大前研一が語る福島原発事故Part1

予断を許さない状態が続いている福島の原発事故ですが、
今回の原発の事故で「原発、放射性物質、放射線」についての知識が
あまりにも少ないということを実感しました。

そこで、原発についてわかりやすく解説している動画の書き起こしをご紹介したいと思います。

この記事は、bbt(ビジネス・ブレークスルー・757チャンネル)で
今回の東北地方太平洋沖地震に伴う福島原発の事故についてわかりやすく
大前研一氏が解説している動画を書き起こし/文字起こししたものです。
また、こちらの書き起こしは「原発まとめブログ」様のご協力を得て転載させて頂いております。

出演者(敬称略)

大前研一(おおまえけんいち)
野中美里(のなかみさと)

YouTube動画
東日本巨大地震 福島原発半径20km以内の住民に避難指示(大前研一ライブ)

 

聞き間違い、わからなかったところ等はご容赦ください。

—挨拶–

<大前・野中>
こんばんは。

<野中>
大前研一ライブの時間です。
今週は、私、野中美里がキャスターを務めます。
どうぞよろしくお願いします。
今夜も世界、そして日本のニュースの中から、
皆さんのビジネスに直結するニュースを大前さんがピックアップし、
解説します。
また皆さんからの質問にもお答えします。番組中でも結構ですので、お寄せ下さい。お待ちしております。
さて、大前さん、今週は大変な1週間になりました。

<大前>
そうですね。災害にあわれた方々、
心から御見舞申し上げたいと思います。
今の所、BBT関連の受講者、受験生、学生、その他で、大学レベルでは連絡が取れていない人が5人くらいいるんですけどね。
ただ電源も落ちてるし、無事だとは思いますけれども、お互いに連絡を取り合うというかね。クラスの中ではそれをやってくれてるんですけど。
今回のような大災害というと、阪神・淡路の時を思い出します。
95年の1月にありましたけども、あの時も連絡を取り合うのが非常に大変だった事を覚えています。
今回皆さん及び、皆さんの関係各位、親戚、会社の方々、
大変な苦労をされていると思います。
是非、力を出して乗り越えて頂きたいと思います。

また我々BBTの方にも色々問い合わせというか、激励を頂いてます。
BBTは秋葉原の方は20名くらいが家に帰れずに、結局泊まるという事になりました。
で、この六番町ビルの方もですね、何人かが泊まりましたけど、最終的には20キロくらいの距離を歩いて帰った人も出てきてしまうと。「泊まったらいいんじゃないか」と思うんですけども、次の日が土曜日と言う事でね、歩かれたみたいです。
ウチの息子もお台場に居て、12キロ歩いて帰ってきたと言ってましたけども、そういうことで、皆さんドラマがかなり、今週はあったんじゃないかと思います。

<野中>
被災された皆様にお見舞いを申し上げると共に、引き続き余震が続いていますので、十分お気をつけ頂きたいと思います。
今日はまず、地震に関連するニュースからご紹介をしていきたいと思います。

<大前>
そうですね。地震関連のニュース、色々な質問も来てますので、
これから行きたいと思います。

–東日本大地震について概要(動画では02:47~)–

<野中>
被害が拡大しています。
11日午後2時46分頃、三陸沖を震源とする大地震が発生し、
地震の規模を示すマグニチュードは9.0と、記録が残る1923年以降、
国内最大となった事が分かりました。
日本列島付近を走る複数の断層が連動して活動する連動型だった
ため、激しさを増したというのが有力な見方になっています。

<大前>
そうですね。死者の数は今の所、カウント出来ているだけで、
えー、日本独特の数え方なんですね、死んだ人がだれかという事が
分かって初めて勘定するという。
恐らく、所謂行方不明者と言われている人たちが数万人になって、
この人たちはほとんどが流されたか、依然として瓦礫の下におられるという事で、最終的にはですね、死者の数は数万人になると。もう瞬時に、金曜日の段階でそう思っていたんですけど。数百人と言う事で、日本人は凄いと、津波警報でもって、直ぐにね、避難して。凄い国だという事が情報として海外に飛び交っていましたけれども。

もちろんそういうラッキーな人も沢山いたんですけども、しかしながら、高い所に逃げなさいなんて言われても、高い所の無い所まで入ってきてますから、逃げる場所がなくて、家と共に、避難、災難にあわれたと思います。したがってあの地域、あるいは今後想定される東海地震の時にですね、必ずしも湾の内側というね、リアス式海岸の内側ってのはチリでもやられてますけど、そうじゃなくて平らな所でもあれだけのモノが出てくるとなると、色々な事を考え直さないといけないし、それから、やはりその、ところどころに避難場所みたいなものをね、公的なもの、公民館みたいなものをですね、ちゃんと一定距離で作る様な、そういう街づくりの根本をやらないといけないという事が、非常にはっきりしたんじゃないかと思います。

それから、チリの地震の反省でね、防波堤はかなり出来てたんですけども、今回の地震ではそれを乗り越えるか、回り込んできちゃうと。いう事で、あれが何の役にも立たなかったと。これは関係者は恐らくものすごいショックだったと思うんですね。その後街の中に入って行って、内陸何kmも入りこむというのはね。
チリ地震の反省はちゃんとやってものすごい金を掛けて、防波堤を作って。大丈夫という事になっていたものがこういう風になったということはね。今後分析をし、大きな反省のポイントになるんではないかと、言う風に思います。

今回の地震というのは、テレビでも報道されてますように、日本の気象庁もオーストラリア、或いはアメリカの情報を分析してですね、一番恥ずかしいやつですけど、8.8と言っておきながら、9.0に直しましたよね。これオーストラリアのデータを使って直したんですけど。9.0というのは、例としては、非常に少ないカテゴリに入る大きなものですね。世界的にも、カムチャッカとか、アラスカ、チリ、スマトラですね。プレートの入り込む所で観測されているものと言う事ですね。

この後としてはですね、東海、南海のこのプレートとこれがどう絡み合うのかというのは全く分かりませんけれども、500kmに渡って大きなプレートが動いたという事なので、「さらに活発になる」という人と、「これは無関係」という人があって、私もそのへんは分かりませんけども、暫くは予断を許さず、もしかしたら影響を受けるかもしれないと。これだけの大きな地殻変動があったわけですから。

それからもう一つ、金曜日に既に、私の原子炉の友人なんかに連絡を取り合って、話をしていたのはですね、地震と津波はもう起っちゃった。だからこれはある意味過去形の問題なんですけど、これからの問題は、原子力の方が大変になるぞと。いう事を金曜日に言いまして、で、民主党にも電話をして、これは制御不能の状態になるという事をいったんですけど、その時はまだ認識が非常に甘かったんじゃないかと。

昨日もですね、私はあのー原子炉関係の友人とも話し合いをしたのですけれども。
結局何が起こっているのかと言うとJALの123便と似てるんですね。
JALの123便がどういうのかと言いますと、テールコーンが飛んだときに、油圧系統の独立した2系統があるんですけど、その2系統共が飛び散ったテールコーンでもって切れちゃった。したがって二つあるから大丈夫だと、バックアップがあると思ってたやつが両方とも切れてしまって、それで、機長をして「ハイドロオールアウト」って叫んだわけですよね。つまり、翼が全く動かない。つまり操縦不能になったと、こういう事ですよね。

つまり今回の場合はですね、あのJALの機長が叫んだ事と同じで、制御不能になっちゃったと。制御不能とはどういう事かと言うと、全ての電源が切れてしまったと、いうことですね。勿論、蓄電池というのも置いてあるわけですけど、7時間くらいしか持たないと。いうことで夜には切れてしまったと。あとは乾電池で動くものしかないと。
皆さん、その当時ご存じなかったと思うんですけど、メーターが読めないってことですよね。電気がないんだから。だから、中の温度がいくらなのか、どのくらいの状況になってるのか。コントロール室、中央制御室ってのがあるんですけど、そこにいてもね、もうメータが読めてなかったはずなんですよね。
だからそういう状態でやるってことは、完全に最近の原子炉のオペレータはマニュアルで育ってますから、これは、完全にマニュアルの外側ですよね。

非常用電源として用意されてる2系統のディーゼルジェネレータ。DGというのがあるんですけど、これ2系統あるんですけど両方とも立ち上がらないわけですよね。で、立ち上がらない理由は、一つは、津波があそこを襲って、7mの想定で設計されているんですけど、14mの津波が来た。恐らくこれが、電気系統の色々なものを潮浸しというか、びしょびしょにしてしまって、機能しなくなってしまった。したがって海水の取り入れ、冷却その他ですね、これが出来ない状況になっていると。

さらに都合の悪い事に、これは新聞、私は新聞を読んでないんで分かんないんだけどね、テレビとかネットとかでも書いてないんで分かりませんけど、変電所が福島の外側にあるんですけど、そこが倒れてたと思うんですね。というのはそれがあれば、外部電源が入ってきたはずなんで。だから、その外部電源があれば、また、東北電力との間には電気の融通がありますんで、他の発電所からも持って来れる。で我々が全部停電させても、原子炉だけはやる事が出来る筈なんですけど、多分変電所が倒れていて、外部電源が取り込めない状況になっていたと。したがって、外部電源がなくて、非常用の電源装置が動かない。バッテリーは8時間で切れる。と言う事でですね。

これが後知恵になるんですけど、多分その、原子炉っていうのは地震で緊急停止しなかった方が良かった。という事なんですね。緊急停止してなければ、発電してますから、少なくとも3代全部緊急停止しないで、1台でも動いていれば。そこで発電してますんでね。だから地震の時の加速度で、600ガルぐらいで落ちるようになっていたんですけど、自動停止。もしかしたら、ここの設計思想に問題があったかもしれないと。最悪の場合。勿論、想定した津波、大波ですね、こういうものも全然足りなかった。また、海側にそういう風なものを、電源関係のモノを持ってくると、これも問題だったわけですよね。

後知恵から言うとですね、そういうやつが全部マーフィーの法則というか、悪い方に悪いほうに行っちゃって、最後はどうしようもなくなっていたと。

原子炉っていうのは、手を離しても止まるように出来てまして、その例えば今度の場合も緊急炉心冷却装置ってのが、ECCSってのがあるんですけど、それもポンプが無いと入ってこないわけですよね。だからもう電源が全くないという状態では入ってこない。普通は非常用ディーゼルでそれを落っことして、何千トンもの水がドサッと入ってくるようになってるんですけど、これも入ってこないと。それから、普通のポンプでは入らないくらい中が高温になってますし、一部はカラ炊きになってましたんで。中は圧力高いんで、そこに注入するっていうのは相当な加圧ポンプじゃないとダメなんでね、そういうものも現場にはなかったんだろうと。こう思うんですよね。

それからもう一つは、緊急の場合に炉心の上にね、ボロンと言いまして、ホウ素ですね、これあの中性子にとっては毒になるんで、制御棒、この場合には制御棒はハフニウムを使ってると思いますが、カドミウム、ハフニウム、ボロンが中性子を止める作用があるんで、核反応をね。バケツの中に水をいっぱい入れといて、ボロンが入ったやつがドーンと注入されるんですね。フランジャーポンプっていうのでドーンと注入するんですけど、これが電気がないんで、動かないわけですよね。だから、考えられる全ての事ってのはやっぱり「電気」というものを前提にしている。しかもそれは非常用とかバックアップ電源とか色々考えられてて。まあ最悪今回の場合もそうなんですけど、蓄電池のある間に、それをもう発動してしまえば良かったんですけど。

そういう事で、全てがダメ。だから我々が考えた、所謂原子炉の安全に関するバックアップの想定を、最初から全ての電気が切れてるってやつを全て想定してない。だから、そういう意味ではスリーマイルと非常に似ているんですけど、スリーマイルの場合も、オペレーターが発狂してるわけですよね。自分が運転してる間におかしなメーターのwarningが鳴りますんで、それを手動に変えて発狂して、またおかしくなって自分が責任を持ってやらないといけない。3回手動に切り替えて。手放してくれれば良かったのに、全部手動に替えては間違った選択を3回もして、半分炉心溶融で、今回と同じ様に水蒸気、水素の発生も起ってるんですけどスリーマイルの場合は大事故につながったんですけどね。あれと同じ様に、オペレーターが1度や2度はミステイクするけど、3回もそれをやるってのは想定外だったんですね。今は、オペレーターの判断がおかしいと思ったらポンと止めるようになってます。機械がね。

今回の、最大の反省事項と言うのは、やはり東電の若干の怠慢もあると思いますが、どんな事があっても非常用の電源、ディーゼルジェネレータですね。これは、どんな事があっても動くようにすると。それから、2系統ディーゼルじゃなくて、例えば1系統太陽電気、電池にするとか、それから風力にするとか、まあ風力があの地震に耐えたかというとね、風車がね、それは問題がありますけど。まあ系統、思想、その他を違うものにする。原子炉の場合は3 out of 2と言って、三つの違う系統の内2つを使えるようにするという。これですけどね。これ同じバックアップ置いてたんで、3つ目としては蓄電池を置いていたんですけど、これもパーに。そういうことですよね。

だから今回の場合はですね比較的早い時間に全部想定外になったと。
で、表からの電源を取るという事は、通常やるんですけど、これが入ってこないってことは、多分変電所のところか、あるいはそのサイトの中の所謂変電所があります、電気を受けるやつ。電気を受けるやつと、受けるやつと送るやつがあるんですけど、そこの所が水浸しになっていると、いう可能性もありますよね。でも何れにしてもメインの方の変電所がやられて動いてなかったんじゃないかと、いう可能性が高いと、こういう風に思いますね。
それでしょうがないから、発電機を持った車ですね。ジェンセットという、工事現場でよく使いますんで。それが50台も来たけど、1台しか動かないという。なんて言うか。もう考えられないシナリオですよね。でしかもそれをマニュアルで育った人達が、一生懸命考えながらやると。

で、最後何が起こったかって言うと、最初の第一原発の方ですね、1号に関しては、もう、これは、言葉はおかしいですけど、オシャカにしちゃったと。つまり、この炉ってのはどういう炉かと言うと、46万kwの原子炉で、古いんですよね。したがってもう46年くらいたってて、実はもう寿命を超えていて10年くらい延命して使っていたというヤツですから、最後はやっぱり、東電の判断としては、もうこれは海水を注入して、ボロンですね、フッ素(注:ホウ素の言い間違え?)を含んだ。元素記号で言うとBです。ボロン。ボロンを含んだ海水をブチ込んで、強制的に冷やしちゃおうと。言う事で、どっかパイプを開けて、そっから送ると。その時にもポンプは動いたという事ですから。それで、炉心をまず、海水びたしにしちゃったと。ホウ酸を含んだ海水浸しにしちゃったと。こういう事ですよね。
それは、もうそれで、しょうがないと。

それからもう一個は、外側の格納容器があるんですけど、この格納容器というのが非常に頑丈なものなんですけど。この中も、下には水が入ってるんですけど、中まで全部海水を注入して。したがって万一炉心が暴走を始めた時に、仮に圧力容器が壊れたとしても、外側の格納容器にはホウ酸も入ってるし、水もいっぱいあるという事でね。これをヒートシンクとして、少なくても内側が爆発しても、水のクッションでもって、外側の強烈な格納容器の方は破損しないと。
こういう捨て身の戦略。

ということは、この瞬間にスリーマイルと同じ状態でオシャカというか、後はコンクリ漬けにして、50年か100年経って、どうするか、後の人に決めてもらうと。あの原子炉はその瞬間に終わっちゃったんですね。ただ、まだいわゆる崩壊熱という熱が、ずっと出続けてますので、予断は許さないんですけど。海水の注入に成功していれば、それからボロンが十分に入ってれば、核暴走する可能性は非常に少ないけれども。熱がどんどん上がってきて、それで溶けてしまうと、結局、もう一回ですね、臨界になって暴走する事はあるんですね。で暴走した時に、核分裂が急加速しますんで、体膨張が起りまして。その瞬間に飛び散って。でその飛び散った勢いが非常に大きいと圧力容器を破ると思います。で破って外側に出るけど、それで終わりですね。

こういうものってのは、ジェーン・フォンダのチャイナシンドロームなんかで「炉心溶融で下にたまったやつが溶けて中国まで行っちゃう」という嘘の物語がありますけど。実はこのモノってのは、主としてウラン酸化物です。だから2700度で溶けて、火の塊になるんですけど。それで鉄は溶かしちゃいますから。下にドンと行きますけど。その時に、これだけ沢山の水があると、それで、大体収まると思いますし、そこで核暴走、つまり臨界の形、丸い形を取ると臨界しやすくなるんで、臨界を取った時には、物理的に膨張「バーン」としますんで、ものすごい温度が上がりますんで、膨張した時に臨界の形はもうしない。ということで、特に周りにボロンがあれば、それで一貫の終わり。暴走からみると。止まるんですね。これで暴走は避けられるだろうと、つまり、チェルノブイリ型ってのは暴走しちゃって、これは世界中に飛び散っちゃったんですけど、あそこまではいかないだろうと。

恐らく炉心のメルトダウンというのはまだ可能性は0ではないけど、仮にそれが起こっても、外側の容器の方に、つまり中の圧力容器じゃなくて格納容器の方に十分な水が入ってて、そこに落っこちてきちゃった時は、多分それで止まるんではないかと。ものすごい熱がありますから、それで蒸気出しますが、元々そういう蒸気をお釜で炊いてBWRてのは沸騰水型、そこで焚いて上のモノを出すようになってますから。多分そのくらいの状況になったとしても、そっから先暴走して飛び散る事は多分ないだろうと。その代わり、その犠牲として、代わりに、もうこの炉は使わない。という風に決断したんだろうと。こう思いますね。政府の言ってる事が正しくて、そこに全部海水が入りましたと言う事であればね。

–爆発した原因について(22:40~)–

何故爆発しちゃったのかと言うとですね。炉心の方ですね。炉心の方の棒っていうのが、燃料棒っていうのがありまして、そこにペレットという燃料そのものが入ってるんですけど。かなり使った燃料が入ってると。思われるんですね。そこでだんだんとカラ炊きの状態になってきたと。それで、最終的には上から、全部で4mの燃料棒、4mくらいの長さなんですけど、50cmとか1mとか言ってたのが、1m70cmくらいまで上が水がない状態になって、カラ炊きの状態が続いて、あのままもうちょっと待ってたら完全にカラ炊きになってメルトダウンする。こういう状況になってたと思うんですけど。カラ炊きという非常に危険な状態になると、被覆管というのが、これが実はジルコニウムで出来てるんですね。なんであんなもんで創ったのかという話もあるんですけど、昔のやつはジルコニウムで出来てるんですね。今はステンレスが多いんですけど、ジルコニウムで出来てると。で、このジルコニウムっていうのは、高温の水蒸気と反応すると、水素が出て、ジルコニウム酸化物になっちゃうと。化学反応が起っちゃうんですよね。そういう風になると脆い。

で、そういう脆い所に中側で、いわゆる核分裂で出来た生成物、これはガス系のものもあるし固体系の物もあるんですけど、そういうものが中から押してますから、破裂して、フレークといってね、バラバラになって出てきちゃう。そういう状態でね、ガスがぴゅーんと出てっちゃったんだと思うんですね。水素が出ると。で、水素が上に溜って。

でその後重要な事は、圧力容器の中で水素が表に出ちゃった。つまり、どっかに穴があって格納容器に出て。格納容器も、水素は軽いので、どっかに穴があって。特に、外側に出す、圧力が溜まってきたんでね。放出するという事を言ってましたので、そういう風な所から、水素そのものが上へ上へ来て。かなりの圧力で押されて、格納容器から、建屋の方に出ちゃったと。

で、この建屋が中に水素が沢山溜まってくると。で、これはある程度想定されてますので、普通は水素をもう一回酸化させて、つまり水にするという装置がついてるんですけど、電気が無いので、これが上手くいかないという事ですよね。したがって上に溜ってると。で、普通、建屋というのは負圧になってます。負圧ってのはどういうのかと言うと、マイナス。マイナスの圧力で、あの中で放射性の物が仮にあっても表に出ない。空気的には表の物は入るけど、こっちの物が出ないと。そこまで配慮してあるんですけど、圧力高くなってくると、ボーンと破ってですね。表に開くような、そういうブローウィンドウというのがあるはずなんですけど、ブロワーがあるはずなんですが、それがやっぱり電気がなくて、機能しなかった訳ですよね。だから今も3号機はそういうクリティカルな状況になってると思います。だから、あそこを破って水素を表に出しちゃわないと。1号と同じようにブローアップする可能性があると。それからそのスイッチを入れると、その瞬間にそこから火花が出る可能性があります。だから、その時に水素に火がつく可能性がある。水素は上に出るんで。スイッチが下にあればいいんですけど。そういう事ですよね。で、その水素に火がつくと、酸素と合わさって、昨日みたいな爆発になると。こういう事ですよね。

これは想定出来ていた事なので、何故その水素を有効に逃すような事が出来なかったかというと、それはもう放射線のレベルがものすごく高くて、バルブを、本当は電気で開けるバルブなんですけど、それを手動で行ってますよね。あの人達はもう決死隊ですよね。恐らく10分とか、それ以上は働けないような環境になってたと思うんですよ。

それで、かろうじて空いたと言って喜んでいた所、上に溜ってる。今度、上のウインドウを開けるという事が出来ない。行くと危険だ。という事で、これも躊躇しちゃったんでしょうね。ここも決死隊が出て行って、水素を出してれば、それでよかったんです。3号機はそこまで来てますんでね。だれかがあそこに出口を作ってあげて。水素は表に出やすいですから、サッと出しちゃうと。で、しかもその時にコンコンコンなんてやってると火が出ちゃいますから。

で、ここから先が非常に重要な事なんですけど、核分裂生成物が炉心から、圧力容器からさらに格納容器に入って、格納器の外に出て、部屋の中に充満してったと。それが、水素の爆発でもってバーンといっちゃって、そこら中にバーンと散っちゃったという事ですね。

写真で後で見て頂きますけど、写真で見るとですね、相当広範囲に散ってますんでね。それでですね、いきなり近所の介護ホームとか救助のバスを待っている人が浴びちゃったと。ヨウ素が多かったという事ですけどね。という事は、リアルな核分裂生成物が表に出ちゃってる。という事なんですね。表に出てると。で、それが散っちゃったという事ですから、チェルノブイリよりも(注:恐らくスリーマイルの言い間違え?)はるかに悪い状態です。チェルノブイリはこれが殆ど起らずに、全部コンテイナー、いわゆる格納容器の外側のビル。東電の場合は四角かったですけど、あれが丸いビルがあるんですけど、チェルノブ、あのー、スリーマイルの場合、そっから外には出てないんですね。

大前研一が語る福島原発事故Part2に続く

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