【全文書き起こし】自然エネルギー普及への並々ならぬ思い!菅総理、孫社長ら参加オープン懇談会Part1

自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」の書き起こし/文字起こしです。

自然エネルギーの普及について意見交換を行うと同時に、インターネットで中継・質問の受け付けも行い、国民がリアルタイムで参加できる初の「オープン懇談会」として注目を集めた内容です。

全文が長いため、5~6回程度に分けてアップしていきたいと思います。
まずはPart1です。

実施日:平成23年6月12日(日)
場所:総理大臣官邸
参加有識者(五十音順):
・ 枝廣淳子 環境ジャーナリスト
・ 岡田武史 元サッカー日本代表監督
・ 小林武史 ap bank代表理事
・ 坂本龍一 ミュージシャン(ビデオメッセージによる参加)
・ 孫 正義 ソフトバンク社長
[司会]藤沢久美 シンクタンク・ソフィアバンク副代表

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自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」

以下本文

<司会・藤沢氏>
自然エネルギー総理・有識者オープン懇談会、開催させていただきます。私、今日司会を務めさせていただきますシンクタンクソフィアバンクの藤沢と申します。どうぞよろしくお願いします。

さあ、まずは皆様にお断りをひとつ申し上げたいと思います。当懇談会はインターネットにて中継を行いまして、ツイッターを通じて多くの方々にご意見・ご質問をいただく形でご参加をいただくこととなっております。ネットを通じてのご参加の皆さま、ぜひたくさんのご発言、ご質問をお待ちしております。

さあ、それでは、まずは内閣官房参与の田坂広志さんより、当懇談会の趣旨説明をお願いしたいと思います。お願いします。

<田坂氏>
それでは着席のまま失礼いたしますが、まずは、今日は本当にお忙しい中をお集りいただきましてありがとうございます。ご多忙の方々の貴重なお時間をいただくことを大変有り難く思っております。また今日はネット中継ということで、ネットを通じて参加していただいている多くの国民の皆様、本当に色んな方がご参加いただいているかと思います。実は私今日、非常に楽しみにしておりました。もちろん、今日、議論になる自然エネルギー、これからどうしていくのか、ということについても非常に興味深いテーマですけれども、合わせて、このスタイルというのが非常に面白いスタイルだと。「オープン懇談会」とあえて銘打ちましたけれども、おそらくこれまで、様々な素晴らしい懇談会を持たれてきたかと思いますが、総理を囲んでの数多くの懇談会があったかと思いますが、こういう形でネットで、リアルタイムで中継をされて、多くの国民の方々、さらにはメディアの方々もそれを実際に視聴する。そしてさらには、ツイッターなどで色んなコメントや意見を送っていただけると。まあ、こういうスタイルの懇談会というのは、実は新たな形の政府と国民、メディア、有識者の方々の対話の姿なのではないかと感じております。そういう意味でも、今日の懇談会、まずは最初の試みとして、色々なチャレンジの部分があるかと思います。ただテーマも、今非常に多くの方が注目している自然エネルギーというテーマですので、このテーマを巡って、本当に面白い議論をさせていただければと思います。

そもそも、この場が生まれたのは、今日ここにお越しいただいています4名の方々、そしてアメリカから参加される坂本龍一さん。こういう方々から、かねて「自然エネルギーをなんとかしないか」と「やっぱりこれからこれを普及していくべきではないか」というご意見をいただいておりましたので、私自身、本当にささやかな、そして僭越な役割ながら、こういう場を設けていただけないかということで総理にお願いしたところ、実現した形になっております。今日は何よりも、貴重なお時間いただいたご参加者の皆様方に感謝申し上げたいと思います。

<司会・藤沢氏>
はい。ありがとうございました。続きまして、菅総理にご挨拶をいただきたいと思います。ボタンは必要ありません。

<菅総理>
はい。あの、今日は本当にお忙しい中を、こういうテーマで、私にいろんな意見を聞かせてやろうということでお集りをいただきまして、といいましょうか、皆さんから押し掛けていただきまして、ありがとうございます。

冒頭ですから多少固い話をさせていただきますが、我が国は、「エネルギー基本計画」というものを3年おきに決めております。この原発事故が起きる前の計画では2030年に、現在の原子力エネルギーを53%にすると。同時に自然エネルギーは20%にすると。そういう計画になっております。しかし今回の事故を踏まえて、私の方でこの「エネルギー基本計画」を白紙から見直すということを申し上げました。その中で、従来、化石燃料と原子力というものが大きな2つの柱でありましたけれども、やはり自然エネルギー、再生可能なエネルギーをもうひとつの柱、そして省エネルギーをもうひとつの柱、この2つのエネルギーをより育てていくことこそ、日本の成長にとっても大変重要だし、もちろん日本の社会にとっても重要だと、このことを提起をし、基本的にはその方針は内閣として了解をされました。

また先日のG8等で私の方から、「2030年までに再生エネルギー20%」となっていた、元の基本エネルギー基本計画のこの部分について、できればこの部分については逆に、2020年代のできるだけ早い時期に20%にしていこうということも提起をし、政府としては基本的には関係方面に了解いただきました。ご承知のように、現在の再生可能エネルギーの発電電力量に占める割合は、2007年で9%ということになっておりますが、そのうちの大部分は水力発電で、いわゆる風力、あるいは太陽、バイオマスといったものは、わずか1%前後となっておりますので、これを20年代初頭に20%にするということは、大部分は、まあ小水力?があるにしても、太陽とか、風力とか、バイオとかになろうと思います。ま、これでもまだ不十分だと言われる方も、もしかしたらそちらの方にたくさんおられるかもしれませんが(笑)、今の私の立場で、政府として方向性を出させていただいたのは、「2020年代初頭の早い段階に、自然エネルギーを20%を少なくとも達成しよう」と、こういうことであります。私としてはこの課題は総理という立場での責任でやらなければいけないことであると同時に、ある意味で、生きている限りですね、こういう課題は、私も昔から関心がありますので、今日の話も伺いながら、しっかり取り組んでいきたいと、こう思っております。今日はありがとうございました。

<司会・藤沢氏>
ありがとうございました。さあ、それでは冒頭のみ撮影の方々、大変申し訳ございませんがご退室をお願い申し上げます。

<岡田氏>
僕だけ何も出してない。みんななんか資料持ってるのに、僕だけ全然なんも資料持ってない。まずいな。(笑)

<スタッフの方?>
生中継中なので、今のも全部映っています(笑)。

<司会・藤沢氏>
どうぞご遠慮なくお水などもお飲みになっていただければと思いますが、こういうところも全て公開であるのがなかなかに楽しいところだと思うのですけれども。改めて、ネットでご覧いただいていますご参加者の皆様にお願いを申し上げたいと思います。

この懇談会は自然エネルギーをテーマにしております。したがって、このテーマに沿ったご意見、ご質問を賜れればと思っております。テーマ以外のご質問、ご意見をいただきましても、残念ながら当懇談会ではお答えすることができません、ご紹介することができませんので、自然エネルギーをテーマにしたご意見、どうぞよろしくお願いいたします。

さあそれではこの場にお集まりいただいた参加者の方を簡単にご紹介したいと思います。50音順で、ご紹介します。まずは一番手前、環境ジャーナリストでいらっしゃいます枝廣淳子さんです。

<枝廣氏>
よろしくお願いします。

<司会・藤沢氏>
続きまして、元サッカー日本代表監督の岡田武史さんです。

<岡田氏>
よろしくお願いします。

<司会・藤沢氏>
そして、ap bank代表理事の小林武史さんです。

<小林氏>
よろしくお願いします。

<司会・藤沢氏>
そして、ソフトバンク株式会社代表取締役の孫正義さんです。よろしくお願いします。そして、こちらのお席にいらっしゃるのは菅総理と、そして福山副官房長官と、細川参与、ということになっております。それでは…あ、もうひとかた紹介しなければいけませんでしたね。もうひとかた、ご参加いただく予定が、ミュージシャンの坂本龍一さん。坂本さんはビデオメッセージという形でこの場にご参加いただく予定です。

さあ、それではご参加の皆様から、5分ずつとなりますが、まずは総理へのご提言をいただきたいと思います。まず、皆様全員に順番にご提言をいただいて、その後まとめてご提言に対するお答え、コメント、こちらを総理の方からいただいていきたいと思いますので、続けてお願いしたいと思います。まずは枝廣さんから、お願いしたいと思います。

<枝廣氏>
はい。枝廣です。今日はこのような場に呼んでいただいて、もしくは押し掛けさせていただいて、本当にありがとうございます。あの、ま、3.11というのが本当に大きく時代を変えたな、というふうに思っています。大きな問題意識として、国民の感情とか意識とか、3.11で大きく世の中が変わっているのに、それが永田町では分かっていないのではないかというふうに随分感じている人も多く、それが被災地支援であったり、原発事故の対処であったり、今回のテーマである自然エネルギーに関してもそうだと思います。そういった意味で、今回、生中継、ツイッターということで、私たちは国民の代理として今日この席にて色々とお話できることを嬉しく思っていますが、この、少しでもギャップを縮めることをこれからもやっていけたらと思っております。

エネルギーの方に入りますが、日本の一次エネルギーのうち、84%が化石エネルギーに頼っているというのがわが国の現状です。ところが、化石エネルギーにこれからも頼り続けるのは、極めて難しいであろうと。それは、このグラフを見ていただくと分かるように、化石燃料を買うための輸入代金が、今どんどんと増えている。23兆、というお金を払っている。しかし外貨を稼ぐ方はそんなに伸びていない。ピークオイルがきて、価格がますます上がっていきますので、このまま化石エネルギーを使い続けるのは、経済的に日本にとって難しいだろうと。
じゃあ原子力はどうなんだ、ということですが、今回3.11があって、当分、日本の中での新設増設は難しい。で、原子力発電の寿命というのは世界の平均は22年ぐらいらしいですが、40年で廃炉と計算しても、この赤い線のように、いずれなくなっていくということが分かっています。化石燃料は高くつくし、原発はこういう状況だし、ということになると、自然エネルギーしかないと。これまで自然エネルギーは贅沢品や趣味のように語られてきましたが、もうそういう時代ではないと。これから経済界も産業界も一緒になって、どうやってこれを早く進めていくか、ということをしないと、エネルギーが足りない時代がやってくるんではないかと思っています。

で、私の方で国民の意識を調べる調査を震災後2回にわたって行いました。詳しくはウェブを見ていただくとして、震災を受けて、原発事故を受けて、エネルギーに関する考え方、変わったという人が4人に3人おります。じゃあ30年後、少し先ですが「日本の望ましいエネルギーは?」というふうに見ていただくとですね、原子力に関しては、一番最近の調査、3か月後の調査ですが、3割が「ゼロにすべきだ」と。で、84%が「ゼロまたは減らすべきだ」ということをいっております。それに対して自然エネルギー。これはですね、96%が自然エネルギーを日本は増やしていくべきだということをいっています。これが国民の大きな意見であると思います。で、今回、3.11から3か月後の調査で、菅総理の、さきほど、お話、冒頭でいただきました、少なくとも20年代の早い時期に30%という、このお話をどう受け止めるか、ということで聞いたところ、約6割が肯定的な評価。否定的な評価を大きく上回っています。ということで国民の意見としてやはり原発は減らしていく、そして自然エネルギーは増やしていくということを望んでいることが分かるのではないかと思います。

じゃあ、そんなに簡単にエネルギー構造を変えられるかということもあるんですが、日本は30年ぐらいの間で大きくエネルギー構造を変えてきました。オイルショックがあって、官民挙げてシフトをして、変えてきた。今回も3.11ショックで官民挙げてシフトすれば、そんなに時間をかけずに変えていけるのではないかと思っています。世界の状況はどうかというと、これが風力発電、これが太陽光発電。ぐんぐんと伸びています。世界全体の電源の中で自然エネルギーは26%ですが、しかし一年間に新規に設置されたエネルギーを見ると、半分が自然エネルギーということで、世界の中での自然エネルギーの広がりが分かると思います。これに伴って投資が非常に増えているんですが、残念ながらこれが経済効果として日本に戻ってきていない。残念ながら日本のシェアは今どんどん下がってきています。

一方「日本の自然エネルギーはどれぐらい可能性があるのか」ということをよく質問されるのですが、風力発電だけでも全量買取制度が導入されれば原発40基分のエネルギーを生み出すことができる。「コストが高いんじゃないか」という話もありますが、実際には今言われているよりも原発はもっとコストがかかるし、自然エネルギーは今どんどんコストが下がっています。ということで、流れとして原子力、化石燃料と自然エネルギーのコストは遠からず交差して、自然エネルギーの方がずっと安くなる。世界のいくつかの国では既にこういう状況になっています。いずれにしてもどのエネルギーにしても、必ずコストがかかるわけなので、どこにコストをかけて、どういう未来をつくりだしたいのか、これを今、私たちが考えていく必要があることだと思います。

短期的な経済効率とかコストでなくて、たとえば地域活性化につながる。デンマークの風車は8割以上が地元に立っている市民のものです。だからお金が地域に戻る。そういった仕組みを日本にもつくっていくことで、単にエネルギーだけじゃなくて、地域の活性化も進めていくことができる。そのために大事なことが2つあると思っています。一つは、「再生可能エネルギー促進法」を早期に成立させていただきたいということです。もう一つは今回のように、国民の議論が反映される政治を、もっともっと進めていただきたい。ドイツは脱原発を決めましたが、これも国民との徹底的な議論がバックにあります。今回、そのオープンな対話の第1回という位置づけで、これから色々なテーマで国民が議論を起こしながら国が政治を進めていくことを望んでいます。以上です。

<司会・藤沢氏>
ありがとうございました。では続きまして、元サッカー日本代表監督の岡田武史さん、お願いいたしします。

<岡田氏>
はい。非常に専門的な素晴らしい提言のあとで、僕は実は何も用意せずに、体だけで来てしまいました。サッカーやってた中年のおっさんの意見として聞いていただければ。

今回の震災があって、おそらく、僕ら一般の人間は、さっき「永田町との乖離がある」っておっしゃってましたけど、僕もそう感じたんですけど、僕らは今まで知ってて、気がついていたんだけど見ないようにしてきたこと、「こんな豊かな生活ずっとやっていけんのかな」と。1900年に 15億だった地球の人口が50年後に30億、倍になって、また50年後に60億、今70億を超えようとしている。人口が増えるとともに地球が大きくなりゃいいけど、2050年から下がるっていわれてますけど、まだ40年ありますよね。「え、このままいって大丈夫なの? 中国とインドで約30億弱の人口がいますけど、それがこんな経済成長してて、大丈夫なのか?」と、みんなどっかで感じてたんですけど、「まあ、そうはいってもな」「とはいっても」と、見ないようにしてきたことを見ざるを得なくさせられたという感覚があります。要は本質を度外視できなくなった。水と石油どっちが大事なんだと。みんな分かってるけど「とはいっても」と言ってきたと。もうそれが通用しなくなったんじゃないかなと。

じゃあ本質ということでいうと、僕は環境活動を35年ぐらいやってるんですけど、富良野で倉本聰さんが作ってる「自然塾」のインストラクターをやってます。そこでは地球を1300万分の1にして、直径1mにして、という仮定でいろんなことをやるんですけど、空気の層、対流圏というのは1ミリの薄いもの、直径1mの地球では、薄ーいものなんですよね。実はその中のものは、水も空気も何も外に出ていかないし、外から入ってこない。閉じられたその中で色んなことが循環してんですよね。CO2が増えたっつっても、ご存知のように、Cの数はその中では変わらないわけですよね。CO2としてあるか、木の根っこにあるか、木の枝に炭素としてあるか、その中のものは何も変わらない。要はその中で循環していく以外ないって考えたときに、石油石炭、何万年もかかったものを、産業革命以降200年で燃やしてるわけですよね。それは僕は原発は循環しないから反対ですけど、ウランだって限りがあるわけですよね、必ず。循環しないですよ、プルトニウムになると。するとね、今はいいですよ。でも僕たちの子どもの時代、いつかはなくなるわけでしょう。ということは「今はいいから」じゃなくて、ともかく将来いつかはそういうものは全部なくなるわけですから、このままいったら。循環するエネルギーを、今から本当に全力をかけて研究してやっていかなくちゃいけない。

僕は「ゲイン」っていう再生可能エネルギーを2050年に50%までにすると政策提言するという任意団体をやったんですけど、それが本当にできるか、50%エネルギー消費を減らして、残りの100%のうちの50%にすると、それは分かんないですけど、できるかどうかは、そりゃあ無理だといったらできないですし、それを全力で取り組まないと子どもたちに申し訳がないんじゃないかなという気がしてます。今、失礼ですけど、マスコミしか知らないですけど、菅さんがお辞めになるとか、いろんなことが出てます。でも、もう、そういうことでなくて、絶対にこれは誰がやろうと、今、菅さんがこれを残していくと。ほんと、どんなことがあっても日本の将来、いや地球の将来のために、ここで何か、ずっとつながるものをつくるんだっていうぐらいのものをやっていただければと。非常に抽象的で申し訳ないですけど、これはサッカーをやってる中年のおっさんの普通の感覚だと思ってます。よろしいですか。

<司会・藤沢氏>
ありがとうございます。国民の代表の一人のご意見として(笑)、ありがとうございます。さあそれではお隣の、ap bank代表理事の小林武史さんにお願いしたいと思います。

【全文書き起こし】自然エネルギー普及への並々ならぬ思い!菅総理、孫社長ら参加オープン懇談会Part2に続く

書き起こし・文字起こし協力:@kobayashinaominさん、@gcynさん、ありがとうございました!

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