというところが大原則でありますので、それを越えて契約締結等を行ってしまうとPE認定されて、向こうで課税されてしまうと。それが1つ海外駐在員事務所を作る時の留意点になります。

今度は海外支店です。支店を作る時はどのような点がポイントになるかというと、支店については基本的に一定の事業所と見なされるので課税をされて、ほとんど法人税率と変わらない税率が適用されることになります。支店でやる時に面倒臭いのは、向こうの方でしっかり申告を行って、その分の所得、税額というのを日本の方で報告して日本の方でそれを免除してもらうというような形になります。なので、日本会社の全世界所得に対して日本は課税するんですけれども、外国で課税された分については払わなくていいですよというような形で計算がされます。ここのところで1回向こうで払わないといけないという点で、やはり駐在員事務所と支店というのには大きな違いがあるということが言えます。

最後に、海外子会社を作った時、どうなるかという話です。気を付けなくてはならないのは親会社と子会社でいろいろとお金のやりとりをする時のポイントで、独立企業間価格でやらなくてはならないというのがあって、簡単に言うとシンガポールの方が税率が安いのでシンガポールの方に利益を移せば全世界の所得が安くなって、税金も安くなるんですけれども、その時にしっかりした価格というのを証明しないと、後々「これって税金をごまかしてるよね」ということで追徴されてしまうと。なので、これが移転価格税制と簡単に呼ばれているものになります。

覚えておいていただきたいのは繰り返しになりますけど、駐在員事務所でやる時はPE認定がされないように細心の注意を払うということです。海外支店でやる時は両方でしっかりと税金計算をして納税した後に日本の方で税額控除を受けると。海外子会社を作った時は、取引の価格の妥当性というのが求められるので、しっかりした価格でやるということを根拠として残すというところがポイントになります。なので、その他にも細かい論点は非常に多くあるんですけれども、本日はあまり細かいところにいってもということがありますので、この辺にしたいと思います。

どうもありがとうございました。

(終了、拍手)

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