IT文字起こし: 安宅 基(パジ)

AlphaZeroの瞬間がAI開発そのものに来る——AGI化とは価格の交差点である

AGIはいつ来るのかという問いは立て方が間違っている。正しくは、AGIの原価が人間の原価を下回るのはいつか。AlphaGoとAlphaZeroの関係が示す自己改善の再帰と、AGI化の三条件、そして静かに通り過ぎる価格の交差点。

出典: 本記事は安宅基(パジ)による音声配信を、書き起こし.com編集部が書き起こし・再構成したものです。 Voicyで元の配信を聴く

編集部注:本記事は、パジ(安宅基)が2026年3月にVoicyで配信した「あらゆるサービスのAGI化が起こる」の書き起こしを再構成したものです。言及している状況は配信当時のものですが、テーマが普遍的なため、当時の文脈と語りを残しています。

「AGIはいつ来るのか」。この問いの立て方が、たぶん間違っています。

正しくはこうです——AGIが提供するサービスの原価が、人間が提供する原価を下回るのはいつか。

AGI化は、能力の話ではなく価格の話なんですよね。そして価格の交差点は、能力の完成を待ってくれません。

2026年に入ってから、デジタルで完結するWebサービスやアプリを、人の手をほとんど介さずAIが作り、改修し、運用保守まで回すという話が現実味を帯びてきました。ここが交差点の入口です。

囲碁で一度見た景色

思い出してほしいのが、AlphaGoとAlphaZeroの関係です。

AlphaGoは、人類が積み上げてきた棋譜を学びました。強かった。でもその上を行ったのはAlphaZeroで、こちらは人類の棋譜をほとんど参照せず、自分と打ち続けて生成したデータだけで強くなった。人間の蓄積を通らないほうが速かったわけです。

いまLLMの世界で起きようとしているのが、これと同じ構図です。

これまでのモデル性能向上は、人間がインターネット上に置いたデータを大量に読ませることで達成されてきました。次の段階は、AI自身が合成データを用意し、自分で改善サイクルを回すこと。「AIモデルの改良を、AI自身が担う」という話が現実の開発日程に載り始めています。

AIの知能にあたる部分は、それ自体がデジタル上のプログラムです。プログラムを書くのが得意な存在が、自分のプログラムを書く。この再帰が閉じたとき、改善速度は人間の労働時間から切り離されます。

AGI化の三条件

サービスが「AGI化した」と言えるのは、次の3つが揃ったときだと考えています。

1. 自己改善——機能追加や品質改善の起案から実装までを、内部で完結できる。
2. 運用保守の内製化——障害対応やバージョンアップに人手が常駐しなくていい。
3. 原価逓減——使えば使うほど、単位あたりのコストが下がる。

1と2だけなら「よくできた自動化」です。3が入ると、性質が変わる。競合が人間を雇って追いつこうとしても、価格でどうやっても届かなくなるからです。

交差点は、静かに通り過ぎる

同じ性能あたりのコストが毎年大きく下がり続けるとして——ここは私の体感からの見立てで、一次情報で確定させた数字ではありません——どこかの時点で、人間が働いてサービスを提供するより、AGIが提供するほうが安くなります。

そして安くなった瞬間には、たいして騒ぎになりません。ある日、競合の価格が半分になっているだけです。24時間365日、品質のばらつきなしで。価格競争力で勝てない相手が現れたとき、それは能力で負けたのではなく、原価で負けている。

まず中核サービスがAGI化し、次にその周辺の支援業務が続く。人間の手が必要なのは、法人としての手続きのような、制度が人間を要求している部分に寄っていきます。そして5年10年のスパンで見れば、その手続き自体もフィジカルAIやデジタル化で削られていく。

1年で10年分が進むような速度になったとき、追いかける側は準備の時間をもらえません。これは良い面も悪い面も両方あります。安く早く問題が解決される社会は、素直に望ましい。同時に、人件費という名前で分配されていたお金の流路が細くなります。

次はフィジカル、そして手続きそのもの

デジタルで交差点を越えたあと、同じことが物理世界でも起きます。フィジカルAIとヒューマノイドを通じて、サービスやプロダクトの提供そのものがAGI化していく。

面白いのは、最後まで残るのが技術的に難しい作業ではなく、制度が人間を要求している作業だという点です。法人としての各種手続き、対面での本人確認、押印。技術ではなくルールが人間を必要としている領域が、消去法で最後に残ります。

ただ、そのルール自体も5年10年のスパンでは書き換わります。手続きの相手側がAGI化すれば、人間を要求する理由が消えるからです。片側だけがデジタル化しても摩擦は残りますが、両側が揃った瞬間に一気に抜ける。

1年で10年分が進む速度になると、追いかける側は準備の時間をもらえません。良い面も悪い面も、同じ速さで来ます。安く早く問題が解決される社会は素直に望ましい。同時に、人件費という名前で分配されていたお金の流路は細くなります。この2つは同じコインの裏表で、片方だけ受け取ることはできません。

だから、見るべきは自分の原価

あなたが売っているものの原価のうち、人間の時間はどれくらいを占めているでしょうか。

その比率が高いほど、交差点は早く来ます。比率を測っておくこと自体が、いちばん安上がりな準備になります。今日はここまでここまで、バイバイバーイのバイ!

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あたか はじめ

連続起業家・現役スタートアップ経営者。2011年Tokyo Otaku Mode共同創業、海外2,000万人規模メディアから越境EC・翻訳・広告・配送代行まで自社一気通貫で推し活文化を世界に届ける。ゲーム攻略本ライター→Webディレクター→フリーエンジニアで起業、複数事業バイアウト経験。スタートアップとブロックチェーンに精通し、ゼロからの事業創出と新技術のかけ合わせを得意とする。最近のイチオシはAIバイブコーディング。

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