編集部注:本記事は、パジ(安宅基)が2025年5月(ゴールデンウィーク)にVoicyで配信した「AGI時代の中盤以降は読めない」の書き起こしを再構成したものです。時期の表現は配信当時のまま残しています。未来予測を扱う内容のため、文末に2026年7月時点の「答え合わせ」を編集部追記として付けました。
「AGI時代の攻略法」は、もう出回っています。スキルを磨け、発信しろ、ブランドを作れ。
——ただ、それが効くのはたぶん序盤だけです。
中盤以降は、序盤の頑張りが「結果的に特に何の意味もなかったよね」という展開すらあり得る。私はこれを「二度目のコモディティ化」として考えています。一度目はスキルが溶け、二度目はブランドが溶ける。今日は特に結論のない話なんですが、このAGI時代の「序盤」と「中盤」の話をしていければなと思います。
序盤はもう始まっている——ただし、デジタルの中だけ
2025年のゴールデンウィークのさなか、私はAIの進化速度にずっとおののいています。後から振り返れば、ChatGPTのo3の完成度と万能感あたりが「あれがプレAGIの始まりだったよね」と言われるんじゃないか、というぐらいの総合力。バイブコーディングでテキストを打ち込むだけでサイトやシステムが本当にできてしまう体験と合わせると、少なくともオンライン上・デジタル上では「経済活動を自律的にこなすAI」はもう出現していると言っていいと思うんです。
一方で、世の中を見回すとどうか。フィジカルの世界に大きな変化はまだ見えないし、スマホをいじっている人の多くはAIではなくゲームやYouTube、TikTokのショート動画でエンタメを消費している。AIで生活や仕事を生産的にしようという人は、まだほんの一握り。
つまり、例のキャズムの谷が見え隠れしているんですよね。イノベーターとアーリーアダプターが市場を開拓して先行者利益を取る序盤が、1〜2年なのか数年なのか、まず続く。リソースやブランドをすでに持っている人・組織がAGIを活用すれば、使わない側に10倍100倍の差をつけて市場シェアを塗り替えられる——それが序盤の風景です。
第一波:スキルが溶ける
AIの得意分野は、テキストを書く、コーディングする、Webリサーチをする、といったところからどんどん確立されてきています。中でも象徴的なのがバイブコーディングの先にある「スーパーコーダー」の誕生で、スーパーエンジニア級の能力がサービスとして誰でも使えるようになると、エンジニアリングやプログラミングのスキルでは世の中に差がつかなくなってくる。
だとしたら、と続くわけです。開発スキルを磨くより、営業力、マーケティング、そしてパーソナルブランディングにリソースを張り替えたほうがいい。どうせ数か月〜半年でコーディングスキルはコモディティ化するのだから——そんな言説が、海外からも聞こえてくるようになりました。
実際、序盤ではこれがかなり効くはずです。同じ商品・サービスがあったとき、誰が作っているのか、どの会社が打ち出しているのか。ナラティブとストーリーとブランドが差別化要因になることはもう明白で、YouTubeなどを舞台に「パーソナルブランディングの超戦国時代」に入っていると思っています。
第二波:ブランドも溶ける
ただ、これも序盤の話のような気がするんですよね。
中盤以降はどうなるか。パーソナルブランディングという領域さえ、AIやAGIに代替されうる。ゼロから自律的に生み出された仮想のキャラクター、仮想のインフルエンサーが、24時間365日、体力でも知能でも情熱でも人間を上回るペースで発信し続けたら——人間がやっているブランディング活動を、順番になぎ倒していくことも起こり得ます。
あらゆるスキルがコモディティ化し、製品やサービスの区別がなくなり、その上に載っていたブランド活動まで侵食される。そうなったとき、「ビジネスのために若干無理してやっているブランディング活動」そのものを、人間がやめる時期が来るんじゃないか。
もちろん、AGIを活用してブランディングを加速させ、先行逃げ切りするパターンはあると思います。でも中長期で見ると、序盤の正解が中盤も正解であり続ける保証は、どこにもない。
読めない、が結論
今日の話に結論はありません。序盤の展開は割と見える。中盤以降は、全く読めない。
ただ、「読めない」と分かっていることには価値があると思っています。いま自分が張っているリソース——磨いているスキル、育てている発信、積んでいるブランド——それは序盤用の資産なのか、中盤まで持ち越せる資産なのか。ときどき棚卸しして、序盤の正解に全額ベットしない。それがこの時代への、私なりの向き合い方です。
あなたの今の頑張りは、どちら用ですか。今日はここまでここまで、バイバイバーイのバイ!