2011.08.09 衆議院 法務委員会 城内実:人権救済機関の問題について

奥田建 (法務委員長)
城内実 (国益と国民の生活を守る会)
江田五月 (法務大臣 環境大臣)
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次に城内実君。城内君。

国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。本日はですね、人権救済機関の設置の問題について、おそらく今日でですね、千葉大臣そして柳田大臣から数えると四回目か五回の質問なんですが、8月2日にですね、法務省政務三役の名前で「新たな人権救済機関の設置について」という基本方針が出されまして、私もそれを読みました。これまで江田大臣も含めてですね、非常に曖昧な答弁しか返ってこなかったのです。

そしてこの基本方針を見て驚いたのは、私が平成17年、当時は自民党の国会議員でしたけれども、命がけですですね、当時の人権擁護法案に反対したのですが、制度設計ほとんど変わってないんですよ。非常に驚きました。何度もですね、いろんな問題提起をして具体的にここがおかしいとか、という話をしてきたんですけども、議論が全く活かされていないんです。ですから今日はぜひ、大臣、踏み込んだ答弁明確な答弁をいただきたいというふうに思います。

まずですね、この基本方針を見ましたところ、当初は人権委員会を内閣府に設置するとありましたけども、法務省の外局となっております。これはなぜですか。

江田法務大臣。

「当初は」ということでございますが、人権擁護推進審議会が答申を出しました。その答申の中には、内閣府とか法務省とかという具体的な記述はなかったと思います。で、政府の方ではその答申に基づいて、この法案を国会に提出をいたしました。

その案では、これは法務省の外局ということになっておりました。従って当初はということになりますと、政府としては、この法務省というのが当初、ということでございますが、一方当時、この法務省案が廃案になって、さらにこれをぜひ出してほしいと、こういうことを野党の方はずっと要望しておりましたが、なかなか出すに至らなかった。そこで民主党の議員立法というものを作って、これを国会に提出いたしました。

その案では、内閣府の外局ということになっていたということでございます。内閣府という考え方もありますし、それを強く主張する国会の内外の人たちもいます。同時に内閣府で本当にしっかり出来るんだろうか、内閣府の誰が一体やるんだろうかと、そんなような意見もございますし、そうしたものを踏まえて、あるいは民主党のプロジェクトチームでも、いろんな御意見もいただいたりいたしまして、そうしたものを踏まえて、私ども、今年の8月2日に現在の法務省の政務三役で、今、委員おっしゃったような、法務省の外局に置くという基本方針を取りまとめたものでございます。

城内君。

私は以前、内閣府に設置する方が官邸直結ですから、なお悪いというようなことは申し上げましたけれども、仮に法務省の設置したとしてもですね、まさに刑務所の刑務官による人権侵害もあるわけですから、どっちも同じなんですよ。はっきり言うと。しかも一番問題なのは、三条委員会でしょ、結局。なんで八条委員会じゃないんですか。そこをちょっと明確に御答弁いただきたいんですが。

江田法務大臣。

これはあの、人権機関、人権救済機関というのはやはりこの、独立性というものが命だと思っております。そのために我々いろいろと苦労してきたわけでございますが、今、委員は内閣府に置くと政府直結と、政府直結というものもありますが内閣府にも、例えばこれは警察庁もあるわけで、警察が人権侵害と決めつけるわけじゃありませんが、やはりそこはひとつの権力行使というものがある。

法務省の方にも、これは刑務所であったり入管であったりしたものがある。しかし全くそうした政府の機関と全く関係ないものを作るというのは、これは憲法上もいろいろ問題があるので、そこで独立性を最大限保ちながら、国会への説明責任などのためにどこかの省へつけると、いうことになるとやはり、これまでの経験があり知識がある法務省に、三条委員会として独立性を持ったものとして作ろうと、いうのが今回の考え方でございます。

城内君。

いや、独立性はいいんですけども。いわゆる国家組織行政法上の三条委員会というのは、そうとうなやっぱり、権限を持っているわけですから、それが暴走する可能性があるということを私は何度も、申し上げたのです。

しかもですね。人権委員の選任が国会の同意人事とされておりますね。で、先ほども、平沢議員そして稲田議員も指摘されてました、例えばその、いわゆる「市民の会」ですか、「市民の党」だかありますよね。こういったその、関係者がですね、ヘタすればですね、人権委員になってるなんてことだって、あり得ないことないわけですよ。

例えばアメリカの連邦通信委員会ですと、5人の委員中、与党系が3人、野党系が2人ということでバランスをとることになっておりますけども、全部与党系の、御用学者とかですね、かつて過激派だった人がなっちゃったら、どうなるんですか。その点をちょっと御答弁いただきたいんですけど。

江田法務大臣。

人権委員は当然の法理というものがございまして、日本国籍を持っている者でなければなりません。その上でですね、それは与党野党バランスをとるということもあるかも知れませんが、しっかり国会の同意人事として国会の皆さんのチェックもいただくと、いう制度設計にこれからして行きたいと、思っておりまして、そこはやはり私は、一定のバランスをとった人選になっていくものだと思っております。

ちなみに、いや国会同意人事だって、国会がチョロまかされて何か、妙な過激派になったらどうする? それは、私は国会というものをそこまで、信用していないわけではございません。是非、そこは国会におかれてもしっかりとした、同意人事の際の人選のチェックというのはしていただきたいと思います。

城内君。

しかしですね、人権関係の学者についてはですね、確かに立派な方もいらっしゃるかもしれませんけれども、かつて学生運動をしていたような過激派の方だっているわけですよ。国会同意人事というのは、例えば衆参、今ねじれてますけども、ねじれてなければですね、やっぱり与党が都合のよい与党よりの、学者をですね人権委員に指名するということだってあるわけですから、それはやっぱり大変危険だと私は思います。

もう一点ですね。人権擁護委員の資格ですけども。地方参政権を持つ者に資格は限定されているんですが、ただ、江田大臣は3月9日の法務委員会、平沢勝栄議員の質問に対してですね「在日外国人の方は共同体の構成員として定着しているので、参政権を付与すべし」という趣旨の御答弁をされました。ということは、江田大臣は外国人が人権擁護委員になってもよい、という立場なのでしょうか。明確にお答え下さい。

江田法務大臣。

これはあの…。その前に、申し訳ないけど学生運動をやってたからといって、必ずしも過激派というわけではないんで、ぜひ、そこは御理解いただきたいんですが。ま、それはおいといて、人権擁護委員の国籍条項の問題は、これもいろいろな意見があります。

基本方針では新制度へのスムーズな移行をはかるために、既に60年以上続いている現行の人権擁護委員制度、これはそのまま要件を維持しようということで今回の提案になっておりますが、その中に、国籍条項について一定の御疑問を呈される向きも、あるということは承知しております。

しかしこの、地方選挙における外国人の参政権の問題と、人権擁護委員の適格性、資格というものとは、これは今はリンク確かにしてるわけですが、同じものじゃないんで、地方参政権の方が広がった場合に、人権擁護委員も必ず論理必然的に広がらなきゃならん、ということではないので、その段階でまた議論がなされるべきものだと思っております。

城内君。

だったら明確に、「日本国籍を有する者に限る」という国籍条項をしっかりと設けていただきたいですね。そこら辺が非常になんかこう、気がついてみたら在日外国人の方もなれるみたいなね、そういう誤解を招くわけですから、そこはじゃあはっきりとそういうふうにしていただきたいと思います。

で、もう一点ですけれども、まさにですね北朝鮮の拉致問題というのは、重大な、人権問題ですよね。にもかかわらず、先ほど平沢理事そして稲田朋美理事の質問の中でも、いわゆる、よど号乗っ取り犯の田宮高麿と日本人拉致容疑者の森順子の間の息子である、森大志が所属する市民の党、こういう団体と、まさに民主党の一部の国会議員の方々は関わっている。献金を受けている。こういうことはですね、「人権、人権」と言いながら、まさに人権を軽視しているのは、そういった献金を受けている方々じゃないですか? その点についてお答えいただきたい。

江田法務大臣。

あのう… んん… 「市民の党から一定の献金を受けている者は人権を軽視している」という…、まぁ委員の言わんとする思いは、わからないわけじゃありませんけど、やはりちょっとそれは無理があるんじゃないかなという気がします。

城内君。

大臣、私はね例えばね、あの辛光洙の署名について大臣が謝罪されたから、私はどっかの隣の国みたいにいつ何回も何回も謝罪しろなんてことは、もうこの件については一切触れません。しかしこの、今のこの「市民の党」のこの問題ってのはこれ、非常に大きな問題ですよ。この点についてはやっぱりですね、しっかりとお答えいただきたい。これは問題じゃないですか。

江田法務大臣。

いや、それはですね、その、一般論で言われましても、どういう人がどういう関係でそういう献金が、どういうプロ…経過であったかというようなことまで、やっぱりわからなければ何とも言えない話で、それから「市民の党」というのは、私はよくはそれ存じておりません。北朝鮮とその北朝鮮に関係するいろいろな団体のことは知っておりますが、それと「市民の党」との関係というのは、まあ、ここでいろいろお話になりましたから、市会議員候補が、誰某の息子娘であったとかですね、そういうことは言われますが、そのことによって「市民の党」というのが、どう…なっていくのかというのは、ちょっと私には、にわかに判断し難いんで、「市民の党」からの献金のことについて、それだけで、それを受けている人間が、人権意識上、問題があるというふうには思っておりません。

城内君。

いやしかし、一般の国民から見てですね、本当にあの、拉致問題というのは、例えば差別的発言や行為でですね、人権侵害受けた者とくらべてもですね、もうこれは、誘拐されているわけですから、人権事案としてはものすごく重篤なわけですよ。で、この拉致問題を、放置してですね。放置してないとおっしゃるでしょうけれども、このような人権救済機関を作る、はやく作ろう作ろうと。順序が逆じゃないですか、これは。

そしてですね、経費どうなってるんですか。経費は。むしろ、拉致問題にもっとですね、必要な人員と経費を予算を振り分けるべきだと私は思います、何度も何度もここの場で申し上げてるのは、個別法で対応すればいいでしょう、と。ねずみを取るのはねずみ取りで、ゴキブリはゴキブリホイホイ。それに対してですね、核兵器やミサイルとかですね、ナパーム弾ばらまいてどうするんですか、みたいな話をしてるわけですよ。

実際は私は、以前質問しましたけれども、では民主党さんは事業仕分けをやって○Xとかやっておりますけれども、まさにこの問題についてどれだけ、予算・人員がかかるのか。それをおしえていただきたい。ちなみに、公正取引委員会はだいたい職員800人、80億円、年間かかるそうであります。

江田法務大臣。

この人権…委員会の組織や権限の詳細、あるいは救済手続きのあり方など、これはあのう…おぉ…その…、基本方針で大枠は取りまとめをいたしましたが、その制度、具体的にどうするかということは、これは引き続き検討を要することで、まだ決まっていないところも非常にたくさんございます。そこで、この……制度設計の詳細がわかって固まってこないと、予算規模というのはなかなか言えないんで、今、この段階では、コスト面について具体的な検討を行う段階ではないので、残念ながら「いくらいくらぐらい、かかりそうだ」ということは申し上げるほどまだ成熟していない、と思っております。

城内君。

いや、しかしこれ、国民の血税でね、もし仮に私は反対ですけれども、人権委員会を設置した場合は国民の血税を使って運営していくわけですよ。かつですね、私、調べたら平成22年の現制度に実にですね、21,696件の新規救済手続きが為されてですね、平成22年。そのうちの99%の21,500件が適切に処理されている。

ということは、ほとんどですね、現行法であるいは、各地区に人権擁護員の方がいらっしゃってですね、その方がアドバイスしたり勧告したり説諭したり、あるいは地方の法務局とかですね、現場でやっているわけですよ。むしろやるべきはですね、そういったいわゆる人権侵害救済機関を作るという対症療法じゃなくてですね、そういった草の根がんばってる人たちをですね、もっと陽のあたるところに出してですね、もっともっとがんばってもらう。そのための予算をつけるんだったらわかります。

対症療法じゃなくてですね、根本治療をするべきにもかかわらず、こういった、極めて危険なですね、時と場合によったら、「人権侵害機関」になる可能性もある機関を設置するというのは、私は本末転倒だと思いますが、じゃあ実際、救済できてない、人権委員会がないとどうしようもない、なんていう例があるんでしょうか。あったらおしえて欲しいです。

江田法務大臣。

私も人権擁護委員の皆さんが精一杯、本当にボランティア精神でですね、がんばっていただいていることは高く評価をし、また敬意を表したいと思っております。

しかし、今、人権侵害というのは、それは委員そうはおっしゃいますけど、この世の中本当にいっぱいあります。家庭の中でも職場の中でも男女の間でも子供たちの学校でもですね、これはいっぱいあるんです。そういうところに人権擁護委員の皆さんも努力してくれてるのはわかりますが、まさに対症療法じゃなくてですね、ここは一つ新たな機関をしっかり作って、国民から広く信頼され、実効性のあるそういう人権救済制度というものが機能していくように、是非していきたいと思っております。

城内君。

いや、本当に今日、大臣の答弁聞いてがっかりしました。全く具体性に欠けますし、明確でない。そして8月2日の大臣の記者会見ですね、「国連の委員会などからも早く作れと言われているので、人権救済機関を生み出したい」との発言をされました。結局要するに、外国から言われてるから作ります、と。最初からもう作ることが前提なんですね。

ですけどその、細かいいろんな問題点、私はこれまで縷々あるいは他の方が縷々ですね、提示してきた問題点についての回答が殆どないんですよ。ですから私は今日の答弁は納得しませんが、もう一度、大臣…

質疑時間が終了しておりますので、最後の答弁とさせていただきます。

[江田] 納得いただけないというのは、大変残念でございますが、制度を作る時にはやはり一歩一歩進んでいかなきゃいけないんで、今回は基本方針をまとめ、これにこれから肉付けをしていくというところでございます。

[城内] はい。これで今日は終わります。

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