編集部注:本記事は、パジ(安宅基)が2025年3月にVoicyで配信した「AI自動開発の実践を具体的に話してみる」の書き起こしを再構成したものです。AI分野は変化が非常に速く、ここで触れるManusやClaude 3.7 Sonnetといったサービスの仕様・性能は、配信当時(2025年3月)のものです。今読むと「もう当たり前」になっている話も含まれますが、パラダイムシフトが起きた瞬間の空気をそのまま残しています。
「とりあえずManusに投げれば、勝手にアプリが出来上がる」。
——半分は本当で、半分は嘘なんですよね。
丸投げした人ほど、エラーの沼で止まる。逆にスマホ1台でシステムを量産している人は、AIに投げる前に「ある一手間」を必ず挟んでいます。私はこの2025年3月のたった1週間で、前から課題に感じていた問題を解決するシステムを2つ作りました。ManusとClaude 3.7 Sonnet、そしてGeminiやGrok 3のディープリサーチ——無料かそれに近い低コストで、もうここまでできてしまう。私がたどり着いた手順を、「二段ロケット開発」という形で全部話します。
2、3行の思いつきが、欲しがられるプロダクトになる時代
まず、今がどういう局面なのかを共有させてください。
ここ1週間ほど、私はAIの自動開発にどっぷり浸かっていました。Manus、Replit、Claude 3.7 Sonnet、GoogleのGeminiのディープリサーチ、Grok 3のディープリサーチ。あまりにも多くのAIサービスが、無料、もしくはかなりの低コスト化で、相当なことをやってのけるようになってしまったんですよね。
何がすごいかというと、入り口のハードルです。
「こういうのを作りたいんだけど」と、相当に荒い状態で、2行3行ぐらいの文言を投げかけるだけでいい。するとAIが勝手に話を膨らませてくれる。「これをシステム化したら自動的に便利になりますよね」「もしこれが世に出たら、有料でも欲しがる人がいるんじゃないですか」——そんなふうに、こちらの思いつきを、プロダクトやWebサービス、アプリの輪郭にまで育ててくれる。
もうそれぐらいの感覚になってきているんです。
私はこれを、2、3年前に予感していた時代のフェーズが、ようやく来たな、と受け止めています。AI自動開発に関しては、後追いでも全然いい、でも今のうちにやっておいた方が絶対にいい。飛び乗るなら今かな、というぐらいの大きなパラダイムシフトを感じているところなんですよね。
あえての「スマホ1台」縛りプレイ
ここで、私の個人的なこだわりを白状しておきます。
私は開発を、パソコンやノートでやりません。タブレットも使わない。完全にスマホ1台でどこまでできるか、という縛りプレイを自分に課しているんです。
なぜそんな面倒なことをするのか。
それは、「どれぐらい便利になったか」の指標を測るためなんですよね。スマホ1台、親指だけで完結するなら、それは本当に誰でもできるということ。道具のパワーに頼っていない、純粋な手軽さの証明になる。だから今回も、あえてのスマホ1台縛りで2つのプロダクトを作りました。
使ったのは、主にManusというAIエージェントです。
ただし、ここは正直に留保しておきます。Manusは中国産ということなので、少し気をつけながら使っています。機密性の高いものをいきなり本番で扱うのではなく、ある種サンプル的に、公開されている情報をもとに作るにはちょうどいい——そういう距離感で触っているんですよね。便利だからこそ、どこに何を渡すかは意識しておいた方がいい。
本題:丸投げが失敗し、二段ロケットが成功する構造
さて、ここからが本題です。
多くの人がやりがちなのは、「作りたいもの」をいきなりManusに丸投げすることです。気持ちはわかります。最先端のエージェントなんだから、全部やってくれるはずだ、と。
でも、私はそうしません。
私のやり方は、ロケットの打ち上げに似ています。一段目で大気圏を抜け、切り離してから二段目で軌道に乗せる。一段目がClaude 3.7、二段目がManus。この順番と切り離しが、丸投げとの決定的な違いなんですよね。
一段目:Claude 3.7に「仕様書」を書かせる
最初にやるのは、Manusではなく、Claude 3.7 Sonnetに頼むことです。
頼み方にコツがあります。「あなたはその道20年30年の戦士で、プロフェッショナルですよね」と役を与える。そのうえで、「これから新人のエンジニアに渡すために、細かく定義されたプロダクトの仕様書・設計書・機能一覧をまとめてください」とお願いするんです。出発点は、たった2、3行の「こういう問題を解決するサービスを作りたい」だけでいい。
するとどうなるか。
ものの数分で、1万文字まではいかないにせよ、数千文字規模のざっくりした仕様書が出てきます。これを一つひとつ漏れなく読んでもいいんですが、長すぎるときは「要約して」とClaudeに頼む。さらに「これを要約して、ハイライトだけに絞り込んで」と重ねる。そうやって圧縮されたものをレビューするんですよね。
「内容的に合っているな」「この機能が足りないから足しておいて」。そうやってもう一度ブラッシュアップする。ここまでが一段目です。
二段目:磨いた仕様書をManusに投げ込む
仕様が固まって初めて、それをManusに投げ込みます。
Manusはエージェントとして、今おそらく最先端を進んでいます。投げ込むと、本当に10分、20分ぐらい帰ってこないことがあるぐらい、開発タスクを完全に自動で動かしてくれる。コーディングまでやって、Pythonファイルまで書いてくれるわけなんですよね。
私が今回やろうとしていたのは、一定間隔でプログラムが自動的に起動して、別のプログラムと連動しながら、とある作業を完了させる——そういう仕組みでした。
いきなり全部を作らせるのではなく、まずはミニマムな機能開発から始めるのがポイントです。本格的な定期業務に入る前に、「このプログラムが期待通りに動くか」という最小単位で試す。たとえば——これは今回実際に使ったわけではないんですが——「Xの自分の投稿のAPIを呼んで、最新100件を分析する」みたいな依頼があったとします。その場合、まずXのAPIとシステムが接続できるよう設計し、管理画面でAPIキーを取得し、今回はGitHub上で秘密鍵的なものを安全に管理する仕組みを用意したうえで、APIを叩いて100件を取得する。そこが動くかをテストしていくわけです。
切り離しと再点火:エラーは「もう一段目」に戻す
ここで、二段ロケットの真骨頂が出ます。
一発で正しいファイルが出てこないことは、当然あります。構文の間違いなどでエラーが出る。そのときはまず、「エラーが出てるけど直して」とManusに戻す。するとManusがもう一度確認し直して、「この点が間違っていました」と修正してくれる。
それでも解決しないときが、勝負どころなんですよね。
その場合、私はそのエラーをClaude 3.7の方に投げます。すると、Claudeが多角的な視点で修正案を出してくれる。それをまたManusに投げ込むと、さっと修正が完了して、無事にシステムが仕様通りに動き出す。
一段目(Claude)で設計し、二段目(Manus)で実装し、詰まったらもう一度一段目に戻して再点火する。この往復こそが、丸投げでは絶対に再現できない部分なんです。
フレームワーク:個人がAI自動開発を回す4つの条件
ここまでの実践を、私なりに構造化しておきます。
単なる手順の話ではなく、「これが揃っていれば個人でも自動開発が回る」という4つの条件として整理すると、こうなるんですよね。
- 条件1:丸投げしない(二段構成にする)——作りたいものを直接エージェントに渡さない。まずClaudeに仕様書を書かせ、磨いてからManusに渡す。設計と実装を分けることが、すべての土台です。
- 条件2:最小単位から始める——いきなり完成品を狙わない。「この機能が単体で動くか」というミニマムなテストから積み上げる。動く部品を増やしていく感覚です。
- 条件3:エラーを別のAIに往復させる——詰まったらManus内で粘りすぎない。Claudeに投げて視点を変え、その答えをManusに戻す。AIを1つに依存させず、相互補完で抜ける。
- 条件4:人間の役割を「外部接続」と「最終判断」に絞る——APIキーの取得、GitHubでの鍵管理、セキュリティの最終チェック。今この瞬間に人間が担うべきは、コードを書くことではなく、外の世界とのつなぎ込みと、品質の見極めだけです。
この4条件を押さえておくと、新しいAIサービスが出てきても「どこを任せて、どこを自分で握るか」の判断がぶれなくなります。道具は変わっても、この骨格は当分変わらないと私は見ています。
「コードを読まない」リスクと、その潰し方
正直に、弱点も話しておきます。
この進め方は、ソースコードの中身を完全には把握しないまま前に進む、ということなんですよね。だから、セキュリティが極めて重要な開発については、このやり方はあまりおすすめしません。そこは線を引いておくべきです。
ただ、一定のセキュリティレベルでよければ、面白い手があります。
出来上がったファイルをダウンロードして、それをClaudeに投げ込むんです。「ここにセキュリティホールはあるか」「どういう点に注意すればいいか」と。すると、人間が今から学習して身につけるよりも、はるかに高い精度で——おそらく80点、90点ぐらいのレベルで——セキュリティホールを潰したコーディングにまで持っていける。守りの部分すら、AIに点検させられる時代になっているわけです。
そもそも、「GitHubやXのAPIの設計の仕方がわからない」という人もいると思います。私もそうでした。でも、それも問題になりません。
画面のキャプチャを撮って、「この機能やメニューはどこにあるの?」とClaudeに投げ込む。すると、ほとんどの確率で、すぐに正しい情報が返ってくる。その通りに実践していけば、完全にゼロからのスタートであっても、かなりのシステム開発ができてしまう。
必要なのは、技術力そのものよりも——やりたいことと、諦めない心。今の段階では、まだそれが効くフェーズなんですよね。
3ヶ月、半年で「小学生の課題」になる
最後に、ここから先の予想を話します。ここからは私の読みであって、確定した事実ではない、と断っておきますね。
今回お話ししたなかで、「結局けっこう人間が動いてるじゃん」と感じた方もいると思います。APIの設計、鍵の管理、エラーの橋渡し。確かに、まだ人間の手は残っている。
でも、ここがポイントです。
その「人間が動いている部分」こそ、これから3ヶ月、半年で、ほとんどがAIによって自動化されていくと私は見ています。そうなると、最初に言った「2、3行のやりたいことを出す」というところさえやれば、あとは全部AIが引き取る、という世界になる。
想像してみてください。
もしClaude 3.7とManusが合体したら。さらにそこに、Replitのようにスマホアプリで全部デプロイまでできるサービスが合流したら。本当に、世の中が変わってしまうぐらいの劇的なインパクトが出るんじゃないか。「アプリを開発してみよう」が、小学生の夏休みの課題レベルにまで落とし込まれる——そんな3ヶ月、半年になるんじゃないかな、と本気で思っているんです。
だからこそ、もう一度言わせてください。
飛び乗るなら、今です。完璧なコードを書ける必要はない。あなたの中にある「2、3行の、こういうのが欲しい」という思いつきを、今日、AIに投げてみること。その小さな一歩が、半年後に景色を変えているはずです。
今日はここまでここまで、バイバイバーイのバイ!