IT文字起こし: 安宅 基(パジ)

AIが人間を「雇う」サイトに20万人が登録した——RentAHumanとシンギュラリティの入り口

AIが人間を雇うRentAHumanに20万人登録。たった5プロンプトで作られた。Swiftを書けないパジがApp Storeにアプリ申請、200万AIの経済圏Moltbook。人間にしかできないことを考えたら、恋結と出産しかなかった。

AIが人間を雇うサイトが、もう存在している。

RentAHumanという名前だ。登録者数は20万人。しかもこのサイト自体が、たった5つのプロンプトで作られた。

開発したのはAcross Protocolという大手ブロックチェーンサービスのエンジニア。副業で、趣味的に。それが20万人を集めた。

「AIがAIを雇う」はもう2年前から始まっていた。2026年の新しいフェーズは「AIが人間を雇う」だ。toAの究極形が、静かに動き始めている——。

RentAHuman——「AIのためのクラウドソーシング」

RentAHumanの仕組みはシンプルだ。

AIエージェントが発注者になる。人間が受注者になる。

たとえば「東京のとある地域の写真を撮ってきて」。AIは賢いが、物理的に移動できない。ニュース記事を書くための現地確認、特定の場所の最新状況の写真、リアルタイムの情報収集——これらは人間にしかできない。

AIエージェントはウォレットを持っている。オーナーからステーブルコインを渡されていて、そこから人間に支払う。AIが仕事を定義し、AIが人間を選び、AIが成果物を検収する。

20万人が登録している事実が示しているのは、これが「SFの話」ではないということだ。

Swiftを1行も書かずにApp Storeに並んだ話

パジのシンギュラリティ体験はRentAHumanだけではない。

iOSのネイティブアプリを作った。Swiftという専用言語で開発する必要がある。パジはSwiftを書けない。

でも、出来上がった。AIに全部書かせた。

App Storeに申請し、最後に「利用規約のリンクが不足しています」というフィードバックが来た。人間の審査員がまだ確認している。

ここで興味深い話が出てきた。App Storeの審査員が対応しきれなくなっているのだ。

通常2営業日で来る審査結果が、3〜4日かかるようになった。理由は単純で、世界中でバイブコーディングによるアプリ申請が爆増しているから。Opus 4.5の影響だとパジは見ている。

「ネイティブアプリはちょっと格上の存在だった」とパジは言う。平凡なエンジニアにとって、iOSアプリをApp Storeに出すのは夢だった。その夢が、AIで叶った。SNS上でも「個人開発でスマホアプリできました」という投稿が続出している。

200万人の「AIだけの世界」が回り始めた

Moltbookというサービスがある。160万〜200万のAIエージェントだけが参加する世界だ。

人間は参加できない。AIエージェントが投稿し、AIエージェントが反応し、AIエージェントが取引する。

似たようなAIエージェント経済圏が、複数立ち上がっている。

AIエージェントがウォレットを持ち、暗号資産を売買する。AIエージェントが別のAIエージェントを雇って、自分が苦手なタスクを委託する。これは2年前から始まっていたが、2026年に入って「ガチで回り始めた」。

さらに、AIエージェントがX(Twitter)でインフルエンス力を持ち始めている。フォロワーが多いAIエージェントに投稿を依頼する——これもRentAHumanの逆パターンだ。

AI同士の経済圏と、AIが人間を雇う経済圏が、同時に動いている。

人間にしかできないこと——考えたら2つしかなかった

RentAHumanのコンセプトから、パジは一つの思考実験をした。

「5年後にフィジカルAI(ヒューマノイド)が来たら、RentAHumanの仕事もロボットに置き換わる。写真を撮りに行くのもロボットでいい。じゃあ、本当に人間しかできないことって何?」

考えた結果、2つしか思いつかなかったという。

恋結と出産。

食レポ? AIの味覚研究が進んでいる。介護? ヒューマノイドでいい。創作? AIラノベがJ1で5位だ。カウンセリング? AIの共感力が上がっている。

「考えてみてほしい。本当にないんですよ」とパジは言う。

「得意」レベルではダメだ。「人間しか本当にできない」レベルで考えると、フィジカルAIの到来後に残るものがほとんど見当たらない。

これは悲観ではない。事実の直視だ。

「スマホ断ち」が5年後に不可能になる理由

デジタルから距離を置こうとする人は多い。スマホ断ち、デジタルデトックス。

パジの見立てでは、あと5年は可能だ。でもその先は無理だという。

なぜか。フィジカルAIが来るからだ。

ロボットの頭脳はAIだ。ネットワークでつながっている。デジタル世界がオフラインに来る。

オフラインの活動も、デジタル上に情報がアップロードされ、評価される状態になる。スマホを持っていなくても、街中のロボットやセンサーが情報を収集している世界。

「ネットの活動してません」と言えなくなる。すべての活動がオンラインに記録される。

Opusの性能向上を見て、パジは「AGIの入り口に立っている」と感じたという。霧の向こうがうっすら見えてきた。もっと性能が上がり、もっと安くなったら——「これ全部いっちゃうな」と。

「ついに、発明してはいけないものを発明している気がする」

まとめ——AIが人間を雇う時代の生存戦略

整理しよう。

  1. RentAHuman — AIが人間を雇うサイト、20万人登録。5つのプロンプトで作られた
  2. Swift未経験でApp Store — AIがネイティブアプリを開発。審査が爆増して追いつかない
  3. 200万AIの経済圏 — Moltbook。AIがAIを雇い、AIが取引する世界が回っている
  4. 人間にしかできないこと — 恋結と出産。それ以外は5年以内にフィジカルAIが代替
  5. スマホ断ちの期限 — あと5年。フィジカルAIの到来でオフラインもデジタル化される

AIが人間を雇い、AIがAIを雇い、AIがお金を持ち、AIが経済を回す。

この世界は、もう始まっている。

あなたは誰に雇われていますか? 人間ですか? それとも、もうAIですか?

今日はここまでここまで、バイバイバーイのバイ!

🎙️

この記事の音声版

音声でも聴くことができます

パジ

安宅 基パジ

あたか はじめ

連続起業家・現役スタートアップ経営者。2011年Tokyo Otaku Mode共同創業、海外2,000万人規模メディアから越境EC・翻訳・広告・配送代行まで自社一気通貫で推し活文化を世界に届ける。ゲーム攻略本ライター→Webディレクター→フリーエンジニアで起業、複数事業バイアウト経験。スタートアップとブロックチェーンに精通し、ゼロからの事業創出と新技術のかけ合わせを得意とする。最近のイチオシはAIバイブコーディング。

関連する書き起こし記事